八丈島に響く「協力」の音色(教師海外研修実践授業)

11月27日、2020年度JICA東京教師海外研修に参加した大平教諭(八丈町立三根小学校)による 「音楽を通じて人と人との繋がり・国際協力を考える」授業が行われました。

2020年12月4日

音楽で学ぶ人と人との繋がり

パラグアイ日系社会の「豆腐百万丁プロジェクト」を学んで 6年生の感想

2020年度はコロナ禍により海外研修が実施できず、派遣予定国であったパラグアイとの国際協力に貢献している国内の企業や団体の活動を紹介する研修を実施しました。
パラグアイにはいくつかの日系移住地があり、1万人以上の日系の方々が暮らしています。東日本大震災の発生時には、傷ついたふるさと日本を励まそうと「豆腐百万丁プロジェクト」により、新鮮な豆腐が避難所の皆さんに無償で届けられました。このプロジェクトの日本側の支援者、パラグアイから届けられた大豆を豆腐に加工して被災地に届けた(株)ギアリンクス中田社長(当時)のお話を伺った6年生からは、こんな感想が寄せられました。

歌おうNIPPONプロジェクトと一緒に合唱

これをきっかけに、6年生は東日本大震災について深く学びました。コロナ禍により「当たり前の生活」が失われている現在とも重ね合わせ、「今までよりも被災者の痛みを感じるようになった」「人々を励ますため多くの人の協力があったことを知った」という感想が聞かれました。そんな活動のひとつ「歌おうNIPPONプロジェクト」(*2)はオンラインによる合唱を通して日本を元気づけようとした動きです。授業の締めくくりには、スクリーンいっぱいに映し出されたプロジェクトの動画と一緒に、6年生全員が「ほらね」を合唱しました。

パラグアイから届いた国際協力の音色

アルパで鳥の鳴き声の楽曲を演奏

翌28日には、三根小学校がJICA東京の国際協力出前講座(*3)を利用して招へいした講師、菅原富美さんの講座を全校生徒が聞きました。菅原さんは、JICA海外協力隊員としてパラグアイへ派遣され、イグアスの小学校で音楽教師として2年間活動しました。任期中にパラグアイの伝統楽器「アルパ」を学び、講座はアルパの美しい演奏と共に行われました。
「パラグアイにはとっても綺麗な声で鳴く鳥がたくさんいます。これはチョグイ鳥の鳴き声、これはピリリータ。人々は自然や鳥をとっても大切にしていて、鳴き声がとりいれられた楽曲もたくさんあるの。メドレーで弾いてみるから、どの鳥の鳴き声が入っていたか、聞き終わったら教えてね。」

アルパ演奏に挑戦

授業見学に駆け付けてくださった佐藤教育長(左)とJICA東京田中所長(右)

「この写真を見てください。肌の色の白い子や茶色い子、金色の髪の子や黒い髪の子、日本人みたいに見える子も映っているでしょ?パラグアイの小学校の様子です。」子どもたちの家庭では、パラグアイの公用語であるスペイン語やグアラニー語、日系人の家では日本語が話されていること、入学当初はお互いに話が通じなくて大変だけれど、何とか助け合って理解していくうちに皆が公用語で勉強できるようになっていくことが紹介されました。

最後は子どもたちもアルパの演奏に挑戦。
講演が終わっても、何人かの子どもたちが集まってアルパを弾かせてもらったり、美しい伝統刺繍「ニャンドゥティ」をあしらった民族衣装を見せてもらったり。多様な民族を受け入れて発展してきたパラグアイの文化を思いきり楽しみ、思いを馳せた講座でした。

多様性が共存する八丈島

八丈島JICA海外協力隊・教師海外研修 OB/OGの皆さん

実は三根小学校には、菅原さんと同じくパラグアイに派遣されていた海外協力隊経験者の先生がいらっしゃいます。他にもたくさんの協力隊経験者の方々が町役場や学校、レストランで働いています。今回、JICA東京田中所長の訪問に合わせ、協力隊や教師海外研修の経験者の方々が集まって近況報告の会を開いてくださいました。中には八丈町出身ではない方もいて、この島の、多様性を受け入れるおおらかな空気に惹かれて移住してきたということです。

表敬訪問させていただいた八丈町 山越副町長、佐藤教育長からは、子どもたちには多様な文化に触れて成長していってほしいこと、多様性が町を強くしていく、というお話を伺いました。

八丈島が、そのおおらかさをそのままに、多様な人々の協力によって、大きく発展されることを願い、JICA東京も連携を進めていきたいと思います。

報告者
JICA東京 市民参加協力第一課 古賀聡子