海図作製を担う人々のために

2020年12月21日

海図は航海の案内図

海図

自動車を運転する時にはカーナビ(カーナビゲーション)や地図が必須アイテムですが、船での航海には「海図」が欠かせません。海図とは、水深や海底の様子、潮流や航路標識等、船が安全に航海できるように必要な情報を掲載している海の地図です。

海図の歴史

世界で最も古い海図は、13世紀頃に地中海一帯の航海で使用されていた「ポルトラノ海図」だと言われています。一方で、日本は、江戸幕府が1633年(寛永10年)に鎖国令を発し、海外渡航を禁止したこともあり、海図とは縁がない時代が続きました。その後、日本が開国し、外国船が入港するために行ったことは港の測量ですが、それら測量はイギリスによって行われました。その後、測量から製図まで日本人のみによって作られた海図は、1872年に発行された岩手県「釜石港」が第一号です。

歴史ある「海図作製技術」研修

海図は、海上交通の安全を確保し、海上貿易を成長させるためには重要な社会基盤であり、防災や海洋の環境保全の施策立案にも不可欠なものです。海図は一旦作ればそれで良しという訳ではなく、海上保安庁が発行する水路通報(港湾工事の進捗や航路標識の改変など安全な航海に必要な情報)に基づき、定期的に最新維持されます。
開発途上国においては、人材不足が一因で海図整備が未だ不十分な国もあることから、JICAでは1971年から、水路測量もしくは海図作製を担う政府機関の人材育成を行う課題別研修を実施しており、これまでに44ヶ国442人の研修員が来日しました。1991年からは、日本での研修を履修することで、海図作製の国際資格である水路測量国際認定資格B級を取得できる研修内容に変更して好評を得ています。

コロナ禍でオンラインセミナーを開催

研修員対象 オンラインセミナーの様子

2020年度の来日型研修は、新型コロナウィルス感染症の拡大という余儀ない事情で中止せざるを得なくなりました。
また、コロナ禍において日本を含む各国での水路測量業務は少なからずその影響を受けていることから、2016年度から2019年度まで来日型研修に参加した各国の研修員を対象としたオンラインセミナーを開催し、意見交換を行う場を持つことにしました。オンラインセミナーでは、日本側関係者も日本全国や海外から参加し、懐かしい研修員との画面上の再会を喜びつつも、日々の業務に及ぼす影響やグッドプラクティスを共有する、またとない機会となりました。
今後も、JICAでは、限られた環境下においても、工夫をしながら今できる協力を惜しみなく実施していきたいと考えています。