JICA留学生が群馬県を訪れ、養蚕業および重工業の近代化について学びました!

「群馬県」と聞くと、製糸業を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。群馬県は、江戸時代後半から製糸業を開始し、その後あらゆる困難を乗り越え、日本を世界が認める養蚕製糸国へと導きました。また、養蚕業から重工業へと上手く転換したことで、現在の群馬県を支える主要産業を生み出し、群馬県の今があります。今次、JICA留学生に向けて、群馬県の近代化の経験における学びを通じて、自国での国づくりへのヒントを得ることを目的としたプログラムを実施し、11か国12名が参加しました。

2022年3月4日

群馬県の近代化 —軽工業から重工業へ— 

講義の様子

 プログラム前半では、群馬県高崎市にて、一般社団法人群馬地域学研究所代表理事手島仁先生を講師にお招きし、群馬県の近代化を支えた二大産業(養蚕業と飛行機製造業)における歴史の概要と近代化過程での経験について講義をしていただきました。江戸時代後半から始まった養蚕製糸業は、約20年間試行錯誤を繰り返し様々な困難を乗り越えてきたこと、その過程で大切とされたのは、技術を独り占めすることなく、広く伝播しようとする工夫や、質の良い生糸を作るためには働く者の礼儀作法が大切だとされる職業倫理といった点であることを紹介いただきました。参加者からは、「多くの問題を乗り越えて成し得た近代化であり、常に努力を惜しまず、その時代や需要にあった方法で発展し続けたことに感銘を受けた。」「群馬の近代化についての学びを通して、日本人が意欲的で働き者であり苦境からの回復力に長けている点を改めて実感した。日本人が備えるエチケットやマナーは古くから受け継がれたものであることも学んだ。」といった声が寄せられました。
 また、昭和初期以降、世界恐慌によって養蚕業が斜陽産業となった後の重工業(飛行機製造業)への転換について、中島飛行機(後にスバルとして日本の自動車製造業を牽引)の創設者である中島知久平の努力についてお話いただき、多くの参加者がその努力や信念に感銘を受けていました。
 群馬県の近代化を支えた主要産業について理解し、その経験から留学生が自国での国づくりに生かせるヒントを得られる大変貴重な機会となりました。

製粉ミュージアム(株式会社日清製粉グループ)にて製粉業のあゆみと最新技術を体感!  

視察の様子

 プログラム後半では、群馬県が歴史的に見ても製粉業が盛んである(世界恐慌をきっかけに製糸業に代わり食品業が盛んになった)ことから、館林市にある製粉ミュージアムを訪問し、日清製粉グループの創業からのあゆみに加えて、最新鋭の製粉技術に関する学びを通して、食品業が盛んな群馬県の今を体感し、体系的に群馬県の魅力に触れることができました。また、敷地内にある日本庭園に興味を示す参加者が多く、日本文化に触れる貴重な機会ともなりました。

日本の近代化経験を各国での国づくりに活かしたい! 

 プログラム終了後、「産業の移り変わりについて理解することができた。」「自国でも活かせる多くのグッドプラクティスを学ぶことができた。」といったコメントが多く寄せられました。今回の学びが自国に帰国後活かされることを祈っています!
 JICAでは今回のプログラムのように、受入留学生に対して日本の近代化経験を伝える機会を提供しています。今後もより多くの留学生に日本の経験を紹介し、それらの学びを通じて国づくりのヒントを得てもらうとともに、親日派・知日派の育成に力を入れていきます。

報告者名 長期研修課