遠隔研修の好事例紹介②:「気象業務能力向上」

課題別研修「気象業務能力向上」は、今年度初めて遠隔研修を実施しましたが、インターネットの「仮想デスクトップサービス」を活用して、衛星画像解析等の効果的な演習プログラムを試行しました。「仮想デスクトップサービス」とは一体…? 好事例をご紹介します!

2022年2月3日

「仮想デスクトップサービス」で何ができるの?   

 課題別研修「気象業務能力向上」は、気象庁の協力のもと、1973年の研修開始以降45年超に亘って、多くの開発途上国の国家気象局・気象官を対象に、気象業務能力向上及び防災能力強化に向けた研修プログラムを実施してきました。過年度までは約3ヵ月間の来日研修を実施し、気象観測、予報、衛星・レーダーを使った解析等の多岐に渡る包括的なプログラムを提供していましたが、今年度は初めての遠隔研修実施となり、研修期間・内容いずれも圧縮したプログラムを再検討しなければなりませんでした。

遠隔研修の様子 @仮想デスクトップサービスを使った衛星画像解析の演習

 本研修の一つの柱は、気象庁のソフトウェアを使った衛星画像解析等の演習で、毎回研修員からは実践的なプログラムであると好評を得ています。遠隔研修の中でもどうにかこの演習プログラムを実施できないかと検討を重ねたところ、インターネットの「仮想デスクトップサービス」なるものがあることが分かりました。「仮想デスクトップサービス」とは一体…?どんなことが可能になるのか…? この「仮想デスクトップサービス」とは、インターネット環境があれば、どこからでも特定のデスクトップにアクセスができるようになる技術のことです。本研修でも、このサービスを活用することにより、研修員側でソフトウェアのインストールや膨大な演習データのダウンロードをせずとも、インターネットの仮想デスクトップ上で同じ演習環境にアクセスすることが可能になりました。研修員それぞれが離れた環境にいながらも、自分たちの手元で実際に同じソフトウェアを操作し、実践的な演習をすることができたのです。
 初めての試みでしたので、仮想デスクトップのセットアップ・事前準備に手間が掛かったり、一部研修員側のトラブル対応等も発生しましたが、研修員たちは短時間ながらもこの演習のエッセンスを習得することができ、「もっと演習をやってみたい」「大変有意義な機会だった」とのコメントを得ることができました!

今後も気象課題の解決に向けた協力を 

遠隔研修の様子 @閉講式

 近年では、世界の各地で地球温暖化等により引き起こされる大雨・洪水・台風等の異常気象現象が起こっており、私たちの生活の身近な課題として実感される方も多いと思います。いまや気象課題は一国の問題ではなく、すべての国が直面する国際的な共通課題になっています。そのため、世界の気象業務発展及び防災能力強化のためにも、各国気象局の能力強化とあわせて、世界が同じ目標に向かって協調・連携し、ネットワークを強化していくことが欠かせないのです。
“If you want to go fast, go alone. If you want to go far, go together.”
今後もJICAでは、新たなチャレンジにも積極的に取り組み、本課題別研修の継続的で効果的な実施を通して、若手気象官の育成と気象課題解決のため貢献していきたいと思います。

遠隔研修の様子 @研修員からのホワイドボードメッセージ

<研修概要>
研修名: 「気象業務能力向上」
実施期間: 2022年1月17日(月)~1月27日(木)
参加国: ブータン、インドネシア、モザンビーク、パキスタン、サモア、スリランカ、ベトナム
参加者数: 10名
実施機関: 気象庁