日本とブラジルをつなぐ、障害当事者による新型コロナウイルス感染予防啓発活動

日本の障害当事者からブラジルの障害当事者へ。「たんぽぽプロジェクト」はブラジルにおける新型コロナウイルス感染予防啓発活動に取り組んでいます。

2021年7月20日

ブラジルにおける新型コロナウイルス感染予防啓発活動 

草の根技術協力事業終了時のたんぽぽメンバー

 ブラジルで依然として猛威を振るっている新型コロナウイルス感染症に立ち向かうため、JICAとDPI日本会議は、特に情報弱者となりやすい貧困地域の障害者を対象とした感染予防啓発活動を実施しています。この取り組みは以前実施されていた草の根技術協力事業「ろう者組織の強化を通した非識字層の障害者へのHIV/AIDS教育」(通称たんぽぽプロジェクト)のフォローとして実施するものです。

 ブラジルでは、障害を持つ人々は教育を受ける機会が妨げられていたり、情報へのアクセスが限られていることにより、新型コロナウイルス感染症に関しても正しい情報を得られていない場合が多い現状があります。本活動では、上記草の根技術協力事業のカウンターパートであった現地の障害当事者(たんぽぽメンバー)の人々や現地政府と協働し、聴覚障害者の方をはじめとする地域の障害者が必要な情報と予防知識を得られるよう、オンラインでの啓発研修の実施、啓発動画の作成、配信や啓発資料の作成、配布といった活動に取り組んでいます。

 「たんぽぽ」という名前は、上記事業を通して養成された障害当事者のワーカーが地域へ出て必要とされている情報を自らの手で伝えていく過程を「たんぽぽ」の綿毛が風に乗って新しい土地へ飛んでいく姿にたとえ、願いを込めてつけられました。

障害当事者でも活躍できる!心強い3名からのお話 

伊藤氏の講演の様子

今川氏の講演の様子

廣瀬氏の講演の様子

 6月14日には、日本とブラジルをオンラインでつなぎ、新型コロナウイルスの感染予防啓発研修を実施しました。この研修では、日本の障害当事者からブラジルの障害当事者である、たんぽぽメンバーに向けて、日本手話→国際手話→ブラジル手話に通訳されて行われました。

 DPI日本会議の伊藤氏からは「情報アクセスの重要性」について、岩手県立中央病院総合診療科医師の今川氏からは「保健分野における情報アクセス、特に聴覚障害者への情報保障」についてお話いただきました。今川氏は、聴覚障害者でありながらも日本で医師としてご活躍されており、コロナを「もらわない」「うつさない」「予防する」の3つが大切であること、そして情報収集の難しい聴覚障害者が、得た情報がいかに正しいかを判断することの重要性についてお話されました。さらに、本活動の総括を務めるDPI日本会議の廣瀬氏は「聴覚障害者のリーダーシップ」に関する講演を行いました。
 障害当事者でありながら日本でご活躍されている3名のスピーカーによるお話は、たんぽぽメンバーへの大きな励ましとなったことと思います。

 この研修に参加したたんぽぽメンバーは、研修で得た知識を元に、ブラジルの貧困地域で障害者を対象にした予防啓発ワークショップを今後実施する予定です。引き続き、2021年8月末まで「たんぽぽプロジェクト」は現地での感染予防啓発活動に取り組んでいきます。