JICA「初」の風力発電所支援の実現に向けて

2016年9月1日

産業開発・公共政策部
資源・エネルギーグループ第一チーム
川俣 大和

1.2020年までに電力供給の50%を再生可能エネルギーに!

「2020年までに電力供給の50%を再生可能エネルギーにする」。
トンガ政府のエネルギー戦略を取りまとめた「トンガ・エネルギーロードマップ2010-2020」(Tonga Energy Road Map:TERM)でこう高らかに宣言されました。
これは、世界中で再生可能エネルギー導入が進む中、トレンドに乗ってキャッチ—な目標を単に発信しただけではない、トンガ電力セクターの切実な事情がありました。トンガを含む大洋州各国、さらには他地域の島嶼国では自前のエネルギー資源が限られていることから、発電を輸入ディーゼル発電に頼らざるを得ない事情があり、トンガでは2010年以降も実に発電の95%以上が輸入ディーゼル発電という状態が続いていました。輸入ディーゼルに頼るということは、人々の生活に直結する電気料金が燃料の料金動向に左右されることを意味します。特に石油価格が高騰を続けた2000年代後半には電気料金も必然的に高騰し、一時は1キロワット時当たり約50USセントに達し、電力料金が世界でも比較的高いと言われる日本の倍以上という深刻な状況でした。
そこで、燃料価格動向に左右されず、かつ電力料金の低減を図ることを目指す方策として再生可能エネルギーに白羽の矢が立てられたのです。再生可能エネルギーは、電力料金低減のみならずCO2等の温室効果ガスの排出を減らす環境にやさしいというメリットや、電源を多様化する(エネルギーセキュリティの強化)というメリットもあり、冒頭の思い切った政策が打ち上げられたのです。

2.日本の技術を活用した再生可能エネルギーの導入を

ただし、再生可能エネルギーはそう簡単に島国のエネルギー問題の救世主となるわけではありません。代表的な再生可能エネルギーである太陽光発電や風力発電の出力は、天候に左右される不安定な電源です。無暗に再生可能エネルギーを導入すると、電力系統が不安定になり、電灯がちらついたり、最悪の場合は突然の停電や電化製品や精密機械が壊れたりする原因となります。こうなっては電力の安定供給という国の発展にとって欠かせない要素が損なわれます。
そこで、トンガでは電力の安定供給を損なわずに再生可能エネルギーの導入を図るべく、日本に協力を求めました。第一弾として太陽光発電施設とマイクログリッドシステム(系統の安定化を図るシステム)を導入する無償資金協力が要請され、無事2015年3月にトンガ側に引き渡されました。導入したシステムは、当初期待されていた以上の発電を行っており、現在も安定的に稼働しています。

※マイクログリッドシステムは以下の関連記事を参照ください。

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導入された太陽光パネルの一部

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導入されたマイクログリッドシステムの一部

3.JICA無償資金協力として初の風力発電事業をトンガで

太陽光発電とマイクログリッドシステムが順調に稼働を開始したものの、まだ目標の50%には届きません。そこで、トンガ国内でかねてより計画されていた風力発電についても、日本へ要請がなされたのです。意外に思われる方もいるかもしれませんが、JICAの無償資金協力では世界中どの国でも風力発電所を整備した実績はなく、トンガが初めてとなります。風力発電システムは古くから欧米が世界をリードしてきた背景もあり、欧米企業が世界的に大きなシェアを占めていることもその一因です。他方で、最近になり日本でも風力発電の開発・導入が進められており、多くの島で構成される日本で培われてきた経験は、島国でこそ活かすことができるのです。特に今年に入り、最大瞬間風速84.9m/sの超大型サイクロン「ウィンストン」がトンガ近くを通過するなど、大洋州での風力発電所整備には台風対策をきちんと行う必要があり、台風大国(?)である日本に一日の長があると言えます。
JICAは、トンガ政府からの要請に応える形で2016年6月から協力準備調査を開始しました。トンガ政府高官からは防災の観点も含めた日本の技術を高く評価しているとの発言があり、調査開始時には現地メディアにも記事が掲載され、その期待の高さが伺えます。調査の結果を受け、一日も早くトンガで風力発電所が稼働し、安定的で比較的安価な電力供給、さらには温室効果ガスの排出削減が実現することが期待されます。

※現地報道記事は以下をご参照ください。

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風力発電予定地での風況調査

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副首相との協議。日本への期待が寄せられた(筆者左から2番目)

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協力準備調査に関する合意文書署名式