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視覚障害者に映画やスポーツの楽しみを(中華人民共和国)

−草の根技術協力事業で初の視覚障害者支援−

2009年08月10日

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日本点字図書館の田中徹二理事長によるあいさつの様子

8月3日、中華人民共和国の首都北京にある紅丹丹(コウタンタン)教育文化交流センターで、「視覚障害者音声情報提供技術指導事業」のオープニングセレモニーが開催されました。この事業は、NGOなどの団体とJICAが共同で実施する草の根技術協力事業として、2011年3月までの約1年9ヵ月間行われます。日本で視覚障害者支援を行う社会福祉法人日本点字図書館が中心となって進めますが、JICAが、草の根技術協力事業で視覚障害者支援に取り組むのは今回が初めてとなります。

中国には1,000万人の視覚障害者がいるといわれており、点字も定着していますが、映画やスポーツ中継などの映像を、視覚障害者でも楽しめるようなサポート技術はまだ普及していません。そこで、社会福祉法人日本点字図書館の提案により、JICA草の根技術協力事業として「視覚障害者音声情報提供技術指導事業」が開始されることとなりました。同法人は、日本国内にて視覚障害者向けの映画やテレビ番組の副音声製作を行い、優れた技術と経験を有しています。

本事業は、2008年6月にJICAと中国国際民間組織合作促進会の共催で行われた、障害者支援をテーマとする「日中NGOシンポジウム」において日本点字図書館と、中国で視覚障害者支援を行うNGO紅丹丹教育文化交流センターが出会ったことがきっかけとなりました。

紅丹丹教育文化センターは、心の目で見る映画館「心目影院」を設立し、ボランティアがセリフの合間に情景の説明を行う視覚障害者向けの映画上映会やスポーツの実況放送、雑誌の読み上げ、さらには障害者の地位向上のための啓発など多岐に渡る活動を行っています。しかし、それらは「心目影院」に来られる人だけが対象で、しかも一回限りしか行われず、より多くの人に向けて普及させるにはDVD副音声編集技術が必要となります。

本事業では、視覚障害者向け副音声編集技術者、録音ボランティア、録音図書・雑誌編集技術者、視覚障害者向けラジオ番組制作者を養成し、録音編集ソフトの操作技術などを伝えます。このうちラジオ番組制作者養成では、日本放送協会(NHK)で40数年間続いている視覚障害者向け番組のチーフディレクターを務める、迫田朋子氏が専門家として約1週間現地に派遣される予定です。

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セレモニー会場の様子

オープニングセレモニーは北京市政府、各種障害者団体、中国でCSR活動を行っている企業などから多数の関係者が出席し、和やかな雰囲気で行われました。紅丹丹教育文化交流センターの丁理事長(元 中国障害者連合会発展部主任)は、「中国は、これまでの、生存のみを目的とする物理的なケアから、より文化的な生活を送るために精神面のサポートを重視するようになりつつあります。本事業は後者に寄与する素晴らしい事業であり、中国側の技術向上に期待したいと思います」と述べました。また、式典に参加した障害者からは「視覚障害者に対するサービス提供の水準を高めようと、取り組んで下さっていることに感謝します」と喜びの声があがりました。

今回の事業実施にあたり日本点字図書館の田中徹二理事長は、「中国では、音声ガイドが入ったDVDや副音声機能が入ったCDの貸出しサービスなど、日本で行っているような家庭で楽しめる視覚障害者用録音物の提供はまだありません。今般は録音技術の提供となりますが、将来的にはインターネット配信技術なども検討していく予定です。この事業の成果が普及することで、同国の視覚障害者が、より楽しく豊かな生活を送れることを願っています」と、意気込みを語りました。

またJICAは、放送技術の整備が遅れていた中国の地方部(青海省、雲南省、安徽省、吉林省、寧夏回族自治区、山東省)への放送機材の整備や、放送局職員らのトレーニングなどを円借款事業として2003年から行っており、今回の事業で培った技術を生かして作成した番組を、円借款で整備された放送ネットワークを通じて配信し、地方に住む視覚障害者の生活の充実に貢献することも視野に入れています。