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持続可能な植林事業と木材産業がもたらす地域経済の発展と環境保全(マレーシア)

2009年09月25日

JICAは2002年2月から2012年2月までの予定で、開発投融資事業として「マレーシア国アカシア・ハイブリッド造林試験事業」を実施しています。これは、アカシア・ハイブリッド(注1)の産業造林を目的として、越井木材工業株式会社(以下、越井木材)がその現地法人であるコシナール社(perusahaan kosinar .sdn.bhd.)を通じて同国サバ州で展開している、育苗、栽培、造林技術を確立するための試験植林を、JICAが、地域の発展と環境保全の観点から支援しているものです。

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造林前のサバ州事業対象地の風景

マレーシアのサバ州では、ラワン(注2)の原木丸太生産が行われていましたが、世界的に森林資源の減少が叫ばれ始めた1987年から、同州での生産量も低減し始めました。さらに、同国政府は1994年より、森林の伐採による環境破壊を防止するために、ラワンを含むすべての樹種の伐採制限を設けて輸出を禁止しました。

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現在のアカシア・ハイブリッドの造林地

大阪府に本社を構え、防腐処理木材の製造・販売を行う越井木材は、1988年よりサバ州でコシナール社の運営により合板工場を稼働していましたが、ラワンの伐採が制限された1994年以降は工場の操業率も低下してしまいました。「持続的な木材資源の確保のためには、熱帯地域における早生広葉樹の人工林により生産体系を確立させることが必要」と感じた越井木材は、土地への適性、加工性、加工製品の性能などを考慮して、ラワンに代わる木材として選んだ、アカシア・ハイブリッドの生産に乗り出しました。そして、サバ州森林開発公社(SAFODA)の協力のもと、JICAの開発投融資資金を活用して、2002年から試験事業を始めました。

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合板工場の従業員はほとんどが現地住民

越井木材は、マレーシアに工場を開設して以来、地元住民を積極的に雇用しては日本に招いて技術研修を行い、機械操作の技術を移転するなど、現地の人々の育成に力を入れています。また、植林地でも地元住民の雇用に努めるなど、地域の開発や経済活動の促進に寄与しています。これらのサバ州での取り組みに加え、地域の緑化推進と資源保護の観点から、越井木材が提案する植林事業構想が高い評価を得て、州政府から事業植林地を無償で提供されるなど、同社とサバ州との間には政府レベル、草の根レベルの両方で深い信頼関係が醸成されています。

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越井木材工業の松本義勝常務

越井木材の松本義勝常務は、「熱帯地域における製材目的のアカシア・ハイブリッドの人工造林は世界でも例がなく、当初は試行錯誤を繰り返したが、JICAの技術協力による育林技術の短期専門家派遣などの支援を受けたことにより、現地で事業を開始することができた」と、述べました。そして、「地元経済に裨益するシステムが確立されることにより、乱伐や違法伐採がなくなる。つまり、人工林の経営が成立して初めて熱帯林全体の保全、再生が確実になると思っている。そのためには、長い期間を要することは避けられないし、技術面はもとより、資金面での支援も必要。今後は、サバ州の木材産業が発展することで現地での雇用が促進され、さらには外貨の獲得にもつながるような事業にしたいと思っている」と、アカシア・ハイブリッドの造林にかける意気込みを語りました。


(注1)アカシア・マンギウムとアカシア・アウリキリフォルミスが交配してできた雑種の広葉樹で、早生でありながら比重、強度、樹形、芯腐れがないなどの点で非常に優れていることが実証されており、建築・家具用材、トラックの床板などにも適している。

(注2)フタバガキ科ショレア属などの常緑高木のうち、材質がきれいで、硬さや重など中程度で、加工性が良い、合板材に用いる樹種の総称。俗に、ラワンベニヤ板と呼ばれることもある。