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国際緊急援助隊・救助チームが「ヘビー」級に認定

−最高レベルの救助能力評価を獲得−

2010年03月17日

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評価員代表のヤジッド・アブドゥラ氏(写真左)から認定証を受け取る佐野浩明団長(3月12日)

海外で地震など大規模災害が発生した際に被災者の捜索救助を行う、国際緊急援助隊救助チーム(JDR救助チーム)が3月10、11日にIEC(国連人道問題調整事務所が主催する国際都市型捜索救助チームの能力評価)(注1)を受検し、「重(ヘビー)」級チームの認定を受けました。

この認定は、都市型捜索救助チームを「軽(ライト)」「中(ミディアム)」「ヘビー」の三つのランクに分類し、被災地の救助活動現場で各チームの能力に応じて活動現場を割り当てることを目的にしています。最高分類の「ヘビー」級評価を取得したことで、JDR救助チームは今後いっそう活動を期待される存在となりました。

世界13番目の「ヘビー」級チームに

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演習での災害救助犬による生存者の捜索(3月11日)

今回JDR救助チームが受検したヘビー級には、高度な救助技術はもちろんのこと、携行する資機材を使い、二つの災害現場において同時に24時間10日間連続で捜索救助活動を継続できる能力に加え、他国に先駆けて被災地入りした場合には国連の災害評価調整チームに代わって「現地活動調整センター」を立ち上げ、被災情報収集、各国チームの受け入れ・調整までを行う、幅広い能力が要求されます。

今回の受検では、架空の「トリニア国ザクアス市」でマグニチュード7.8の地震が発生したという設定の下、10日早朝6時から翌11日の20時まで実に連続38時間にわたり、兵庫県広域防災センター(兵庫県三木市)で救助チームの派遣シミュレーション演習を実施しました。警察庁、総務省消防庁、海上保安庁のレスキュー隊員のほか、指揮本部要員、捜索犬ハンドラー、医療班(医師・看護師)、業務調整員により編成された計71人の隊員と捜索犬4頭が演習に参加し、チーム招集から被災国到着、活動、撤収までを実施。それを、11人の各国の評価員が「マネジメント」「捜索」「救助」「医療」「ロジスティックス」の5分野、約150項目にわたり審査しました。

演習開始の3月10日、三木市は、みぞれや雪が降る悪天候に見舞われ、深夜の気温は氷点下に。翌11日は晴れたものの寒風が吹きすさぶという厳しい条件の中、隊員は連携し、士気を保ちながら活動しました。

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ベースキャンプの十字テント内に設置された指揮本部。無線で各部隊と連絡を取り合い、活動状況と被災状況をホワイトボードにまとめる(3月11日)

2日間にわたる演習の後、12日に行われた講評で、JDR救助チームは11人の評価員全員一致によりヘビー級に認定され、世界で13番目の「ヘビー」級取得チームとなりました。国連人道問題調整事務所(UNOCHA)アジア太平洋地域事務所のテルジェ・スカブダル事務所長は、審査結果について「38時間にわたる演習を通じ、JDR救助チームが高い専門性を持つことが認められた。今後は全国の救助隊員の能力を同じレベルに引き上げ、さらにその技術を他のアジアの国々にも共有してほしい」と総括。

JDRチームを代表して、佐野浩明団長(外務省国際協力局緊急・人道支援課国際緊急援助官)は「この成果はみなさんの力の結集によるもの。2009年10月のインドネシア西スマトラ州パダンでの救助活動の際、国連関係者から『日本はスーパーヘビーチームだ』と言われたが、実際にそうなれるよう、今後もステップアップしていきたい」と締めくくりました。

医療と救助の連携を築く

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建物の倒壊を防ぐ「ショアリング」を設置する救助隊員と、その作業過程と技術を審査するIEC評価員(写真中央左)。(3月11日)

JDR救助チームのIEC受検を決めた約2年前に、JICAは外務省、警察庁、総務省消防庁、海上保安庁、医療班(注2)と共に「IEC受検準備委員会」を設置。IECの救助ガイドラインには、日本のレスキュー現場では使われていない「ショアリング(建築物の崩壊を防ぐために支えを入れること)」「ブリーチング(工具を使用したコンクリート壁の破壊)」などの技術や、救助部隊員と医療班が連携し、負傷者に救命医療を施しながら救出する「閉鎖空間における医療活動(Confined Space Medicine: CSM)」などが要求されており、新たな技術の習得が課題となっていました。JICAは各庁の技術検討委員の協力を得、年1回の総合訓練に加え、各種の研修・訓練を実施し、技術の習得と向上に取り組んできました。

また現場での計画策定や指揮本部との情報共有のあり方についても検討を重ねてきました。IEC本番には71人の隊員に加え、準備段階から関わってきた技術検討委員や医療班支援要員が運営委員として参加、総力を結集して円滑な進行に取り組みました。

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演習で負傷者を搬送する医療班と救助隊員(3月11日)

認定の講評後、隊員からは「この場にいられたことを誇りに思うとともに、今後はこの経験や技術を仲間と共有し、救助者救出に向けて全力でぶつかっていきたい」(青森県三戸消防署谷地剛典消防士長)といった声があったほか、メディカルマネジャーを務めた福島憲治医師(埼玉医科大学総合医療センター高度救命救急センター)は「IEC受検に向け、それまで実施していなかった、救助と医療が連携して行うCSMの体制づくりに1年をかけて取り組んできた。JDRでの救助と医療の連携は2002年頃始まり、8年間で時代が進み、その記念碑的にIECヘビー級を取得できたことは、感慨ひとしお」と、これまでの取り組みを振り返っていました。

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隊員、IEC評価員と関係者

災害国である日本は、防災・災害救助に多くの知見があり、JICAは近年、防災政策や技術を開発途上国に移転する協力にも注力しています。しかし、防災技術が進歩しても、自然災害の発生を防ぐことはできず、災害救助は今後も非常に重要な役割を持ちます。JDR救助チームは今後も被災地にいち早く駆けつけられるよう備えるとともに、「ヘビー」級認定を機に、アジア各国のレスキュー技術向上を図る役割も担うべく、今後も一層の技術向上を図っていきます。

(注1)IEC(INSARAG External Classification)とは、INSARAG(国際捜索救助諮問グループ。都市型災害に対する捜索救助チームを持つ80数ヵ国が参加。事務局は国連人道問題調整事務所)による能力認定であり、各国の捜索救助の専門家が互いに評価しあいながら相互学習を行うところに特徴がある。

(注2)医療班には国際緊急援助隊医療チーム登録者のうち、救助チーム医療班としての研修を受けた医師・看護師35人が登録。