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地下鉄工事現場の安全を守る(インド)

2010年05月18日

日本の円借款により、インドの首都デリーで地下鉄(デリー・メトロ)の建設が進められている「デリー高速輸送システム建設事業」。この工事現場にこのほど、発光ダイオード(LED)を利用した安全対策システム「On Site Visualization」(OSV)が導入されました。OSVは「現場(の安全管理)の見える化」技術とも呼ばれ、地盤や構造物に変位が生じた場合、光センサーの色が変化して崩落の危険を示します。日本でも、一部の道路斜面や工事中のトンネルの断面に設置され、道路利用者や工事関係者が各自の判断で迅速に避難を開始できるようにする試みが始まっていますが、デリー・メトロの工事現場はOSVの活用例として世界最大規模。日本の新しい技術によって、「工事現場の安全性が飛躍的に向上する」と大きな期待が寄せられています。

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OSVが設置されたデリー・メトロAIIMS駅の工事現場

"工事現場の信号機"で安全対策強化

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工事現場でOSVの説明をする神戸大学の芥川真一教授

デリー・メトロの工事現場では、事業を開始した1997年以来、作業員一人ひとりがヘルメットと安全靴を着用するとともに、現場の整理整頓を徹底するなど、しっかりと安全対策に取り組んできています。作業時の安全対策の習慣が定着していなかったインドでは、革新的な取り組みとして高く評価されていますが、地下鉄建設現場の安全対策を更に強化するためJICAは、神戸大学、オリエンタルコンサルタンツ、デリー交通公社と協力してOSVを導入しました。

OSVは、地盤や構造物の計測データを継続的に把握することにより、地盤のずれや構造物の変形による危険度をLEDの色で瞬時に表示する、視覚に訴えるモニタリング装置です。神戸大学の芥川真一教授が中心となって開発したこの技術システムは、安全性に問題がない場合は光センサーが青を表示しますが、構造物や地盤の変形が大きくなって危険度が増すにつれてシアン、緑、黄、赤と変化し、いわば、工事現場の危険度を示す「信号機」のような役割を果たします。現場で働く関係者は、光センサーの色によって周囲の危険度をリアルタイムで把握することができ、危険を察知した場合は速やかに避難することが可能になりました。

日本の新技術で高まる安全意識

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現場に設置されたOSVの説明ボード

芥川教授と現場責任者であるオリエンタルコンサルタンツの阿部玲子次長によると、「OSVはデリー・メトロの工事関係者に大変好評」「安全意識の一層の向上に大きく寄与している」とのこと。

デリー交通公社の現場監督ティアギさんは「これまでデリー交通公社が行ってきた安全対策と異なり、日本の新しい技術を活用していることから現場の作業員が高い関心をもってくれている。新たな試みが作業員の安全に対する意識に刺激を与えた」と話しています。

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青く光るセンサーが安全であることを示している

インドでは、バンガロール、コルカタ、チェンナイにおいても円借款による地下鉄の建設が進んでいます。デリー・メトロでの活用経験を生かし、今後、これらの作業現場にもOSVを導入することが検討されています。特に人口が密集した市街地での掘削工事では、安全に対する細心の注意が求められます。OSVは、現場で働く関係者のみならず、危険が迫る前の予報装置として周辺住民の安全を守る有効な手段の一つとしても期待されています。

インド事務所