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廃棄物管理の第一歩は家庭ごみの分別から(インド)

−コルカタで20万世帯対象に初の広域廃棄物処理システムを導入−

2010年06月10日

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湖に投棄されたごみ。これらのごみは悪臭や害虫の原因となるばかりか、土壌や地下水も汚染する

川や野原、排水溝に投棄されたごみの山。今、インドでは都市のあちこちでそんな光景が見られる。その状況を変え、ごみのない未来をつくろうと、西ベンガル州コルカタ都市圏では、日本の円借款による「コルカタ廃棄物管理改善事業」が行われている。インドでは初めてとなる広域廃棄物処理システムの導入だ。

住環境を脅かすごみの投棄

インドでは分別されないまま投棄されている家庭ごみが大きな社会問題になっている。2000年に廃棄物収集・処理に関する法律が制定されたものの、十分に機能しているとはいえず、多くのごみが不法に投棄されているのが現状だ。

西ベンガル州コルカタでも同様の問題を抱えている。インド東部の経済・産業の中心として発展してきたインド第三の都市コルカタでは、急増する廃棄物が適切に処理されていないため、悪臭や害虫の発生、土壌・地下水の汚染のほか、雨期には廃棄物が詰まって排水路が氾濫するなど、早急な対策が求められていた。

こうした状況を受け、コルカタ廃棄物管理改善事業への円借款供与が2006年3月に決定された。最終的な目的はコルカタ都市圏の6自治体において、最終処分場建設を含む広域廃棄物処理システムを整備すること。複数の自治体をカバーする広域廃棄物処理システムの導入はインドでは初めての試みで、廃棄物管理のモデル事業として他地域への普及も視野に入れている。

分別の前に立ちはだかる壁

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有機ごみの入った緑のバケツを手に、正しく分別されているか確認するプロジェクトのコンサルタント。青い帽子の女性は啓発活動員、黄色い帽子の男性はごみ収集人

現在、プロジェクトの第一段階として取り組んでいるのが、家庭ごみの分別システムの導入だ。各家庭に有機ごみを入れる緑のバケツと、それ以外のごみを入れる青のバケツを配布し、ごみを分別してもらった上で戸別回収を行う。有機ごみは堆肥に、リサイクル可能なビンや缶、ペットボトル、金属片などは再販業者に買い取ってもらう。リサイクルも堆肥化もできないごみは、最終処分場で衛生的に処理される計画だ。このシステムを持続可能なものとするため、住民からの収集費用の徴収も部分的に始まっている。

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家庭ごみ分別システム

しかし、これまでごみを分別したことのない住民に、分別の重要性を理解してもらい意識を向上させていくことは簡単ではない。ごみ分別の重要性を理解できない人に加え、分別の仕方がわからない人もいる。また、インドに根強く残るカーストでは、ごみを扱うのは下位カーストという意識が強く、上位カーストの住民の中には自分でごみを分別することに抵抗を感じる人が少なくない。そういった問題にも対応すべく「ソーシャルモビライザー」と呼ばれる啓発活動員が、各家庭、学校、コミュニティを訪問し、分別の方法、新しいごみ回収システムの有益性などについて、住民に粘り強く説明を行っている。

効果を実感した住民の意識が変わった

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啓発活動員の言葉に熱心に耳を傾ける女性たち。インドではごみ出しをすることが多い女性への啓発活動がポイントとなる

プロジェクトの対象となる家庭は、6自治体で約20万世帯を数える。しかし、正確な世帯数すら把握できていない自治体もあり、バケツを配布したコミュニティは一部にとどまっているなど、分別が当たり前になるにはまだまだ時間はかかりそうだ。それでも、分別や回収システムが定着したコミュニティからは「病気にかかる子どもが減った」「町や通りがきれいになった」「ハエが減った」など、効果を実感する声が寄せられるようになった。住民たちは、住環境を守るためには自ら行動しなくてはならないことに気付き始め、それとともに分別に協力してくれる家庭も増えてきた。それが関係者の励みとなっている。

急速な都市化が進むインドにおいて、ごみ問題はこれ以上放置しておけない深刻な問題である。ごみの分別回収、有機ごみの堆肥化、衛生的な埋め立ておよび最終処分場の建設など先駆的なシステムを導入することは、住民の生活・衛生環境の改善につながるだけでなく、インド国内の他の都市の模範となるモデル事業としても大きな意味を持っている。

インド事務所