トピックス

モロッコの観光地図を塗り替える高速道路が完成

−北アフリカを横断する大動脈整備を支援−

2010年07月08日

【写真】

開通式当日の高速道路。46キロに及ぶ日本の工区の起点

6月21日、アフリカの広域インフラ整備が、また一歩前進した。北アフリカを横断する大動脈「アガディール−カイロ開発回廊」の一部にあたる「マラケシュ−アガディール間高速道路」が開通したのだ。

TICAD IVフォローアップとしての広域インフラ支援

アフリカでは経済成長の基盤となるインフラが不足しており、中でも、国境を越える道路など広域物流インフラの整備が急務となっている。日本はTICAD IVフォローアップ(注)の一環として、アフリカ広域インフラ整備支援を表明しており、現在アフリカ全土で14の広域インフラ整備が進行中だ。今回完成した区間が含まれる「アガディール−カイロ開発回廊」も、北アフリカ諸国だけでなく、アルジェリアやエジプトを経由して他のアフリカ地域との接続が期待されている。

【写真】

モロッコ高速道路公団総裁から工法の説明を受ける設備・運輸大臣(右から3人目)ら関係者

モロッコからアルジェリア、チュニジア、リビアを経てエジプトに至る、北アフリカの大動脈「アガディール−カイロ開発回廊」。今回開通したのは、モロッコ国内のマラケシュとアガディールを結ぶ片側2車線の高速道路234キロだ。日本はそのうち、アガディール寄りの46キロの建設を円借款によって支援した。他の区間はアフリカ開発銀行、イスラム開発銀行などの援助機関が融資を行った。道路は4年に及ぶ工事期間を経て完成し、6月21日、モロッコのムーレイ・ラシッド王子や設備・運輸大臣、高速道路公団総裁など要人が参加し、開通式が盛大に行われた。

地中海経済圏の担い手として飛躍を

モロッコは1996年に最大の貿易相手であるEUとパートナーシップ協定(2010年までの自由貿易圏設立を目標とする)を、2004年には米国と自由貿易協定(FTA)を締結するなど、経済の国際統合を進めている。それに伴い、国内外での人、モノの活発な移動・流通が見込まれ、これらを担う運輸インフラの整備が喫緊の課題となっている。それを象徴するのが、現在同国に建設中のフランスの自動車メーカーの工場。完成の暁には、欧州はもとより中東やアフリカ諸国への輸出を目指している。

二大観光都市を結ぶ重要道路が完成

【写真】

国道を走るトラック。平坦で広い場所以外は片側1車線で追い越しができないので、トラックの後ろにつくと30キロくらいしか出せず渋滞が起る

旧市街が世界遺産に登録されているマラケシュ、リゾート地として名高いアガディールは、モロッコを代表する二大観光都市だ。さらに大西洋に面するアガディールは、国内の農産物、水産物の生産・収獲拠点、輸出基地として経済的にも重要な役割を担う。二都市間にはもともと一般国道が通っていたが、山間部の急峻な道路で、道幅も狭くスピードが出せない上、片側1車線のため、大型トラックによる渋滞が慢性化していた。さらに交通事故も多発しており、高速道路の完成は周辺住民からも強く待たれていた。今回の高速道路開通により、約4時間半の所要時間は2時間半程度に半減するなど状況は大きく改善した。

さらに、モロッコ北部に位置する商業都市カサブランカや首都ラバトと、中部に位置するマラケシュやアガディールが短時間で結ばれることで、物流拡大や内外からの観光客増が見込まれ大きな経済効果が期待される。これまで、モロッコ人にとってもアクセスが悪いためなかなか訪れにくかったアガディールが身近になり、モロッコでは「この夏は国内の観光地図が塗り変えられるのではないか」とも噂されている。

【写真】

マラケシュのジャマ・エル・フナ広場には夕方から屋台が建ち並び、大道芸や食事などを楽しむ人々が集う

アガディール近郊に住む小学校の教師、ナビラ・エルマティニさんは「この高速道路の完成を私たちは長い間待ち望んでいました。今まで遠いと思っていたマラケシュにも日帰りで行けるし、カサブランカやラバトにも出やすくなって、親戚同士の訪問や買い物が簡単になりました。また、アガディールを訪れる人が増えれば地元の経済も潤い、私たちの生活にも余裕が出ます。私たちにとって、道路は水や電気と同じくらい大切なものなのです」と、道路の完成を喜んでいる。

日本はモロッコの運輸セクターで、今回開通した「マラケシュ−アガディール間高速道路」などこれまでに計7件の円借款を供与しており、同国の基幹運輸・交通インフラである道路の整備を通して、モロッコの経済活性化を後押ししていく。

モロッコ事務所、中東・欧州部


(注)日本は2008年5月に横浜で開かれた第4回アフリカ開発会議(TICAD IV)で今後5年間のアフリカ支援目標(フォローアップ)を定めた。広域インフラ整備は、その一つ。