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世界が認める「南南協力」の有効性

−ハイレベル会合で一層の推進を確認−

2010年12月07日

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「天使のプロジェクト」で、小川専門家と共に近隣国の看護教育強化に努めているエルサルバドルのプロジェクト・コーディネーター、コンスエロ・オラノ・エリアスさん

「南南協力」とは、途上国の中でも比較的開発の進んでいる国が、自国の経験や強みを生かしながら、他の途上国を支援することだ。1974年以降、日本は、他の援助機関に先駆けて、アジア、中南米、アフリカで南南協力を積極的に進めてきたが、言語や地理的条件、文化的背景などが似ていることから、効率的かつ効果的に開発課題に取り組むことができるこの協力方法は、多くの国々や援助機関の間でも注目を集めるようになった。(注)

JICAは、国連開発計画(UNDP)などと共催で、2008年から「南南協力ハイレベル会合」を毎年開催している。第3回目となる今回は、11月23日、スイス・ジュネーブで開かれ、そのサイドイベントとして開催された会合の中でJICAの「看護基礎・継続教育強化プロジェクト」が、南南協力の好事例として「優秀賞」を受賞した。

通称「天使のプロジェクト」とも呼ばれるこの技術協力プロジェクトは、JICAが2007年から、エルサルバドルを拠点にグアテマラ、ホンジュラス、ニカラグア、ドミニカ共和国で実施している広域プロジェクトだ。かつてJICAが、エルサルバドルやその周辺国で行ってきた看護教育強化プロジェクトなどで技術を習得した現地の看護師らを、近隣国の看護教育の指導者の能力向上研修に活用するという手法をとっており、プロジェクトの持続性や効率性などが高く評価されたことが、今回の受賞につながった。受賞に際し、プロジェクトのリーダーを務めた小川正子専門家は「プロジェクトによって築き上げられた5ヵ国間の強固なネットワークを拡大し、中米・カリブ諸国で『国境なき看護師団』を結成したい」と語った。

南南協力の援助効果に期待が高まる

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ハイレベル会合では、南南協力の事例を共有しつつ、協力推進に向けて各国関係者が議論を交わした

金融危機の影響などで減少する先進国のODA予算、ブラジルやインドといったいわゆる新興援助国の登場、民間企業やNGOといった開発協力実施者の多様化なども、南南協力に対する世界の関心を高めた要因だ。また、気候変動や感染症、食料、紛争など、国境を超えた地球規模の課題に取り組むために、二国間援助や国際機関を通じた援助だけでなく、近隣の、あるいは地域を超えた途上国間での協力も重要となっている。

今回の「南南協力ハイレベル会合」には、南南協力に関係する政府の局長級ら約170人が参加し、日本からは在ジュネーブ国連代表部の菅沼健一大使が、主催者を代表してあいさつをした。また、開会にあたり、国連総会南南協力ハイレベル委員会議長を務めるケニアのジョセフィーン・オジャンボ国連大使は「南南協力の大きな意義は、途上国間の平等な連帯と互恵関係の促進にある」と述べた。

南南協力の普遍化に向けて

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概念ではなく、実践を中心とした南南協力の推進を強調する細野JICA研究所上席研究員

続いて、参加国による事例発表が行われた。南南協力で支援を行っている国の参加者は「南南協力の特性は、高い効果や効率性に加えて、実施国それぞれの歴史や政治・経済社会を背景とした知識、経験、手法の多様性にある」とコメント。「その効果をさらに向上させるには、受け入れ国側の能力強化に加え、実施国のそれぞれの専門性や得意分野について、より一元化された情報の整備が必要だ」という指摘もあった。世界的な金融危機などの影響により経済開発協力機構(OECD)諸国の公的援助資金が減少しつつある中で、費用対効果の高い南南協力を各国、各機関ともこれまで以上に重視して取り組んでいることが報告された。

日本の南南協力の事例は、細野昭雄JICA研究所上席研究員が紹介。「南南協力の主流化(普遍化)に向け、概念的な議論にとどまらず、先進的な事例の共有を軸とした、より実践的な相互学習の推進が鍵となる」と提言した。

最後に、主催者を代表してチョウ・イーピンUNDP南南協力特別ユニット部長が、途上国のオーナーシップに基づいた、自発的な取り組みである南南協力を推進するため、国連をはじめとする援助機関や援助国が緊密に連携し、経験や情報の共有、対話の強化などを継続的に進め、積極的にサポートしていくことを表明した。

JICAは、今後も途上国の自立的発展を尊重し、革新的で効率的な南南協力の取り組みを積極的に支援する。

(注)国連は、「途上国間技術協力に関するブエノスアイレス行動計画」を採択した12月19日を、2003年に「南南協力の日」と制定。以降、毎年、この日に合わせてイベントを開催し、啓発に努めている。また、世界銀行が2008年、「南南協力のための基金」を設立したほか、経済開発協力機構(OECD)も南南協力によって援助効果が高まることに注目し始めている。

企画部国際援助協調課