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国土開発の土台となるアフリカ地域の地形図作成に協力

−国連会議で紹介した日本の技術に各国が注目−

2011年06月16日

「地形図は国づくりの基本なので、一刻も早く作成作業を再開したい。日本からの協力を得るには、どうすればよいだろうか」―。エチオピア・アジスアベバで開催された、「第2回国連アフリカ経済委員会開発情報と科学技術委員会(CODIST-II)」の特別セッションでの一コマだ。

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 CODIST-II全体セッションの模様

5月3〜5日の日程で行われたこの会議には、アフリカ地域約40ヵ国から、情報通信技術、科学技術、地理情報の分野に携わる、研究者、技術者、行政官らに加えてアフリカでビジネスを行う民間企業の関係者ら約400人が参加し、活発な議論が交わされた。

日本からは国土地理院、宇宙航空研究開発機構(JAXA)、JICA、航空測量会社3社が参加。特別セッションを設け、「地理空間情報を活用した科学技術」をテーマに、衛星画像を用いて東日本大震災の被害状況を把握したことや、日本国内で利用されている全地球測位システム(GPS)を用いた緊急地震速報システムなどを紹介した。

地形図は大切な基礎資料

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アフリカにおける中縮尺地形図の作成状況  赤:1989年以前に作成された地域  緑:1990年以降に作成された地域 青:JICAのプロジェクトで作成された地域

政府、自治体や企業などが開発を行うにあたり、対象地域の最新状況が反映された地形図は欠かすことのできない大切な基礎資料だ。正確な地形図がなければ、きちんとした国土の開発計画を立てることも難しくなる。アフリカ諸国において、地形図作成の遅れは度々指摘されており、インフラ整備、防災計画、災害復旧、森林・資源管理、農・工業開発など、多くの点で国家の発展に影響を及ぼしている。

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アフガニスタンでの地形図作成協力

JICAの地形図作成協力は、1971年のインドネシア・バリト河流域地形図に始まる。以来、「地図のない国で地形図を作成する協力」として、中縮尺の国土基本図や、森林などの資源管理のための小縮尺、都市開発に活用する大縮尺、また、緊急復興支援のための地形図の作成など、さまざまな縮尺、ニーズに応じた協力を行ってきた。

特別セッションでは、セネガルやブルキナファソから、「JICAの協力で作成された地形図は国土開発の礎となっており、インフラ整備や災害対策など、現在も数多くの場面で活用されている」との報告があった。また、JICAの協力で修得した技術を用いて、自国で地図情報を最新版に更新していることが発表されると、がぜん注目度が高まり、冒頭の質問が寄せられた。

トーゴの未来を大きく強く描く

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地形図の仕様について協議中(トーゴ)

JICAは、1990年代からは、デジタルデータによる地形図の作成、2010年からは、衛星画像を使った中縮尺地形図の作成を行っており、2011年には、援助再開後の技術協力案件第1号としてトーゴのデジタル地形図(注1)を作成する調査が開始された。

トーゴは、1991年1月以降、政治的混乱により、主要支援国が援助を控えていた経緯があり、インフラの劣化や自然災害による被害、経済の停滞など国土開発上のさまざまな困難を抱えていた。また、地形図も、1964年に作成されたものを使っており、都市開発や産業整備に実務上遅れが出ている。

2011年4月から開始したこのプロジェクトでは、高精度のALOS画像(注2)が利用可能になった。従来のように航空写真を利用した場合、特殊航空機のチャーターや機材の手配、飛行許可の取得などで、約6,000万円を要する。ALOS画像を利用すると、コストは約三分の一ですみ、しかも天候不順による順延や待機による工程変更に左右されないため、比較的短期間での技術移転が可能になった。

また、地形図をいかに作るかということに加えて、どのように使って国土開発を円滑に、効率的に行うかについて、関係省庁が集まり議論を行いながら進めているのも、このプロジェクトの特徴だ。

国家の礎となる地形図作成に向けて、JICAはさらなる支援を続けていく。

(注1)デジタル地形図を基に作成した地理情報データベースは、地形のみならず、地質や過去の災害記録、インフラ計画などの情報も併せて一元管理できるため、目的に応じて多様なデータ加工が可能。例えば、ハザードマップのように、自然災害による被害を予測し、地域の防災計画を立案するのに多大な力を発揮する。また、国土開発においても、森林・農業・工業・河川・土地・鉱物資源などの開発や保全を、計画的に行うことが可能となる。

(注2)ALOS(Advanced Land Observing Satellite)画像とは 、JAXAが開発した陸域観測技術衛星「だいち」より提供される、高精度の衛星画像。災害対策、地図作成、地域・資源観測などに役立てられる。