トピックス

NGO、企業、大学との協働プラットフォーム、発進!

−JICA中部が第1回ワークショップを開催−

2011年08月17日

8月2日、JICA中部(名古屋市中村区)で「第1回協働ワークショップ−カンボジアの事例を通して−」が開催された。

【写真】

あいさつをするJICA中部の大貝隆之所長(左)

JICA中部は、「すべての人々が恩恵を受ける、ダイナミックな開発」というJICAのビジョンを実現するため、これまで2度、名古屋周辺のNGO、企業、大学関係者らを招いて、公開意見交換会を開催した。参加者からは、「途上国の開発のためには、パートナーとして連携するのが効果的とわかっているが、相手を知り、確認し合う『場』がない」との声が多く聞かれた。

この声に応えるべく開催した「第1回協働ワークショップ」には、地元のNGO、企業、大学などから、37人の多彩な顔ぶれが集まった。その三分の二は、JICAの協力事業やイベントに参加した経験のある「リピーター」たちだ。連携して開発を推進する大切さを知っているからこそ、「このまま終わらせたくない」との思いで再集結した形となった。

NGO、企業、大学の枠を超えて

ワークショップには、カンボジアで活躍する3人の講師が招かれ、目標を共有する人たちが、NGO、企業、大学の枠を超えて「協働」する大切さについて語った。

【写真】

人々に自信を取り戻してほしいと、カンボジアへの思いを語る倉田さん

日本とカンボジアの合資会社、クラタペッパーの倉田浩伸代表は、1992年にNGOの仕事でカンボジアに飛び込み、難民の帰還支援や学校校舎の建設に従事した。しかし、復興に当たっては産業を興すことがより大切と考え、クラタペッパーを設立。内戦によって生産量が激減していた良質なコショウ生産を再興し、農民たちに誇りを取り戻してほしいとの思いもあった。

倉田さんは現地の青年海外協力隊員とも協力し、隊員たちの指導で村人が作った服の端切れを活用し、コショウの袋を包む巾着を作るよう助言した。その巾着を75セント(約58円)で仕入れ、通常のコショウに50セントだけ上乗せして売る。つまり、売れるたびに25セント損をするが、その分はビジネス全体でカバーする。倉田さんの中では、NGOの発想と企業の手法が「協働」していた。

【写真】

功能さんの設立したARUNは、カンボジア語で「暁、夜明け」を意味する

社会的投資に取り組む、ARUN(アルン)合同会社の功能(こうの)聡子代表は、NGOとして1995年にカンボジアに入り、2001年からはJICAカンボジア事務所のスタッフも経験した。開発途上国では、産業の中核となるべき中規模企業が不足しているため、ピラミッド型の企業構造がほとんど見られない。功能さんは2009年に「NGOでもJICAでもない関係づくり」を目指して合同会社を設立した。貧困者向けの小口金融であるマイクロファイナンスからも商業金融からも融資の得られない「ミッシング・ミドル」と呼ばれる中規模企業に資金を提供するためだ。この仕組みは、ソーシャルビジネスに関心を持つ日本の投資家や、ミッシング・ミドルを支援する現地NGOも巻き込み、一つの「協働」モデルとなった。

【写真】

伊藤さんは、カンボジアの農村地域の伝統的技法と市場ニーズを踏まえた酒造産業の復興に取り組んでいる

NGO、企業、大学、JICAの協働が大切と語るのは、名古屋大学農学国際教育協力研究センターの伊藤香純准教授。カンボジアの伝統的な米蒸留酒の品質向上と販売に取り組んでいる。伊藤さんは功能さんの後任としてJICAカンボジア事務所に勤務。大学に移ってからも、大学が国際協力にかかわる可能性を追求し、教育者として人材育成に取り組んだ。「実践こそが教育」の信念の下、カンボジア南部・タケオ州産の「武玉(たけお)」ブランド蒸留酒を広めている。

一人ひとりが主役だから協働を目指す

3人の共通点はNGO出身ということ。また、功能さんはBOPビジネス連携促進調査(注1)で、伊藤さんは草の根技術協力(注2)でJICAと協働中だ。ワークショップの質疑応答で東ティモールで活動するNPOの関係者が「事業を継続する力は何か」と尋ねると、倉田さんは「やりたいという気持ち」と答えた。カンボジアでBOPビジネスを検討中の企業経営者からは、3人に農業技術についての質問が飛んだ。一方、会場からは伊藤さんに対し「酒造りなら、あいち産業振興機構の会員企業に相談したらどうか」と温かい助言もあった。

ワークショップ終了後、地元企業の参加者は「これまでBOPビジネスを勉強しても観念的でわからなかったが、日本が戦後歩んできたように『人間の基本的要求』を満たすことが重要と再認識した」と述べた。また、ソーシャルビジネスを研究中の参加者からは「生産における協働だけでなく、ビジネスとタイアップすることで協働を実現することもできるという発見があった」との声が聞かれた。

JICA中部は8月2日のこの日を「協働プラットフォーム発進の日」と位置づけ、引き続きNGO、企業、大学、JICAが出合い、活動情報の共有、ネットワークの拡大を可能とする「場」を提供していく。


(注1)BOP(Base of the Pyramid)層とは、購買力平価ベースで年間所得が3,000ドル未満の開発途上国の低所得者層で、世界人口の約72パーセント、約40億人に相当。BOPビジネスは、BOP層が抱える問題に企業が持つビジネス・マインドを持ち込んで解決につなげようというもの。「BOPビジネス連携促進調査」は企業が提案する案件にJICAが調査費を出す仕組み。

(注2)NGO、大学、地方自治体および公益法人等の団体による、開発途上国の地域住民を対象とした協力活動を、JICAが政府開発援助(ODA)の一環として、促進し助長することを目的に実施する事業。