途上国も日本の地方も元気にする事業、全国で展開中(前編)

2015年4月24日

人口減少と少子高齢化の進行に伴い、日本の地方活性化は喫緊の課題となっている。JICAは開発途上国の社会・経済の発展のために、日本の地方が持つさまざまなノウハウや経験を活用しているが、そうした取り組みが日本の地方活性化にも貢献している。

2014年12月に閣議決定された「まち・ひと・しごと創生総合戦略」により、「地方創生」に向けた取り組みが本格化する中、JICAは「中小企業海外展開事業」「草の根技術協力事業」「研修員受け入れ事業」「ボランティア事業」などを通して、途上国も日本の地方も元気にする事業をさらに拡大していく考えだ。日本各地で広がる事例を前編、後編に分けて紹介する。

十勝の「食」の魅力、マレーシア初のハラル認証大福の開発につながる

マレーシアのハラル食品国際展示会で、十勝のハラル認証大福を試食するナジブ・ラザク首相

日本有数の農業地帯、北海道十勝地域。恵まれた環境や資源、安全安心ブランドといった魅力を最大限に生かし、「フードバレーとかち」(注2)の旗印の下、食と農林漁業を柱とした産業の活性化や日本国内外の販路拡大に取り組んでいる。

JICAは2013年9月、東南アジア5ヵ国の食産業に携わる政府関係者らを、十勝地域に招いて研修を実施。地元企業との交流も図った。続いて2014年3月から帯広商工会議所は、JICAの草の根協力事業を通じて、タイとマレーシアで食の安全安心の向上や食産業の振興を支援している。

こうした取り組みを通じて、現地の企業と連携し、東南アジア市場に乗り出す十勝の企業も出始めた。河西郡中札内村の和菓子メーカー「株式会社とかち製菓」は、マレーシアの菓子メーカーとハラル認証大福の共同開発を進めており、年内にもマレーシアで販売を開始する予定だ。東南アジアの食産業振興を進めながら、十勝の経済活性化にも貢献する、win-winの関係が実を結ぼうとしている。

「燕三条ブランド」工具で東南アジアの産業人材を育成、市場も開拓

トップ工業の工具を使った研修(カンボジア)

国内外で高い評価を受ける新潟県三条市の金属加工技術「燕三条ブランド」。国内経済の低迷と市場の縮小を背景に、途上国市場への進出に向けた動きを加速させている。

作業工具を製造・販売する「トップ工業株式会社」は、JICAの支援を通じ、カンボジアの職業訓練校や工科大学で、同社の良質な工具を用いた実践的な技術研修を実施した。この研修によって、企業のニーズに合致する人材の育成で効果を上げただけでなく、商品の認知度を向上させることに成功。現地の総代理店も決まり、現在、本格的な販売に向けて準備を進めている。

三条市と商工会議所も、こうした動きを後押ししている。2013年12月から、ベトナムの南部重要経済地域に指定されているバリア・ブンタウ省で、現地企業に金属加工技術を指導したり、政府関係者に産業振興施策を学ぶ機会を提供したりしている。市を挙げた取り組みを通して、三条市の企業と現地企業が交流を深め、今後のビジネスチャンスの拡大が期待されている。

能登の里山とフィリピンのイフガオの棚田が、地域づくりと人材育成で協力

能登で研修を受けたイフガオの受講生ら

「能登の里山里海」は2011年に世界農業遺産に認定されたものの、過疎化の進行で集落が維持できなくなるなどの課題も山積している。こうした課題に立ち向かうため、2007年に金沢大学が「能登里山里海マイスター養成プログラム」(注3)を立ち上げ、里山保全や地域活性化を図る人材の育成を進めている。

このノウハウを、同じく若者の農業離れで耕作放棄地が目立つフィリピン北部の世界遺産「イフガオ棚田」の保全に役立てるため、金沢大学が中心となって、JICAの草の根技術協力事業を実施している。現地では、能登の例を参考に「イフガオ里山マイスター養成プログラム」を導入して人材育成を行うなど、魅力ある農業の実践と地域の持続的発展に向けた取り組みを進めている。

2014年9月には、イフガオ里山マイスタープログラムの受講生10人を能登に招いて研修を実施した。そのプログラムの一環で、イフガオの受講生と、能登里山マイスターの受講生が、互いに地域活性化のための研究課題を発表し、意見を交換した。JICAはこうした支援活動や交流を継続することで、能登地域から国際的な視点で日本の地域課題に貢献する人材を輩出することも目指している。

また、アフリカや中米などから帰国した青年海外協力隊の経験者らが、能登里山マイスターを受講した縁で能登地域に移住し、協力隊の活動で培った経験を生かしながら、地域活性化や農業従事者の養成に貢献している。今後、こうした人材が増え、地域活性化の一端を担っていくことが期待されている。

(注1)人口急減や超高齢化という日本が直面する課題に対して政府が一体となって取り組み、各地域がそれぞれの特徴を生かした自律的で持続的な社会を創生するための政策。
(注2)十勝の特性や優位性、蓄積されてきた産業基盤を活用した地域産業政策のこと
(注3)金沢大学と地元自治体が、自然と共生した美しい能登半島の活性化を目的に、就農を志す若い担い手を能登に呼び込み、地域のリーダーとなる人材を養成するプログラム。