JICAの支援でエチオピア政府と皮革業界が立ち上げた新ブランド「Ethiopian Highland Leather」が日本で発売開始

2015年11月4日

日本で発売が開始されたEthiopian Highland Leatherの靴

エチオピアの産業開発政策を改善するため、JICAは2009年から同国政府と産業政策対話を行ってきた(注1)。以降、2期にわたる調査の一環として、同国政府と皮革業界を支援し、羊皮革ブランド「Ethiopian Highland Leather(エチオピアン・ハイランド・レザー)」が立ち上がった。同ブランドのエチオピア国外販売の第一弾として、10月17日、日本全国でエスニック衣料・雑貨を販売する「MALAIKA」で、羊革製の靴の販売が始まった。

国のイメージアップを目指す「チャンピオン商品アプローチ」

エチオピアは過去10年間、ほぼ毎年、二桁の経済成長率を維持しているが、製造業が伸び悩んでいるほか、民間セクターの発達の遅れが、輸出促進や国内外からの投資促進の障害となっている。そのような状況を改善するため、2009年に始まった産業政策対話を進めた結果、輸出振興の具体的な手段として、2012年、「チャンピオン商品アプローチ」が提案された。「チャンピオン商品」とは、エチオピアの歴史や文化に基づいた独自性を持つ品質の高い商品のこと。レザー(皮革)、テキスタル(織物)、宝飾類、農産品、コーヒー、観光の6カテゴリーが選ばれ、それらの商品をブランド化して輸出することで、国のイメージアップを目指す政策が打ち出された。

アフリカンフェアに出展したエチオピアのブース

国のブランド化を支援するという初の試みに、JICAはコンサルタント、広告代理店とチームを組んで、2013年5月、「チャンピオン商品アプローチ実践支援調査(第1期)」を開始。エチオピア側は工業省や商工会、NGO、輸出経験豊富な企業の代表が「チャンピオン商品アプローチタスクフォースチーム」を結成して調査に取り組んだ。

まず、市場での実践的経験を蓄積するため、同年横浜で開催された「第5回アフリカ開発会議(TICAD V)」のサイドイベント「アフリカンフェア」に出展。続いて都内の百貨店でテストマーケティングを行ったほか、エチオピア国内でも国際展示会に出展した。質の良いエチオピア製品が日本市場に受け入れられる可能性は認められたものの、デザインや品揃えなどの問題から日本企業との契約には至らなかった。この経験から「作れるものを売る」という発想から「売れるものを作る」というアプローチにたどり着く。

付加価値のある商品で先進国市場に挑む羊皮革ブランドの構築

チャンピオン商品のブランド力を高め、輸出振興につなげるため、2014年11月、JICAは同調査の第2期を開始。エチオピア投資庁をカウンターパート(注2)として、新たに「チャンピオン商品アプローチ実施委員会」が組織された。

まず国をブランディングするため、エチオピア産品の魅力やものづくりのクオリティーを表現するイメージビデオ「CREATIVITY in MOTION」を製作。このビデオは2015年4月、成田に就航を開始したエチオピア航空の機内でも流された。さらにチャンピオン商品を紹介するウェブサイトも開設。サイトは、エチオピアの企業や生産者から自発的な取り組みが生まれるよう、自ら情報を発信できるような仕組みになっている。

ブランドのロゴ

チャンピオン商品の中から、「売れるものを作る」ため、さまざまな調査を行った結果、レザーの中でも羊皮革が国際競争力を持つことがわかった。第1期から「チャンピオン商品アプローチ実践支援調査」の日本側リーダーを務める永井教之統括は、「途上国産品を先進国市場で展開していくには素材としての魅力が重要。調査を進める中で、羊皮革という素材を見つけたことが大きな原動力となった」と言う。

エチオピアの高地で育った羊の皮革は、薄く、軽く、柔らかいにもかかわらず、伸縮性が高くて丈夫という特徴がある。その品質は世界最高峰とも言われ、海外の有名スポーツメーカーの手袋などに使用されている、知る人ぞ知る高級素材だ。しかし輸出量は少なく、消費者の間での知名度は限られている。そこでエチオピア羊皮革を代表する同一ブランドを構築する戦略を取ることとなった。エチオピア側には、新たに工業省が管轄する皮革産業開発機構、民間の皮革生産者団体、そして現地調査で訪問した30以上の企業から選ばれた9社(小物4、靴2、革加工3)が加わった。

新ブランドの立ち上げを、2015年7月に開催される日本最大のファッション展示会「JFWインターナショナル・ファッション・フェア(JFW-IFF)」への出展に定め、急ピッチで作業が進んだ。日本側が提案した複数の名称の中から、話し合いを重ねてブランド名を「Ethiopian Highland Leather」に決定。ロゴやタグ、冊子などの製作と並行して、参加企業は新ブランドを表現する商品開発に着手した。2015年4月には、エチオピア皮革生産者団体の代表者が来日し、都内で革卸業者向け内覧会を実施。エチオピアの基本情報から皮革産業の概要、新ブランドについて説明した。卸売業者にはエチオピアの羊皮革に触れてもらい、取引の可能性を探った。そして7月、Ethiopian Highland Leatherは日本で商標登録出願を済ませ、新ブランドが誕生した(注3)。

JFW-IFFにアフリカから初出展、実地研修も

ブースでバイヤーに商品の説明をするエチオピアからの参加者(左端が永井統括)

7月22〜24日に開催されたJFW-IFFに合わせて、JICAは新ブランドに参加したエチオピア企業5社を招き、研修を実施した。研修参加者は、四国タオル工業組合が生み出したブランド「今治タオル」の例を学んだ後、日本市場の特徴・ニーズを理解するため、銀座の百貨店や専門店などの小売店を視察。そして展示方法を学び、JFW-IFFにEthiopian Highland Leatherのブースを設けた。これは新ブランドの初披露になるとともに、アフリカ企業のJFW-IFFへの初出展となった。

日本の商習慣を理解するための実地研修となった会場では、百貨店やセレクトショップなど147社のバイヤーと商談し、その場で2社との商談が成立。そのうちの1社が、今回発売開始となった「MALAIKA」だ。そのほか49社からサンプル取り寄せや追加情報提供の依頼があった。ブースを訪れたバイヤーからは「タッチ感や色など、素材がすばらしい」「この素材感でこの価格であれば安い」など、素材や価格が評価された一方、デザインに改善が必要なことや、納期や輸送コスト、小ロットへの対応など、取引上の不安の声も聞かれた。

研修終了後、参加者は「今回の成果は、一つのブランドの下で各社が力を合わせたから達成できた」「今治タオルのように統一の品質基準を持つことが必要だ」「強いブランドを築くためには継続して展示会に出展することが重要だ」などと、日本市場での手応えを口々に語った。

永井統括は「ようやくエチオピア側もブランドの価値というものを認識してきたところ。日本のバイヤーとの関係構築に引き続き取り組みながら、彼らがブランドを維持していくためのモチベーションをどこまで高めていけるかが、今後の最重要課題」だと言う。2016年3月の調査終了に向けて、エチオピア関係者だけで、長期的にブランドを維持管理していくための体制作りにも力が注がれる。


(注1)エチオピア側はエチオピア開発研究所をリーダーに工業省などの関連省庁、日本側はJICAと政策研究大学院大学(GRIPS)、日本貿易振興機構(JETRO)、国際協力銀行(JBIC)が中心となって構成。
(注2)国際協力の現場で技術移転や政策アドバイスなどの対象となる組織、または行政官や技術者のこと。
(注3)エチオピアでは9月に商標登録出願を行った。