マレーシア・キナバル山、登山道が開通——6月の地震で閉鎖、再整備にJICAが安全性調査で協力

2015年12月3日

開通した新登山道(写真提供:Mr. Hanry Mujih, Research Assistant, Sabah Parks)

12月1日、東南アジア最高峰、マレーシア・キナバル山(標高4,095メートル)の登山道が再開通した。今年6月5日にマグニチュード5.9の地震が発生。大規模な崩壊・落石が発生し、日本人を含めて10人を超える登山者が巻き込まれ命を落とした。事態を深刻に受け止めたマレーシア政府は、より高い安全性を確保するため登山道を閉鎖し、再整備を開始。JICAも落石対策・登山道安全性評価調査団を派遣し、代替ルートの安全性・地質評価などの支援を行った。

 

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新登山道からの眺望(写真提供:Mr. Hanry Mujih, Research Assistant, Sabah Parks)

安全で眺望も良い絶好のルートを整備

山頂の崩落

ロバの耳岩峰の崩落

ボルネオ島北東部のサバ州に位置するキナバル山は、年間約5万人の登山者が訪れる重要な観光資源で、同山を含むキナバル自然公園は2000年にユネスコ世界自然遺産にも登録されている。地震でラバンラタ山荘(3,272メートル)より山頂までの最終チェックポイントであるサヤサヤ山荘(3,668メートル)の登山道が崩落し、入山禁止となっていたため、登山ガイドとして従事していた地域住民の中には、職を失う人や職を求めて都会に出る人もいるなど、地域の経済と雇用に大きな影響を与えた。

こうした状況を受けてマレーシア政府は、独自にコンサルタントに依頼し、落石の影響を受けたラバンラタ山荘からサヤサヤ山荘までの区間において複数の代替登山ルートの提案を仰いでいたが、そのリスク分析や検証についての支援をJICAに要請。サバ州を中心とする生物多様性や生態系保全のためのプロジェクト(注1)で継続的な支援を実施しているJICAでは、プロジェクト全体を補完する支援になると判断し、9月に落石対策・登山道安全性評価調査団を派遣していた。

調査団の派遣は、公益社団法人日本山岳ガイド協会との連携で実現したもので、JICAの呼びかけに応えて降籏義道専門家、飯田肇専門家の2人が現地入り。代替ルートの安全性、地質評価に加え、落石分析や対策についても助言した。

このたび新たに開通した登山道は、安全性はもとより、眺望のよいルートで、これまで以上に多くの登山客の誘致が見込まれている。

マレーシア政府、登山環境の整備に注力

新ルート候補地域の樹林踏査をするJICA専門家

よく整備されている既存の登山道

飯田専門家によると、日本の山岳は変動帯(注2)にあるため崩壊地や地滑り地帯が多いのが特徴で、登山道もそのような不安定な個所を通過している例が多いという。一方で、キナバル山は固い岩盤で構成されているものの、地震によって加わった大きな外力で崩壊が進んだ。従来、崩れやすい日本の登山道補修などで培ったノウハウを、今回の調査に役立てることができたと語っている。

降籏・飯田両専門家はまた、キナバル山の登山道が一般的な日本の登山道よりも丁寧に整備されていることへの驚きと、地元関係者の日ごろの努力への敬意も明らかにしている。さらに、今回の新登山道整備にマレーシア政府が最大3億円の予算を割り当てていることや、政府高官など当局関係者が積極的に登山道整備にかかわっている姿についても指摘。日本以上に、登山者に良好な登山環境を提供しようという政府の姿勢を「山に携わる者としてうらやましい」と話している。

JICAでは今後も、プロジェクトの核となる事業はもとより、これらの事業を補完する事業についても、可能な限り迅速かつ専門的に対応していく。

(注1)サバ州を拠点とする生物多様性・生態系保全のための持続可能な開発プロジェクト

(注2)大陸や大洋底を取り巻くように分布し、地殻変動や地震活動が活発に起こっている地帯。その大部分はプレートの境界に沿って分布する。