南スーダン、独立後初めての全国スポーツ大会——テーマは「平和と結束」、地域や民族越えフェアプレー

2016年2月3日

開会式で入場行進する選手団

1月16日、南スーダン独立後初となる全国スポーツ大会が首都ジュバで開幕し、全国9都市から男女約350人の選手が参加した。政府はこの日を「National Unity Day(結束の日)」と決め、大会テーマを「Peace and Unity(平和と結束)」とした。

国立競技場が会場となった開会式には副大統領をはじめ大臣6人も出席し、盛大に行われた。開会式でスピーチを行った政府高官の一人は「今、われわれは平和と結束を最も必要としている」と述べた。選手が南スーダンの国旗を手に入場行進した際には、涙する閣僚もいたほど、本大会は南スーダンにとっての悲願だった。

フェアプレー精神で「平和と結束」

南スーダンは2011年の独立後、国際社会の協力を得て国造りを進めていたが、2013年12月にディンカ族出身のキール大統領とヌエル族出身のマシャール元副大統領の権力争いが引き金となり紛争が勃発。多くの市民が殺害されたほか、レイプや略奪が横行した。

2015年8月、政府及び反政府勢力による和解合意が締結されたものの、合意内容の実施は遅れ、予断を許さない状況が続いている。不安定な政治状況の最中に行われた今回のスポーツ大会は、異なる地域や民族出身の選手が集まり、フェアプレー精神で試合を行うことで、南スーダンが一つになれることを国民に呼びかけたい政府の切実な思いがあった。

南スーダン最速の男

男子200m決勝

古川JICA南スーダン事務所長より表彰されるジェイニー選手

17日からは、サッカーと、短距離走や砲丸投げなどの陸上競技が行われた。陸上競技では、圧倒的な速さで100m、200mの二冠を果たしたガトクオス・ジェイニー選手(19歳)が注目を集めた。

ジェイニー選手は、隣国ウガンダに住みトレーニングを行っているが、母国で初めて開催されるスポーツ大会に出場するため帰国した。「南スーダンは長い間戦争をしていたが、平和が戻りつつある。今回はレースに出場するだけでなく、みんなと平和を分かち合うために帰ってきた」と話した。2つの金メダルを獲得したことについて「とても興奮している。南スーダンで公式戦に参加できることは選手にとって大きな励みになる」と話し、夢は「世界記録更新」と語った。

国際オリンピック委員会への加盟が承認され、今年のリオデジャネイロ・オリンピックに初めて公式参加する南スーダン。さらなる成長が見込まれるジェイニー選手のリオデジャネイロ、そして2020年東京オリンピックでの活躍が期待される。

オールジャパンで支えた大会開催

整備されたグラウンド。公共事業省も大会のため整地を行った

選手たちの熱戦の裏には、主催者である文化・青年・スポーツ省をはじめとする関係者の並々ならぬ努力があった。全国規模のスポーツ大会を企画・運営した経験がなく、インフラも未整備な中、選手の選抜方法や移動手段の確保など、大会の企画・運営はJICAも支援して、手探りで決められていった。サッカーの出場資格は15〜19歳としたが、独立闘争中に生まれ、生年月日を証明できる公的文書を持ち合わせていない選手も多く、自己申告を認めざるを得なかった。

また、教育や保健などの基礎的行政サービスにさえ十分に予算が確保されていない南スーダンにおいて、スポーツ・グラウンドは整備されておらず、大会で使用する3つのグラウンドも穴だらけだった。試合中に選手が怪我をする危険性もあるとして、関係者は頭を悩ませた。

そこで支援を申し出たのが、南スーダンに派遣中の自衛隊派遣施設隊に加え、橋や給水施設の建設を行っている株式会社建設技研インターナショナルと大日本土木株式会社だ。自前の建設機材と人員を動員して、選手が安心して競技ができるようグラウンドを整地した。まさに、オールジャパンで大会開催を支える形となった。

スポーツを通じた平和への願い

観戦にきていたタバン・アワドさんと息子のカウ君

開会式とサッカー決勝戦はテレビやラジオで生中継されたほか、大会の模様は連日地元メディアで報道され、試合会場には多くの市民が訪れた。サッカー決勝戦に息子のカウ君(4歳)と観戦に来ていたタバン・アワドさん(36歳)は「父親は独立戦争に参加し、自分は母親に育てられた。自分が父親となった今、息子のそばにいてやりたいと思う。南スーダンが、毎日スポーツが行われるような平和な国になってほしい」と、息子のため平和を願った。

試合終了後、ワウの選手を慰めるベンティウの選手

大会期間中は選手同士の交流を深める活動も行われた

23日に行われたサッカー決勝戦は、奇しくもディンカ族中心のワウ市チームとヌエル族中心のベンンティウ市チームという、民族の異なるチームの組み合わせとなった。しかし、選手も観客もフェアプレーを貫き、試合が決着した後は勝者となったベンティウの選手が泣き崩れるワウの選手の肩を抱いて慰め、互いの健闘をたたえあった。

大会に参加した多くの選手が、今まで交流のなかった地域に住む選手と友達になったと話す。出身地域や民族の違いを超えて全力で試合に臨んだ350人の選手、そしてそのひたむきな姿を見た人々が、南スーダンに平和をもたらすことを願う。

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