【東日本大震災から5年】日本の技術が立役者!ミルクフィッシュとカキで台風ヨランダの被災地復興

2016年2月29日

養殖したカキを手に笑顔

東日本大震災発生時、世界中の国々が日本に支援の手を差し伸べる中、フィリピンからも医療チームの派遣や物資供与など、多大な支援を受けた。2013年11月8日、そのフィリピンを「過去に類をみないほど」と形容された台風30号(フィリピン名:ヨランダ)が直撃した。

この台風により、同国は広範囲に渡り被害を受け、地域によっては90%もの家屋が倒壊。特に、台風の進路上に位置し、被災前より貧困層が占める割合が多かったレイテ島、サマール島の沿岸部では、主要産業であるココナッツ栽培や漁業などに壊滅的な被害を受け、生計手段の確保が困難な状態が続いていた。そこでJICAは、両地域を対象とし、2014年2月に「台風ヨランダ災害緊急復旧復興支援プロジェクト」を開始させた。より災害に強い社会、及びコミュニティを形成するため、東日本大震災からの復興に向けた取り組みを進行中の宮城県東松島市などに協力を依頼。プロジェクト開始から約2年を経た今、その活動の一環であるミルクフィッシュとカキの養殖業復活に成功した。立役者となっているのは、日本の養殖技術だ。

「浮沈式」は台風にも負けない!フィリピン全土への普及も期待

浮沈式養殖生簀。ロープなどでつなぎとめて、生簀自体を浮かせたり沈めたりする

約7,000以上の島々からなる群島国家、フィリピン。その中部、レイテ島とサマール島に挟まれたサン・ファニコ海峡に位置するバセイ海面養殖場は、かつて年間約60万トンのミルクフィッシュ生産量を誇っていたが、台風ヨランダによって、ボート265隻、養殖筏(いかだ)110基が大破、流出するなど壊滅的被害を受けた。ミルクフィッシュは、フィリピンでは大衆魚として様々な料理方法で親しまれているポピュラーな魚だ。漁業と食卓へのミルクフィッシュ復活を叶えるため、プロジェクトが導入を決めたのは、日本で開発された「浮沈式養殖生簀」だった。

浮沈式生簀は、高密度ポリエチレン製で、波浪に対する抵抗力と耐久性が高いといわれている。実際フィリピンの他の島ですでに導入されていたものについては、台風ヨランダの被害を免れた実績もある。プロジェクトでは、再び台風が襲っても地元漁民だけで復旧できるように、現地で入手可能な資機材を工夫しての活用、及び、生簀の沈め方や作業に必要な潜水具の手入れの仕方などの維持管理の方法を、日本企業の専門家が現地指導した。

2014年12月に発生した大型台風ルビーの被害も見事に免れ、今では生簀の中で大きく育ったミルクフィッシュの収穫により、台風前よりも多い収入を得る漁民が出るまでになった。また、この養殖場をモデルとし、将来的にはフィリピン全土に「浮沈式養殖」という日本独自の技術が普及される想定だ。

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左/待ちに待った収穫 右/大きく育った大衆魚ミルクフィッシュ

東北のカキ名産地、東松島市が養殖技術指導

レイテ州タナウアン町のサンタクルス村では、ミルクフィッシュとカキの混合養殖を成功させた。ホタテ貝の殻に種ガキをつけて養殖するという、日本のカキ養殖では一般的な技術をサンタクルス村の漁民に伝授したのは、JICAが招いた宮城県東松島市の漁業関係者。2015年早々に始めたカキ養殖だが、同年10月には出荷できるまでに成長、しかも、一粒カキとしても高い値段でレストランなどに卸されるまでに至っている。今後、石巻NPO関係者も加わり、さらに本格的な技術支援や加工製品の確立に取り組む予定だ。

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左/卸先のレストランの店員たち。「どれも新鮮でおいしいと好評ですよ!」と太鼓判 右/レストランの人気メニュー、カキのチーズ焼き

「ペン養殖」で育ったミルクフィッシュの収穫

ミルクフィッシュの養殖においては、「ペン養殖」を採用。竹と漁網で浅瀬を仕切る、被災以前から同地で行われていた技法で、現在30基以上が稼働している。技術指導だけではなく、餌や稚魚購入を支援する投資家募集などの基盤強化に奔走したことも実を結び、投資家は徐々に増え、これまでに40回近くも収穫されている。

ただし、同地におけるカキとミルクフィッシュ、どちらの養殖においても、竹竿を骨格とする伝統的な構造で製造されているため、台風ヨランダに匹敵する超大型台風に再び遭遇すれば損壊する可能性は否定できない。そこで、対象の養殖施設と運営を保険で守る計画も提案中だ。

加工食品の生産で女性たちの経済的自立も支援

加工食品を手に笑顔の女性メンバーたち

ミルクフィッシュ加工施設では女性たちの明るい声がこだまする。「ぜひ私たちの商品を買って行って!おいしいですよ!」。持続的な養殖業運営には、組合組織が不可欠という専門家らのひたむきな助言により、バセイ海面養殖場があるサマール州バセイ町とレイテ州タナウアン町とで相互に連携する広域組合が結成された。その加工食品業を主とする活動は、つらい経験をした地元女性たちにも経済的自立と前進する力をもたらした。頭からしっぽまでまるごと食べられる「ソフトボーンミルクフィッシュ」は、今では地元スーパーや空港前の食堂にまで市場を開拓した人気商品。タナウアン町のカキにおいては、真空フライ加工製品の製作も試行中だ。

台風前より災害に強い地域社会へ。東日本大震災からの復興経験に基づいた協力を得ながら、持続可能な「Build Back better(より良い復興)」をより確実なものにするため、今後も取り組んでいく。