「第1回中高生による魚料理コンテスト」で熱戦——漁業振興と健康対策を目指す、カリブの国セントビンセント

2016年3月23日

優勝した「鯛のココナツ蒸しとマッシュド・スイートポテト」

「セントビンセントおよびグレナディーン諸島」は、カリブ海と西大西洋の間に浮かぶ30以上の島から成る人口11万人ほどの小国。JICAはセントビンセントの主要産業の一つである漁業の振興を支援しており、その効果もあって漁獲量が増え始めている。さらに国内での魚の消費も引き上げようと、同国で現在、ただ一人のJICAボランティアのがんばりで、中高生による魚料理コンテストを初開催。見事な料理が出そろった。

中高生のオリジナル料理で魚の消費拡大を目指す

調理する中高生は真剣そのもの

審査にも熱が入る(左が古元さん)

日本人に高評価だった「フィッシュボールとマンゴーソース」

すべての島を合わせても神奈川県横浜市よりも一回り小さい面積に過ぎないセントビンセントの主な産業は、観光業と農業(バナナ生産)、漁業。食事は米、イモ類、バナナ類などの炭水化物が多く、野菜は少ない。主なタンパク源は鶏肉だが、フライドチキンのようなファストフードが主食的地位を占めている。そこで、より貴重なタンパク源でもあり、肥満や糖尿病などの対策にも効果が期待される魚をもっと食べようという活動が、水産局とJICAボランティアのイニシアチブのもと始まっている。

現在、セントビンセントで活動しているただ一人のJICAボランティア、古元高光(ふるもとたかみつ)さんは、「Put a Fish on Your Dish(食卓に魚を!)」をスローガンに漁業振興に取り組む水産局に青年海外協力隊員として配属されている。その彼が中心となって企画した、中高生による魚料理コンテスト「Schools Fish Cook-Off」が、1月28日に初めて開催された。

第1回目の今回は、国内の西部に位置する3つの学校が参加。バルアリー技術専門学校の「鯛のココナツ蒸しとマッシュド・スイートポテト」が、見事、優勝に輝いた。味や見栄えで大きな差はなかったが、優勝チームだけが魚を油で揚げず、栄養面で高評価を獲得したことが決め手となった。

水産局長は、「このイベントを契機に、学校給食で魚メニューが増えることを期待している」とした上で、今後、すべての中学・高校を対象に同様のコンテストを開催する方針を明らかにした。さらに、将来的にはすべてのレシピをまとめた冊子を発行したいとも話し、セントビンセント政府の漁業振興と魚消費量引き上げへの強い意志が感じられた。

4〜5月にかけての「フィッシャーマンズ月間」に第2回目のコンテスト開催を計画しており、古元さんは水産局とすでに具体的な調整に入っている。

カリブ地域の漁業管理プロジェクトで漁業の発展を

首都キングスタウン

浮漁礁の設置後は大型マグロが水揚げされ始め、キハダマグロの大物60キロには驚きの声も

カリブ海と北大西洋に囲まれているカリブ地域の漁業は、観光業、農業に次ぐ雇用数を生んでいるなど、持続的な発展が不可欠。そこでJICAは、豊富な資源を長く利用するために漁民と行政が共同で漁業管理体制を整備できるよう、2013年5月からカリブ地域の漁業管理プロジェクトを通じて漁業の振興を支援している。

プロジェクトでは、東カリブ諸国機構6ヵ国(注1)を対象に、各国の水産局など行政機関と漁民が共同で漁業を管理するための仕組み作りなどをサポート。対象国の一つ、セントビンセントでは、2015年4月ごろから浮漁礁(注2)の導入を開始し、漁獲量向上などの成果が見え始めている。

次のステップとして、消費を増やすことも視野に入れている一方、セントビンセント政府も健康対策の一つとして魚の消費を増やそうとしている。今回のコンテストは、水産局で活動する古元さんが、プロジェクトでは直接のかかわりがない教育省や保健省にも協力を要請し各関係機関をつなぎ、半年がかりでようやく実現にこぎつけたイベントだった。

生産者と消費者のつながりを強め漁業を振興

日本の支援で建設された水産局と魚市場

今回のオリジナル魚料理コンテストで中高生を対象にしたのは、「栄養価を考えたバランスの良い食習慣をより若いうちから身に付けるべき」との考えから。同様のイベントは同じくカリブ地域のドミニカでも毎年開催されているほか、セントルシアでは、毎週金曜日に魚を食べようと呼びかけるイベントを開催しているなど、豊富な水産資源を、収入源としてだけではなく、健康のための食生活の周知などにも活用する活動が広がっている。

カリブ地域を対象としたJICAのプロジェクトでは今後、水産局や漁民に焦点を当てた漁業管理の支援を行い、一方、協力隊員は魚食普及を中心に活動を進める。これを通じ、生産者と消費者のつながりを強化しつつ、総合的な漁業の振興を目指していく。


(注1)OECS。1981年7月に設立された東カリブ海諸国の地域協力機構で、セントビンセントおよびグレナディーン諸島、セントクリストファー・ネーヴィス、アンティグア・バーブーダ、ドミニカ、セントルシア、グレナダの6ヵ国で構成する。
(注2)魚を集めるための、海中や海面に浮かせた状態の人工漁礁。