日本の刑事司法の知見から新たな視点、仏語圏アフリカ8ヵ国研修——テロ対策も視野に、司法ネットワークも構築

2016年4月5日

JICAは2月15〜26日、フランス語を公用語とする中西部アフリカ諸国のうち8ヵ国から、司法のプロ約30人を集め、コートジボワールで刑事司法研修を国連アジア極東犯罪防止研修所(UNAFEI)(注1)の協力のもと実施した。対象の国々が位置する地域は、近年、国境を越えた組織犯罪の温床にもなっていることから地域横断的な取組が必要とされており、研修はそれぞれの国の能力向上だけでなく、国境を越えた司法ネットワーク構築にも有益な機会となった。

アフリカ初開催、各国の司法のプロが集う

精鋭たちが熱心に講義を聞いた

今回の研修で対象となっているのは、サハラ砂漠周縁部に位置し、特に貧困が深刻な国々。イスラム武装組織が勢力を拡大し、テロなど国境を越えた組織犯罪に対し周辺国が協力した取り組みが急務とされる地域でもある。

特に内戦が終わったばかりの国では、刑事司法が適切に機能していない現状もあり、刑事司法の信頼回復が課題となっている。また、平和で安定した国を再建するため、紛争当事者間の融和を促す意味でも、司法当局の機能向上は重要だ。

捜査から公判までの刑事司法プロセスの適正化・効率化・迅速化と、各国の自立的な刑事司法制度の改善を後押しすることを目指し、UNAFEIとJICAによる初の「仏語圏アフリカ刑事司法研修」は2014年2月に開催された。年に1度の研修を、1年目と2年目は日本で行い、3〜5年目は参加国がホストとなり実施する計画だったもので、今回は予定通りアフリカでの研修開催が実現した。

参加したのは、開催国コートジボワールのほか、セネガル、マリ、ニジェール、チャド、ブルキナファソ、モーリタリア、コンゴ民主共和国(以降、コンゴ民)の計8ヵ国。ベルギーに統治されていたコンゴ民を除いてフランスの統治下にあったこれらの国では、司法制度もフランスの制度を踏襲している。

このため、第3回目となる今回の研修には、「警察官」「検察官」「公判判事」に加え、「予審判事」の、刑事司法における主要4職種の代表が参加。それぞれの国で刑事司法の最前線で活躍する精鋭が集まった。

今回、研修で取り上げたテーマは、刑事司法プロセスをより適切に迅速に進めるための能力引き上げを目的とした「捜査・訴追・公判の基礎」と、「テロ対策」および「組織犯罪対策」。参加8ヵ国の多くが位置するサヘル地域では、昨今、イスラム武装組織の勢力拡大による脅威が高まっており、その対応が喫緊の課題となっていることが最大の理由だ。

「異なる視点」の提供と、越境犯罪対策に大きな意義

開催国コートジボワールからの講師も参加した

主にフランスの司法制度を踏襲している参加国に対し、研修を支援している日本は、フランス、ドイツ、アメリカなどの制度を取り入れつつ日本の現状に合うように構築された制度を持つ。

日本の経験や知見を共有した研修員からは、「日本の改善方法や切り口などを知ることで司法プロセスの改善につながる新たな視点や知識を得られた」との感想が多く聞かれた。この、フランスの法制度とは「異なる視点」を提供できる点が、日本が研修を実施する大きな意義の一つだろう。

また、参加した8ヵ国の司法4職種のプロすべてが一堂に会す機会は貴重で、ネットワークづくりにも非常に有効な機会となった。中でも、イスラム武装勢力の台頭などで参加国ではテロなどの越境犯罪が頻発している。越境犯罪の加害者は国境を越えたネットワークを持っており、「それを予防・捜査する側も国境を越えたネットワークを築く必要がある」ことはすべての参加者に共通した認識。こうした必要性に応える基礎を築く意味でも、8ヵ国合同の研修は重要な意味を持つ。

司法分野の協力体制づくりへの第一歩を刻む

研修の最後には、各国の司法プロセス改善に向けた「行動計画」を策定したほか、参加国間の司法分野での協力などを盛り込んだ「共同宣言」も発表。研修を通じて明らかになった各国の課題への対応と、8ヵ国間での協力体制の構築に向けて、新しい一歩を踏み出した。

2017年と2018年にも第4回、第5回の研修がコートジボワールで開催される予定で、司法のプロによる国境を越えたネットワーク作りの基礎固めを、JICAはこれからも支援し続ける。

(注1)国連と日本政府との協定に基づいて設立された国連の地域研修所。アジア太平洋地域をはじめとする各国の刑事司法の健全な発展と相互協力の強化に努め、これまで世界5,000人以上の刑事司法人材に対して研修を実施。