横浜市の経験がフィリピンの・メトロセブで花ひらく——Mega Cebu Vision 2050の実現に向けたロードマップ策定と具体的取り組み

2016年4月13日

JICAは横浜市と連携し、フィリピン第二の都市圏メトロセブで「広域都市圏における持続可能な都市の構築」に向け、先駆的な取り組みを行った。

メトロセブは、フィリピン中部にあるセブ州の州都セブ市を含む7市6町から成る約1,069平方キロメートル(横浜市の約2.4倍)の都市圏。その人口は2010年時点で255万人、2050年には500万人近くに膨れ上がると推測されている。

しかしメトロセブ内は平野部が少ないため「安全に居住できる」限られた土地を活用して、持続的かつ競争力のある魅力的な都市を造るためには7市6町が連携し、深刻化する交通渋滞や水不足等の都市問題を都市圏全域で解消し開発を進める必要がある。

そこでJICAは、「みなとみらい21地区」・「港北ニュータウン」等の拠点整備とそれらを接続する地下鉄事業といった公共交通指向型開発(Transit-Oriented Development: TOD)や、3Rによる都市ごみ処理の推進等の実践経験を持つ横浜市と連携し、「持続可能な環境都市構築のためのロードマップ策定支援調査」を2013年11月〜2015年8月まで行うと共に、主要な課題の一つである水供給や汚泥処理、廃棄物処理について中小企業海外展開支援事業を3件同時並行で展開した(〜2016年1月)。

広域都市圏の開発を支援−JICAの新しい取り組み

MCDCBの会議の様子

メトロセブでは、1994年にメトロセブを含むセブ州の総合的な開発計画が策定されたが、計画の具体化が進まない状況が続いていた。これに危機感を抱いた地元民間セクターからの働きかけがきっかけで、2011年に自治体、政府機関、民間セクター、市民団体など幅広い関係者が参画したメトロセブ開発調整委員会(MCDCB)が発足した。メトロセブを構成する13の市町が包括的に開発を進めるため、メトロセブ広域の開発を計画・調整するプラットフォームとしてMCDCBが果たすべき役割は非常に大きい。

ロードマップ調査では、MCDCBを支援対象として、都市構造・土地利用、都市交通および道路、廃棄物・水など都市インフラ整備に加えて産業振興・投資促進による競争力強化、広域行政機能強化も含めた7つの分野について詳細なサブロードマップを策定した。調査期間を通じ、JICAの支援を得なからMCDCBが取りまとめ役となり、関係者間で合意形成を図っていった。

この取り組みを通して、メトロセブ関係者は、市町村の境界を越えて広域での都市開発の推進、公共サービスの提供等を進めていく必要性を強く認識し、ロードマップでは、メトロセブ開発庁(Metro Cebu Development Authority)の設立が提案された。これをうけて、現在、フィリピン政府において、このような広域的な行政機関の設立が検討されているところである。

「都市間の学び」につながる連携も−横浜市との連携

横浜市での視察風景

2013年の「Mega Cebu Vision 2050」策定に引き続き、今回のロードマップ調査においてもJICAは2011年に連携協定を締結した横浜市の全面的な協力を得て調査を実施した。横浜市の職員が現地調査や協議に参加し助言を行ったり、メトロセブ関係者の研修を横浜で実施するなど、横浜市の都市開発の経験を様々な形で共有することができた。

メトロセブと同じく、首都圏に次ぐ規模の都市としての横浜市の都市開発は、国と地方自治体の役割分担や、住民参加の在り方等、メトロセブにとって多くの示唆をもつ都市である。開発途上国において「都市」の影響力や重要性が高まる中、日本の経験を開発途上国で生かすことはもちろん、途上国同士、ひいては途上国での取り組みから日本が学ぶ等、「都市間の学び」の効果は大きい。

なお、ロードマップが策定されたことを受けて、横浜市とセブ市との技術協力の覚書には、両市の協力がメトロセブ全域に裨益するよう活動することが新たに盛り込まれた。メトロセブを構成する自治体間連携による広域的な都市課題の解決や広域行政機能強化等おいて、両市が今後もリードしていくことが期待される。

このように、JICAの支援は、開発途上国自治体と本邦自治体間の相互協力の促進にも大きく貢献している。

Mega Cebu Vision 2050から具体的な開発への大きな波へ

メトロセブの風景

調査で作成したロードマップは、2015年7月末にフィリピン国家経済開発庁(NEDA)のインフラ委員会で、メトロセブの開発計画として承認された。今後は、MCDCBを中心として各自治体、政府機関、民間セクターや市民がそれぞれの役割を果たしながらロードマップを実行していくステージに移行する。

「Mega Cebu Vision 2050」が掲げるスローガンは「Metro Cebu Making W.A.V.E.S!(メトロセブの波を起こそう)」で、「W.A.V.E.S!」は健全的(Wholesome)、先端的(Advanced)、活気的(Vibrant)、公平的(Equitable)、持続可能(Sustainable)を表す英語の頭文字を取ったものである。

「Mega Cebu Vision 2050」で描いた青写真の実現には、メトロセブ広域の計画・調整の役割を担うMCDCBのイニシアチブが欠かせない。MCDCBが自らの機能を強化しつつ、メトロセブ関係者が一丸となって取り組みを進めていけるかどうかがメトロセブの将来のカギを握っており、関係者の引き続きの努力が期待されている。

具体的課題の解決に向けて

JICAは、メトロセブの都市環境に関する具体的課題—下水汚泥処理、廃棄物の循環利用、水供給、を解決するための取り組みとして、中小企業海外展開支援事業を実施。横浜市及び川崎市の3企業が日本の中小企業の技術を活用し、セブに合った形でセブが抱える課題の解決を目指す取り組みを行った。

2016年1月末まで行われた同支援事業は、ロードマップ調査の議論と同時並行で実施され、中央政府含め多くの関係者の関心を集め、日本の技術力をメトロセブのみならずフィリピン全土に広く知らしめることとなった。今後も各社はセブ市での成果を踏まえ、さらなる展開も視野に入れている。

このように、メトロセブでの上記支援は2016年で一つの区切りを迎えたが、JICAはロードマップで提案された都市交通分野についても調査等の実施を検討している。今後もフィリピン側の取り組みを見守りつつ、新たな支援を検討・実施していくことでメトロセブにおける持続可能な都市の実現を後押ししていく。