「ABEイニシアティブ」の社会人留学生、日本企業と直接交流――アフリカ進出目指しアフリカの生の声を

2016年4月18日

開会式では来賓からも留学生への期待が寄せられた

JICAは、アフリカからの社会人留学生と、アフリカでのビジネス展開に関心のある日本企業の情報交換や人脈づくりを推進するため、3月24日に「アフリカビジネスネットワーキングフェア2016」を開催した。(注1)

アフリカでのビジネス展開に向けたビジネスパートナー探しを後押しするもので、日本企業133社と、アフリカからの社会人留学生約300人が参加した。

注目市場アフリカからの社会人留学生が参加

各企業のブースを留学生が積極的に訪問

このフェアは、日本企業がアフリカに進出する際に水先案内人となるアフリカ人材の育成を目的とする「アフリカの若者のための産業人材育成イニシアティブ(ABEイニシアティブ)」の一環として実施したもの。

日本企業が、資源の供給元としてのみならず、巨大な市場としても高い関心を寄せているアフリカだが、進出には、基盤となる人材の確保が課題となっている。JICAは、ABEイニシアティブを通じて日本の文化や企業風土を知る人材育成を支援し、日本企業のビジネスチャンス拡大とアフリカの発展に寄与することを目指している。

参加した社会人留学生はその2期生で、エチオピア、ケニアなど33ヵ国(注2)から、修士号取得のために2015年9月に来日した約300人。本国では政府機関の行政官や大学の研究員、会社員や起業家で、将来を嘱望されている若者たちで、専門分野も工学、経済・経営、農業、環境、情報通信技術など多岐にわたる。

ABEイニシアティブでは、日本での修士号取得に加え、日本企業でのインターンシップの機会もある。来日した翌年の夏期休暇にはすべての留学生がインターンに参加し、2年間の留学と修士号の取得が終わった後には日本企業から要望のある場合、最長半年にわたりインターンを経験する。フェアでは留学生・企業とも関心を持つ事業や分野を絞って交流を図ることでインターンシップにつながるケースも多い。

留学生を「懸け橋」として期待

事業プランの発表にも多くの留学生が熱心に参加

企業ブースでは、展開している事業について熱心に聞いた

昨年に続き2回目となるフェアには、昨年から大幅増の133社が参加。うち約80社がブースを設け、情報・意見交換を行うなど交流を深めた。ステージでは12社がアフリカでの事業展開プランなどを発表し、将来のビジネスパートナーの発掘を行う機会となった。

株式会社阪急阪神エクスプレス(東京都港区)は、2014年に南アフリカに開設した事務所を拠点にアフリカ展開を図ろうとしている。グローバル統括本部の稲吉隆業務推進課長は、同社が昨年の夏に1期生2人をインターン生として受け入れ、日本とアフリカの輸送や貿易の状況を相互に情報交換するなど、非常に有益だったと振り返る。「留学生はまさに日本とアフリカの懸け橋」として、今年もぜひ受け入れたいと語った。

グローバルパートナーズ株式会社(東京都豊島区)は、日本企業の海外進出を支援しており、進出企業の販路拡大が得意分野。人事部の手島絵理子マネージャーは、数年にわたり日本文化に触れたからこそ感じる「アフリカ市場の生の声」を聞きたいとし、この夏のインターンシップ受け入れに積極的な姿勢を明らかにした。

「日本企業が売りたいもの」と、「各国の人が買いたいもの」が違うことも多く、そのギャップを埋める「生の声」を留学生から聞き出したいという。また、自国向け商品のバイヤーなどを目指す人がいればぜひ連携したいとし、将来の事業展開につながるインターン生受け入れにしたいと話した。

日本との信頼関係を築く役割を果たした

「ハードワーカーな日本人のイメージは、来日前と変わらない」と話すフダさん

モロッコのエル・ファットニ・フダさんは、ITエンジニアをしていたが、キャリアチェンジを目指し、現在は国際大学国際経営学研究科(新潟県)で経営学を学んでいる。「日本人は、どうすれば日本がより良くなるかという日本への強い愛情を持って働いているからこそ強い国になった」と話す。また日本人が時間を守るのは相手を尊重しているからとも分析する。

どこに行っても広告であふれている日本で、ターゲットごとの効果的なマーケティング手法を、インターンで学びたいとした。また「日本の経済や企業の発展についても学ぶことが多い」と語っている。

「地滑りに弱いモーリシャスの土についても研究している」と話すブーペンドゥラさん

モーリシャスのブーペンドゥラ・デビチャランさんは、モーリシャスの公共インフラ省で地滑り対策を専門とする行政官。インド洋の小さな島国で自然災害の多いモーリシャス。特に地滑りは頻発するが、まだ専門家が育っておらず、JICAも専門家を派遣するなど支援している。

ブーペンドゥラさんは、日本の地滑り専門家とのネットワークづくりに加え、自身がモーリシャスの第一人者となるため、新潟大学自然科学研究科で研究している。「日本とモーリシャスの間に強い信頼関係が築かれることで、日本から学べることがたくさんある」と、両国間の関係強化にも寄与したいと考えている。

「日本は私の国」と話すセイドゥさん

セネガルのセイドゥ・ヌルウ・ジョップさんは、技術職業訓練センター「セネガル・日本職業訓練センター(CFPT)」で教えている。CFPTは、日本の協力で開校し、今年33年目を迎えた。技術者を育てる現場で伝えられる知識を増やし深めようとABEイニシアティブに応募。以前、JICAの短期研修で1ヵ月間来日した経験もあり、「もう一度、日本に行きたい」との思いも強かったという。

セネガルでは若者の働く先がなく、仕事を求めて国外に流出していることから、国内で大量の雇用を創出することが喫緊の課題と指摘。帰国後は、CFPTでの技術者育成にも携わりながら、「日本とセネガルをつなぎ雇用創出にも尽力したい」との目標を語ってくれた。

ABEイニシアティブでは、将来、現地社員として雇用したい人材やビジネスパートナーとして期待している人材を、留学生の候補者として応募時点で推薦することができる。夏休み中や修士課程修了後にインターン生を受け入れ、人脈を強化することも可能だ。また今回のようなイベントに参加し、アフリカの現況把握や現地でのビジネス活動をサポートする人材の発掘などが期待できる。

9月には3期生が300人ほど来日の予定だ。登録企業は現在230社に上るが、JICAはインターン生の受け入れ先を拡大するため、企業の登録を受け付けている(下記リンクを参照)。また、JICAは今後もセミナーやイベントを開催し、留学生と日本企業のマッチングの機会を提供していく。

(注1)
主催:独立行政法人 国際協力機構(JICA)
共催:国際連合工業開発機関(UNIDO)東京事務所
後援:アフリカ開発銀行アジア代表事務所

(注2)第2期生の出身国と来日人数の内訳(単位:人)

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