協力隊が指導のパラグアイ陸上選手が来日、東京五輪出場がターゲット——初の国際大会出場、日本の最先端のトレーニングも体感

2016年5月16日

初の国際大会で70メートルを超える記録を残したディアス選手

南米パラグアイから、南アメリカ大会で2位に入る成績を残している陸上選手2人が4月30日〜5月9日の10日間にわたり来日。5月3日の「第32回静岡国際陸上競技大会」と、8日の「セイコーゴールデングランプリ陸上2016川崎」の2大会に出場し、上位選手に迫る記録を残した。いずれも8月のリオデジャネイロ・オリンピックの選考大会にも指定されている国際大会で、世界中から、オリンピック出場を狙うレベルの選手が集まった。

2選手をパラグアイで指導しているのは、青年海外協力隊としてパラグアイ陸上連盟で活動中の水島淳さんだ。今回の来日にも同行し、心身両面からサポートした。日本での経験が、2020年の東京オリンピック出場に向けた2選手の成長のきっかけになることが期待されている。

国技サッカーに負けず、陸上人口の増加を目指す

ディアス選手を指導する水島さん(右)

トラックで練習するマイダナ選手

パラグアイは、南米の中心に位置し、面積は日本よりやや広い40万6,000平方キロメートルで、人口約670万人の中進国。スポーツでは国技のサッカーに人気が集中しており、2010年のワールドカップ南アフリカ大会で辛くも日本を破ったことを覚えているサッカーファンも少なくないだろう。一方で、陸上競技の人口はわずかに約1,000人にとどまっている。

ただ、首都を中心に各地域に陸上競技クラブがあり、競技レベルも年々向上していることから、パラグアイ陸上競技連盟は、2020年の東京オリンピックを目標に、出場の可能性が見込まれる選手を積極的に支援している。

優秀な人材を育てるためにも、まずは競技大会で好成績を収め、国民から注目される競技へと成長させ、陸上の競技人口を増やすことが必須。その実現に必要な専門技術を持つ指導者がおらず、指導を担う協力隊員として水島さんらが2015年7月に赴任した。現在パラグアイ各地で3人の隊員が競技者や指導者の技術向上に向けた指導を担当している。

国際大会での競技経験を積むとともに、日本の指導技術を体感し、さらなる成長につなげようと、精鋭2人が今回、来日を果たした。

国際大会への初挑戦で今後に期待

今回、来日したのは、
フレディ・アベル・マイダナ・ペドロソさん(21歳):200メートル走
ラルソン・ギオナヴァンニ・ディアス・マルティネスさん(21歳):やり投げ
の2選手と地方のコーチ2人、パラグアイ陸上競技連盟の技術・科学担当者1人に加え、協力隊員・水島さんの6人。

手振り身振りも交えて具体的に指導

最先端のトレーニングと合わせ、トレーナーとしても選手を支える

2選手とも地方出身で、短距離のマイダナさんは裸足で走り、やり投げのディアスさんは、やりの代わりに竹を投げるという環境で競技に触れていた。しかし本格的に陸上競技を始めてわずか1〜2年で、マイダナさんは2014年の「南アメリカU23選手権大会」で2位、ディアスさんも2013年の「南アメリカジュニア選手権大会」で2位に入る成績を残す急成長を遂げている。

南米でトップクラスの選手となった2人は現在、パラグアイ・オリンピック委員会の支援を受け、首都アスンシオンにある国内唯一の全天候型トラックで、今回も同行した専門コーチの指導を受けている。だが、世界レベルの国際大会への出場経験は、まだなかった。

2020年の東京オリンピックを見据え、世界での自分の実力を知り、国際感覚を体感することは、世界で戦うため貴重な経験になることから、パラグアイ陸連が国際大会への挑戦を計画。日本陸上競技連盟を通じて日本の外務省が進めるスポーツ外交推進事業の支援を得られたことから、来日が実現した。

大会出場後の2選手に感想を聞いた。「記録を狙って来たが、風にも恵まれず思うような記録は出せなかったが、初の国際大会の雰囲気にのまれることなく自分の試合に集中できた。東京五輪を目標に、今回学んだことを生かして頑張っていきたい。このような機会を与えてくれた水島さんに感謝している」と200メートル走のマイダナ選手。やり投げのディアス選手も、「周りはオリンピック選手ばかりでとても緊張したが、この経験はこれからの競技に大いに役立つと確信している。必ずや、東京五輪への出場を果たしたい」と力強い。

初めて世界トップレベルの選手と同じフィールドでの競技だった緊張に加え、パラグアイから日本への移動の疲れや時差ぼけなどの中、記録を出すことの難しさに直面。だが、それを上回る貴重な経験になったことは確か。2020年に東京でさらに成長した2選手の姿を見られることは間違いないだろう。

選手育成に必要な知見も共有

来日したパラグアイチームと水島隊員

筑波大学ではスポーツ科学専門家の講演を受けた

同行したパラグアイ陸連の担当者にとっては、国際大会の運営について体験するとともに、世界に誇る日本の最先端のトレーニングを学ぶ機会にもなった。

試合前のトレーニング期間中に科学分析を受け、質の高い日本の最新技術を学ぶため訪れたのは、日本のトップ選手のトレーニングをサポートする
・味の素ナショナルトレーニングセンター
・国立スポーツ科学センター
・筑波大学
——の3施設。加えて参加した2大会でも、科学的な分析を受ける機会を得た。

科学的な分析は、トレーニング計画を立てる際に必要な知見だが、パラグアイではまだ不足しているのが現状。世界で戦う選手の育成体制を整えるに当たり、非常に重要なポイントでもあり、選手を支える最新技術を目の当たりにした。

東京オリンピックで2選手をはじめとするパラグアイの選手たちの活躍が見られることを目指し、水島さん、JICAは、これからもパラグアイ陸上競技の夢を支援し続けていく。

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