JICA事務所長が語るアフリカの今とTICAD VIへ向けた動き

2016年5月25日

8月にTICAD VIが開催されるケニアのケニヤッタ国際会議場(中央)

ケニアのナイロビで開催される第6回アフリカ開発会議(TICAD VI)が8月27〜28日に迫っている。アフリカで初めての開催、そして5年周期から3年周期の開催に変更されて初めてとあって注目されているものの、現地の情報は日本にはなかなか伝わってこない。

そこでJICAは4月21日にメディア関係者向けのアフリカレポートを開催。アフリカ6ヵ国のJICA現地事務所長が、現地の情勢やTICAD VIに向けたアフリカ各国の動きなど、現地からの生の情報を紹介した。

豊富な資源と巨大な市場を背景に成長を続けるアフリカ

ケニア事務所の佐野所長

まずは、TICAD VIの開催国であるケニア事務所の佐野景子所長が、「治安が懸念されているが、ケニア政府がセキュリティの強化に力を入れている。一方、会期中にジェトロ(日本貿易振興機構)が開催するジャパンフェアに、予想を大きく上回る数の日本企業から応募があったことから、日本企業のアフリカへの関心の高さがうかがえる」と、TICAD VIを間近に控えたケニアの様子を伝えた。

また、ケニアが独立した1963年にODAによる支援を開始し、3年後の1966年には現地に青年海外協力隊を派遣して本格化した日本の継続的な支援を振り返り「経済インフラ整備、農業開発、人材育成、保健医療、環境保全の5本柱に加え、50年にわたりボランティア事業を展開してきたケニアは、日本のアフリカ支援のショーケースでもある」と話した。

マダガスカル事務所の西本所長

2013年に民主的な選挙によって大統領が選ばれたマダガスカルでは、2014年に協力事業が再開された。マダガスカル事務所の西本玲所長はTICAD VIに向け「JICAの協力もこれから活発になっていくことが予想されており、現在は経済の基盤づくりに力を入れている」と説明した。協力事業で重点分野としているのは、農業・農村開発、インフラ・経済開発、教育・社会開発の3つ。

一人当たりのコメの消費量は日本人の2倍、日本語を勉強する人もサブサハラ地域で最も多いことにも触れ、「アフリカでありながらアジアに近い文化を持っている。今後も日本らしさを生かした協力に取り組んでいきたい」と述べた。

ガーナ事務所の牧野所長

ガーナ事務所の牧野耕司所長は、ガーナを英語の国で治安も良く西アフリカのエントリーポイントであり、世界銀行の報告書「ビジネス環境2015」で西アフリカの第1位に選ばれた、ビジネスのしやすい国であると説明。また、注目事業としては母子保健改善プログラムを挙げ「コミュニティーに根差した母子保健改善をベースに、日本企業と連携した栄養改善や生活習慣病対策も支援している。将来的には、ガーナの野口英世記念医学研究所を拠点に、エボラ出血熱を含む西アフリカ感染症監視システム構築に貢献していく」と述べた。

開発のベースとなる平和と安定した社会の回復に貢献

南スーダン事務所の古川所長

南スーダンは2011年に独立した世界で最も新しい国。2013年12月に紛争が勃発したが、2015年8月に和解合意を締結し、現在は暫定政府樹立に向けて動いている。

南スーダン事務所の古川光明所長は、1974年に建設された仮設橋しかなかったナイル川の架橋建設事業やスポーツを通じた平和構築など、JICAが重視している「人と心をつなげる事業」について説明。「国民の融和と統一をスローガンにした『国体』の開催を支援したり、著名人(初代ミス・南スーダン、アトン・ディマーチ、漫画家アディジャ)をJICA南スーダン事務所の広報アドバイザーとして活用して平和メッセージを発信するなど、平和構築に向けた取り組みに力を入れている」と語った。

モザンビーク事務所の須藤所長

モザンビークは資源が豊富で日本企業の関心も高い。安倍晋三首相は2014年1月に同国を訪問しナカラ回廊開発を中心とした協力を約束、サブサハラアフリカでは初めてとなる投資協定も結ばれた。ナカラ回廊は、モザンビークと内陸国のマラウイ、ザンビアなどを結ぶ経済回廊で、アフリカ経済戦略会議が設ける3つの開発優先地域の一つでもある。

モザンビーク事務所の須藤勝義所長は「JICAは2035年を目標とするナカラ回廊経済開発マスタープランを策定し、ナカラ回廊の玄関口となるナカラ港の改修・拡張、発電・送配電の強化、道路整備、農業開発、社会開発、人的資源開発などの協力を進めていく」と述べた。

コートジボワール事務所の飯村所長

コートジボワールは、カカオやカシューナッツなどの農産品を背景に、西アフリカでいま最も勢いのある国の一つだ。他方、1999年からの十余年の間は、内戦と政治的混乱が継続した。コートジボワール事務所の飯村学所長は、その歴史を振り返るとともに、「成長の加速化」と「平和と安定した社会の実現」を重点分野とするJICAの支援について説明した。

また、西アフリカの地域統合を視野に入れた「西アフリカ成長リング回廊整備戦略マスタープラン」の策定にも触れ、「人口1,000万人から2,000万人の小さな国が肩を並べる西アフリカ。地域統合が実現すれば、大きな市場が生まれる。こうした支援を通じて、西アフリカ全体を引っ張っていきたい」と話した。

TICAD VIに向け現地での広報活動にも注力

その後の質疑応答では、「TICAD VIの現地での認知度はどの程度か」との質問があり、ケニア事務所の佐野所長が「認知度はあまり高くない。日本政府が現地の新聞に広告を掲載したり、ケニア政府も準備を盛り上げる方策としてテーマ曲の作成を検討するなど、工夫して取り組んでいる」と現状を説明。JICAアフリカ部の江口秀夫部長は、「JICAでも広報活動に力を入れていく」と話した。

JICAは、これまでTICAD V(2013-2017)における「強固で持続可能な経済」「包摂的で強靭な社会」「平和と安定」の3本柱を中心に支援を行ってきた。しかし、アフリカにおける一次産品価格の下落やエボラ出血熱の発生、暴力的過激主義の台頭など、TICAD V以降新たな問題が顕在化している。

このような課題を踏まえ、TICAD VIに向けて、「Transformation(構造転換)」と「Resilience(強靭性)」というキーワードに基づき、より近代的で多様化した生産性の高い経済・産業構造への転換や、保健システムの強化をはじめとする強靭な社会の構築のための支援に、より一層、注力して取り組んでいく。

また、TICAD VIを通じて、国内外のアフリカへの関心を高めていくために、JICAはアフリカ各国の事務所や国内拠点において、経済界や市民社会、国際機関とも協力しながらTICAD関連イベントの開催を予定している。