ガーナの栄養改善、あらゆる分野の参加によるアプローチを支援——日本とガーナつないだ野口英世のふるさとも訪問

2016年7月19日

野口英世記念館にある、野口英世を織り込んだガーナの伝統的な布ケンテの前で

栄養不足による子どもの成長不良が深刻な課題となっていたガーナは、2011年に国際的な栄養不良対策計画(SUN、注)に加盟。加えて、政府が「マルチセクター調整プラットフォーム」を設立し、国を挙げて栄養改善への取り組みを進めている。

JICAは、2014年からこのマルチセクター連携による栄養改善を支援しており、6月5日〜23日に、3回目となる日本での研修を実施。保健、食品、教育など広い分野の11機関から11人の研修員が参加し、マルチセクターで取り組んできた日本の食育、栄養改善の経験を学んだ。

前回の研修から「全国食育推進大会」にも参加。今年の大会は、ガーナで生涯を閉じた野口英世が生まれ育った地、福島で開催された。

ガーナには、基礎医学研究所「野口記念医学研究所」が設立され、ガーナ国内の感染症対策の拠点としての機能を果たしている。のみならず、WHOから感染症調査機関として認定され、西アフリカ地域を代表する医療研究機関としての役割も担っており、野口がつないだ日本とガーナの関係は今に続いている。

マルチセクターアプローチの実現に向けて

昨年の研修からの進展や、新たな課題などを明確にする

栄養改善を本当の意味で推し進めるには、あらゆる分野の関係者が緊密に連携・協力していく「マルチセクターアプローチ」が欠かせない。

ガーナでは、農業や教育、食品加工などそのほかの分野との連携がまだまだ不足している。日本で実践されている取り組みを学ぶことで、ガーナでのマルチセクターアプローチを具現化していくため、今回の研修員を選定した。国家開発計画委員会、財務省、保健省、教育省など国レベルの行政機関の職員、栄養改善の対策実施や対策向け食品の開発・研究を行う機関からも来日。また、学術分野や一般市民への情報伝達なども視野に、ガーナ大学の栄養分野の専門家、ガーナ栄養協会の広報担当者も参加した。

さらに、地方分権化が進む中、自治体単位での栄養改善に向けた施策にもつなげる狙いから、州の下に位置する郡レベルの開発計画と栄養部門担当官も日本の経験を学んだ。

日本の取り組みを課題解決につなげるプログラムに

日本では、内閣府、厚生労働省、文部科学省、農林水産省など12省庁に加え、地方自治体や専門機関、民間企業など、あらゆる分野が参画し、まさに「マルチセクター」での栄養対策が進められている。

一方、ガーナでは、昨年、一昨年の日本研修での学びも生かし、アッパーウエスト州のランブシエ郡で、今年3月からマルチセクターによる栄養改善パイロットプロジェクトが動き始めている。

だが、中央省庁間の連携や、地方自治体における栄養士や地域のボランティアの役割、民間企業との連携などが依然として課題となっている。今回の研修では、こうした課題の解決にもつなげるべく、日本の経験や取り組みをさらに深く知ってもらうためのプログラムが組まれた。

民間企業による途上国の栄養改善への取り組み

「将来、母になる若い世代への栄養教育も考えていきたい」と語る取出部長

研修では、開発途上国で栄養改善に取り組む日本のNGOや民間企業もその経験を共有。民間企業では、味の素株式会社研究開発企画部の取出恭彦専任部長と、株式会社ユーグレナ経営戦略部事業開発課の江花智康リーダーがプレゼンテーションした。

味の素は、JICAの支援を受け、2011年からガーナの離乳期の栄養強化のため、伝統的離乳食KOKO(発酵コーンでつくるお粥)に添加する栄養サプリメント「KOKO Plus」を提供するなど、ガーナの栄養改善に取り組んでいる。

取出部長は、同社がKOKO Plusを対象に、社会的課題をビジネスを通じて解決していこうとする「ソーシャルビジネス」としての確立を目指しているとした。今後も、より早く広い地域に、手の届く価格で届けることを目指し、継続可能なビジネスモデルとして革新を続けていきたいと話した。

クッキー配布は子どもたちの手に直接渡すことを大切にしていると話す江花リーダー

ユーグレナの江花リーダーは、植物と動物、両方の特性と豊富な栄養素を持つユーグレナ(和名:ミドリムシ)を活用した栄養改善への取り組みについて紹介した。

同社は、世界の子どもたちに栄養を届けようと「ユーグレナGENKIプログラム」を立ち上げ、2014年4月から、栄養改善が必要なバングラデシュの小学校で、ユーグレナ入りクッキーを配布。現在は30校、約6,000人の子どもたちを対象に届けている。

同社設立の背景には、「世界から食料問題をなくしたい」との創業者の想いがあり、バングラデシュを皮切りに、より多くの国や地域を対象に支援していきたいとしている。

全国大会で「食育」について学ぶ

一日に必要な野菜の量を測るゲーム

福島県で開催された「第11回全国食育推進大会」の会場では、「1日に摂取すべき野菜の量」をゲームで学んだり、食品サンプルを選んで組み合わせた食事が理想的かをアプリケーションで判定するテストに挑んだりした。

また、より良い食生活を実現するために必要な歯の健康について学ぶ展示なども見学。栄養の大切さについてわかりやすく知ってもらうことの意義深さを実感した。ガーナでも、国レベルでの食育デーの企画が動き始めており、そこに生かされる見込みだ。

野口英世がつないだ両国のきずなを大切に

福島県で生まれ育った野口は、黄熱病との戦いに敗れ亡くなった同僚の遺志を継ぎ、1927年にアフリカに渡った。野口がその原因究明に一筋の光を見いだした直後、自身も黄熱病にかかり命を閉じたのは、現在のガーナ(当時英領ゴールドコースト)の首都アクラだった。

その縁で、ガーナから日本に医療協力の要請があり、1969年から現在に至るまで、さまざまな協力と交流が続いている。

東日本大震災後、野口記念医学研究所では「昔からの友人である福島県の皆さんを元気づけたい」と募金を集め、2,600枚(130キロ)のチョコレートを被災地の子どもたちに贈呈。ガーナ全体にも支援の輪が広がり、長い交流をさらに深めることとなった。

【画像】

野口記念医学研究所から被災地向けに寄贈されたチョコレート

今にも囲炉裏に落ちそうな野口のシルエットと生家

今回の研修員は福島県滞在中、猪苗代の野口英世記念館を訪問。「さまざまな苦難を乗り越え、世界的に活躍した野口英世の人生を深く知ることができ、忘れえぬ体験となった」「われわれもこの歴史的なきずなをより強固なものにしていきたい」と口々に感想を述べた。

JICAは、野口英世がつないだ日本とガーナのきずなをさらに強力なものにし、ガーナのマルチセクターアプローチによる栄養改善を、あらゆる側面から支援し続けていく。


(注)日本政府が、2010年4月、重度栄養不良国36ヵ国を対象にした「栄養不良対策スケールアップ信託基金」を基に、世界銀行に設置。現在はG8、国際機関、財団、民間企業を含む100以上の団体が参加。