国際緊急援助隊・感染症対策チームを初派遣、コンゴ民主共和国へ――昨年10月創設、黄熱病の流行対策を支援

2016年8月5日

ワクチンキャンペーンについて聞き取り調査

JICA国際緊急援助隊(JDR)は、7月20日、コンゴ民主共和国の黄熱病の流行対策を支援するため、昨年10月に創設された感染症対策チームを初めて派遣した。

感染症対策チームは、世界規模の課題となっている感染症の対策で、日本の人材面での貢献を実現するために創設。外務省職員、JICA職員、感染症専門家らで構成し、感染症による被害を最小限に抑えるための活動を行う。

流行宣言のコンゴ民で保健省などを支援

出発を前に調査チームからの報告を受ける感染症対策チーム団員

2015年12月以降、アンゴラ、ウガンダ、コンゴ民主共和国(以下、コンゴ民)などで黄熱病が流行。特にコンゴ民では2016年3月以降7月20日までに、首都のあるキンシャサ特別州を含む5州で1,900人を超える患者(疑い症例を含む)が確認されており、うち95人は死亡している。

6月20日にコンゴ民の保健大臣が黄熱病の流行宣言を発出。これを受けて日本は、黄熱病拡大の状況を把握し可能な支援について検討するため、7月10日に調査チームを派遣。調査結果と、コンゴ民政府からの支援要請を受け、7月19日に岸田文雄外務大臣がJDR感染症対策チームの派遣を決定した。

JICAではこの決定を受けてチームを編成。20日午後には、JICA本部で派遣前ブリーフィングが行われた後、チーム団員はコンゴ民に向けて出発した。昨年10月のチーム発足後、派遣されるのは初めてで、8月上旬ごろまで現地での活動を行う予定となっている。

1) 保健省幹部へのアドバイス
2) 感染検査のための技術支援
3) ワクチン接種キャンペーン事前準備の支援
――の3項目を中心とした活動を、現地に到着した直後から開始している。

日本ならでは、JICAならではの支援を

調査チームとWHOによる協議

仕切り奥にいる黄熱病疑い患者の扱いについて聞き取り調査

黄熱病は、ネッタイシマカが媒介する感染症で、発熱や頭痛、吐き気などが主な症状。治療薬はないが、ワクチン接種で予防できる。

コンゴ民では、6月中旬以降、試薬不足のため、初期症状が似ているほかの疾病と区別するための「確定診断」ができていない。そうした中、日本が持つ、検査や診断に必要な「卓越した知識」が、今回求められている強みの一つ。

コンゴ民政府が感染防止対策の一つとして実施するワクチン接種を担うヘルスケアワーカーの研修をサポートするなど、保健人材の能力強化でも期待されている。

WHOやユニセフ、米国疾病予防管理センター、国境なき医師団なども現地で支援活動を始めている。JDR感染症対策チームは、これらの機関とも連携しながら、日本の感染症対策の経験と知見を生かし、日本ならではの支援活動を展開する。

JICAはこれまで、コンゴ民で保健分野のプロジェクトを複数、実施しており、現在も保健人材の育成や、公衆衛生の確立などを支援している。そして今回、感染症流行への緊急対応を支援。流行終息後には、流行発生の要因分析や次の流行を抑え込む対策などを明確にするプロジェクトの実施も考えられる。

このように、各種プロジェクトと災害・感染症流行時の緊急支援を連携させた「シームレスな(切れ目のない)支援」を展開できるのは、JICAだからこそ。今後も感染症の流行や災害の緊急支援とプロジェクトを組み合わせ、各国のニーズに応じたシームレスな支援を目指す。

「海外への貢献」と「国内の人材育成」に意義あるチーム創設

「高レベルの人とモノを提供できるのが日本の強み」と語る鈴木事務局長

JDRの鈴木規子事務局長は、多発する災害に比べ感染症の流行が少ない日本では、感染症分野で専門性の高い人材は、災害医療分野の人材ほど多くないと話す。中でも海外での感染症対策の現場経験のある人材となると、非常に少ないのが現状だという。

感染症対策チームの設置には、「海外での貢献」と合わせ、海外での経験を積む「人材育成」という側面もあり、国内外の双方にとって大きな意義がある。

鈴木事務局長は、災害後の支援でも、一定期間が過ぎると感染症対策など公衆衛生分野の専門人材が必要になると指摘。「感染症対策の専門人材が育つことで、JDRが対応できる支援の時期や内容により幅が出て、あらゆる場面に対応できる支援体制の構築につながる」と語り、これからもニーズに応じたチーム構成で、災害・感染症の対策に取り組んでいく姿勢を明確にしている。