南スーダン、初のオリンピック参加をJICAが支援——国の「平和と結束」を願い、代表選手団がリオへ

2016年8月9日

出発時にジュバ空港で会見したドゥディ文化・青年・スポーツ大臣(中央)、ケニ選手(左)、ハッサン選手(右)

7月24日、JICAが派遣を支援する南スーダン共和国のオリンピック選手団が、ブラジル・リオデジャネイロに向け出発した。

南スーダンは今年、初めてオリンピックに出場する。男子1,500メートルのサンティノ・ケニ・ワリニャング・ケニ選手、女子200メートルマルグレット・ルマット・ルマット・ハッサン選手、アメリカ在住で男子マラソンのグオル・マリアル選手の3人が、初めての「南スーダン代表」だ。

スポーツ通じて南スーダンの平和と結束を

空港で記者会見したケニ選手は、「南スーダンにとって初めてのオリンピックに参加できることに興奮している。リオでは南スーダンの国旗を掲げたい。オリンピックを通じ、南スーダンの若者に平和と結束を呼びかけたい」と抱負を語った。

ケニ選手らがオリンピックに参加する道のりは容易ではなかった。長引く紛争で、公務員の給料が数ヵ月にわたり遅配の事態に陥るほど国家財政はひっ迫。選手の育成や国際試合への参加の機会は限られていた。

それでもオリンピックへの出場を果たしたいと願う南スーダン側の希望を実現すべく、JICAは、出場資格を取得するための最後の国際試合への参加、そしてリオ・オリンピックに参加するための渡航費用を支援している。

代表選手が発表された翌日、7月8日には、首都ジュバで大統領派と第一副大統領派の兵士による銃撃戦が発生。4日間続いた激しい衝突で、兵士を中心に多数の死傷者が出て、多くの市民が国内外に避難した。

オリンピック開幕1ヵ月を切っての緊急事態。それでもリオに代表選手を派遣することにした背景には、「オリンピックで南スーダンの国旗を掲げ入場することで南スーダンという国を世界に知ってもらいたい」「オリンピックに参加する選手を応援することで若者に希望を与え、国の平和と国民の結束を訴えたい」という、文化・青年・スポーツ省をはじめ南スーダン関係者の強い思いがあった。

空港で選手を見送ったナディア・アロップ・ドゥディ文化・青年・スポーツ大臣は、JICAの支援に感謝するとともに、「スポーツには人々を結束させる力がある。南スーダン政府は南スーダンの平和と結束のためにスポーツを振興していく」と力強く話した。さらに、2020年の東京オリンピックでは、より多くの選手を派遣し、メダルを獲得したいと述べた。

日本に退避中の古川光明JICA南スーダン事務所長からは、選手の出発に当たり「リオ・オリンピックへの参加を通じて南スーダン国民が一つになることを期待する。国民は気持ちを強く持ち、南スーダンのさまざまな課題と紛争を乗り越えてほしい」と激励のメッセージを送った。

ロンドンでは個人出場、リオでは南スーダン代表

1月のスポーツ大会で国旗を掲げ入場する選手たち

スポーツ大会の期間中は選手同士の交流を深める活動も行われた

8月3日には、アメリカ在住で男子マラソンのグオル・マリアル選手がリオ入りした。マリアル選手は、統一スーダン時代の内戦を逃れ、難民としてエジプトを経てアメリカに移住した。

実は、マリアル選手にとって今回は2回目のオリンピック出場となる。南スーダンの参加が認められていなかった2012年のロンドン・オリンピックの際は、「スーダン代表」としての出場を打診された。しかし、統一スーダン時代の内戦で家族を含む多くの南部スーダン人が殺害されたことから、これを拒否。ロンドンには五輪旗の下、個人で出場した。リオでは、念願叶って「南スーダン代表」としての出場が実現する。

南スーダンは長年の紛争を経て、2011年にスーダンから独立。JICAは、南スーダン独立前の2005年から、インフラ、農業、給水分野などで支援を行っている。また、スポーツには人と人とをつなぐ力がある。今年1月には南スーダン独立後初となる全国スポーツ大会、いわゆる国体の開催を支援するなど、南スーダンの平和と民族融和に貢献するため、スポーツを通じた支援を行っている。