2016年8月19日
Good Practices in South-South and Triangular Cooperation for Sustainable Development
国連が、5月に発行した好事例集で、JICAの南南・三角協力(注1)への取り組みが、持続可能な開発目標(SDGs)の実現に大きく貢献していると高く評価した。
国連が発行した事例集は、「持続的開発のための南南・三角協力の優れた取組(Good Practices in South-South and Triangular Cooperation for Sustainable Development)」。世界各国・機関が実施の南南・三角協力のうち、60件の事例を取り上げているが、うちいくつかをJICAの事業が占めており、南南・三角協力への先進的な取り組みを続ける機関として、JICAが高く評価されている。
写真提供:佐藤浩治/JICA
写真提供:久野真一/JICA
昨年9月の国連サミットで「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択され、これを実現するための開発目標として、17のゴールと169のターゲットで構成する「持続可能な開発目標(SDGs)」が設定された。
SDGsでは、「持続可能な開発のための実施手段を強化し、政府や民間企業、市民社会など、さまざまな関係者とのグローバル・パートナーシップの活性化を目指す」とされている。
2015年までに達成すべき目標を掲げていた「ミレニアム開発目標」に比べ、野心的で普遍的なSDGs。その達成には、これまで実施されてきたODAプロジェクトではカバーできなかった分野や課題へのアプローチや、ODA以外のリソースの動員が必要だ。
そこには、開発途上国の経験や知見、人材、民間セクターなどとの連携や活用が不可欠と考えられており、グローバル・パートナーシップ活性化の具体的な手法の一つとして、「南南・三角協力」の持つ有効性が、大変注目、期待されている。
国連南南協力事務所の事例集「持続的開発のための南南・三角協力の優れた取組」には、全60事例が紹介されているが、うちJICAのプロジェクト、JICAが長年にわたって協力している事例がいくつか取り上げられている。
JICAが三角協力を開始したのは1974年で、すでに40年以上にわたる。
その経験と実績から、経済協力開発機構(OECD)が発行した「開発協力相互レビュー」でも、「日本は、長い間、南南協力分野の支援におけるリーダーであり、この分野における日本の努力は革新的かつ先進的なものである」と認められている。
JICAがほかの開発パートナーと協働し、開発を達成するために必要な相手国の知識や経験を活用するため、南南・三角協力を戦略的かつ効果的に実施していることが高く評価された。
SDGsの達成に向けて新たに注目され始めたこの協力形態を長年にわたって積み重ねてきたJICAの経験が、ほかの国や機関が同様の協力を実施する際、貴重な先進事例となるだろう。
好事例集で取り上げられている事例は以下の通り。
事例(1)
アフリカ稲作振興のための共同体 CARD
事例(2)
ネリカ米振興計画プロジェクト
事例(3)
アジア・アフリカ知識共創プログラム「きれいな病院」
事例(4)
半乾燥地持続的小規模灌漑開発管理プロジェクト
事例(5)
全国工業職業訓練機関(SENAI)への協力
写真提供:菅原アラセ/JICA
今年は、11月30日から12月1日にかけて、ケニアの首都ナイロビで、「効果的な開発協力のためのグローバル・パートナーシップ(注2)」のハイレベル会合が開催される。ここでもSDGs達成に向けた南南・三角協力の重要性について協議される見通しだ。JICAはこれからも、南南・三角協力の形態を活用しつつ、SDGs達成に向けた努力を継続していく。
(注1)開発が比較的進んでいる途上国が、自国の開発経験や人材などを活用して、開発が進んでいない途上国に対して援助を実施するのが「南南協力」。その取り組みを先進国などが支援するのが「三角協力」。
(注2)先進国ドナーや開発途上国政府だけではなく、開発に携わる多様な主体とのパートナーシップを構築して、より効果的な開発協力を目指す国際的な枠組み。2014年にメキシコで開催された第1回ハイレベル会合に次いで、今年は第2回目のハイレベル会合。