民間企業のビジネス参画に期待、途上国の栄養改善に向けて――「栄養改善事業推進プラットフォーム」発足記念セミナー開催

2016年10月6日

プラットフォームに関心を持つ民間企業、大学、機関などから大勢が参加

栄養改善事業推進プラットフォームは、9月21日、JICA研究所(東京都新宿区)で、「栄養改善事業推進プラットフォーム発足記念セミナー〜途上国での栄養改善事業展開に向けて〜」を開催した。

同プラットフォームは、食品供給事業に取り組む日本の民間企業が、その経験と技術を生かして、栄養改善の効果が期待できる途上国の食と栄養に関する事業を実施できる環境を整備するとともに、そのビジネスモデルを構築することなどを目的に、官民連携の枠組みとして発足。本セミナーは、それを受けて開催されたものだ。

当日は、約160人の企業関係者らが参加し、盛況のうちに開催された。

栄養改善で大きなメリット、官民連携の重要性も確認

今回のセミナーは、プラットフォーム、一般財団法人食品産業センター、JICAが主催。栄養改善分野の国際的な動向とプラットフォームの仕組み、栄養改善ビジネスの先進的な取り組みを紹介し、官民が連携して栄養改善に取り組む重要性を再認識する内容となった。

開会のあいさつに立った一般財団法人食品産業センターの村上秀德理事長は、日本の食品産業が消費者の厳しい要求水準に応えるために製品開発力と技術力を高めてきた一方で、途上国における栄養改善分野ではビジネスモデルとして確立している企業は少ないことなどを説明。

さらに、8月にケニアで開催された第6回アフリカ開発会議(TICAD VI)で採択された「ナイロビ宣言」で、栄養改善に関する官民の取り組みの重要性が確認されたことにも触れ、「栄養改善の国際展開が重視されている今こそ、食品業界と政府が連携してオールジャパンの取り組みを開始すべき」と述べた。

第一部の「栄養改善事業推進プラットフォーム〜途上国食品ビジネスの新たなツール〜」では、栄養改善事業を民間ビジネスとして途上国で展開する上で活用できる既存の支援スキームやアイデアなどについて説明。外務省、内閣官房健康・医療戦略室、農林水産省、独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)から、本プラットフォームによる事業実施の背景・意義や支援のあり方について説明があった。

味の素の取出シニアマネージャー

味の素株式会社研究開発企画部の取出恭彦シニアマネージャーは、2009年から同社がガーナで取り組んでいる栄養改善のためのソーシャルビジネスを紹介し、ガーナの伝統的離乳食に添加する栄養サプリメントを開発し、子どもの低身長・低体重や貧血の改善に効果があるかを検証。同時に貧困地域や商業地域でのプロモーション活動など、利用者の拡大を図るため流通試験も実施したと説明した。

これらの取り組みから、「栄養サプリメントが効果的なことはわかったが、販売するためには栄養の重要性を理解してもらうための教育が重要であることも実感した」と語った。今後は地元の行政や市民団体などとの連携を強化し、栄養改善が持続可能なビジネスになり得るか検証を進めるとした。

JICA人間開発部の戸田部長(当時)

JICA人間開発部の戸田隆夫部長(当時)は、JICAがアフリカで展開している栄養改善のプロジェクトを紹介した上で、栄養事業が保健・教育・農業など複数のセクターに及ぶ取り組みであることを説明。企業とのパートナーシップで途上国の栄養改善に取り組み、実践から得られた経験と知識を、日本、途上国、世界の人々とグローバルに学びあうことの意義を指摘した。

職場での栄養改善への取り組みと効果を紹介

第二部では、「栄養改善事業プロジェクト第1弾〜ASEANにおける『職場の栄養食』〜」と題して、事例紹介を中心に発表が行われた。

冒頭で、GAINおよびSUNビジネスネットワークの代表者からの本プラットフォームへの期待が、ビデオメッセージで紹介された。

「工場側が満足しているか」も視点が必要になると語るBSRの永井さん

国際NGOのBSR(Business for Social Responsibility)の永井ディレクターは、職場での健康研修プログラムを通じた女性の健康へのアクセスや健康知識の向上をミッションとした「HER project」についての概要とともに、BSRは、バングラデシュの縫製工場で働く女性たちの栄養状況を改善するため、2015年から4工場でパイロットプログラム、2016年からは20工場でスケールアッププログラムを実施していることを説明。

そのパイロット事例として、株式会社ファーストリテイリングの取引先であるバングラデシュのある工場における取り組みについて紹介した。

健康と食事についての研修を行うとともに、鉄分と葉酸の錠剤や栄養添加米を導入した食事などを提供し、栄養に関する知識の定着、さらにそれが行動につながっているかなどをモニターしている。「今後は、生産性の向上や欠勤率の低下など、栄養改善が工場にとってメリットになることを共有していきたい」と述べた。

「栄養を考えて食事を摂る大切さがわかったとの声が届いている」と話す青沼さん

これを受け、ファーストリテイリングCSRソーシングチーム青沼愛さんが、その取組の詳細について紹介。展開する「ユニクロ」の一部店舗でバングラデシュの民族衣装をモチーフにした商品を販売し、その収益の一部を活用して、取引先工場で働く女性に対して衛生管理・家計管理などのライフスキル向上を目指すトレーニングを実施。

BSRが提供する栄養改善のためのトレーニングプログラムも導入しているという仕組みを説明し、「栄養を考えて食事を摂る大切さがわかったといった声が届いている。トレーニングが終わったある工場からは、病気による欠勤率が、女性で36パーセント、男性で28パーセントも減ったという報告があり、意識の高まりを感じる」と、その成果を強調した。

山口次長は、「プロジェクトでは2020年までに普及展開を目指す」とした

食品産業センター海外室の山口隆司次長は、プラットフォームのプロジェクトとしてインドネシアで今年度の開始を目指す「職場食の栄養改善」計画について紹介。計画では、実態調査などを通じた基礎調査からパイロットプロジェクトの導入、そしてプログラムの普及展開までのアクションを、2020年までに実施する予定だとした。

「栄養改善事業を導入する側にとっても、職場食を提供する側にとってもメリットのあるWIN・WINビジネスの構築を目指している。導入する企業にはプロジェクトに理解、賛同をいただくとともに指標の選定にも加わってほしい。また、提供する企業には食事メニューの提案、ビジネスモデルの創出、マーケット発掘調査をお願いしたい」と、多くの企業・団体の参画を呼びかけた。

カンボジアへのスタディーツアー計画を発表

最後に、JICA人間開発部の渡部晃三次長が、カンボジアにおける栄養状況とJICAの協力の可能性について説明。JICAは栄養改善事業を推進するため、途上国の現地事務所のネットワークを活用し、順次、現地の栄養ニーズや栄養分野の政策・取り組み、優先課題などの情報を収集・整理しているとした。その中から、試験的に作成したカンボジアの情報を一部抜粋して紹介した。

また、プラットフォームに参加する日本企業を対象にカンボジア日本人材開発センターと協力して、カンボジアへのスタディーツアーを今年度に実施する計画を発表。「カンボジアに進出している日本企業やカンボジア企業との交流をきっかけに、現地のニーズに合った栄養改善事業につながれば」と期待を寄せた。