【ASEAN共同体発足から1年】日本の電子通関システムがASEANを結ぶ――物流を円滑化、日本経済にも好影響

2016年12月9日

通関関連手続きを行う税関職員。新システムによりビジネス環境も改善(ベトナム)

2015年12月31日、東南アジア諸国連合(ASEAN)(注1)は、「ASEAN共同体」として、新たなスタートをきりました。2018年までに域内関税の撤廃を全加盟国で目指すなど、一つの巨大なコミュニティとして、さらなる発展を目指しています。

JICAは、これまで実施してきた二国間協力と並行して、連結性の強化を意識した地域協力に着手してきました。日本独自の通関ITシステムを各国向けにカスタマイズし、貿易の円滑化を図ろうという支援もその一つ。「税関の近代化」が、ASEAN経済成長には不可欠となっています。

輸出入急増のベトナムを支える日本独自の最先端技術   

ベトナムでは、現在「VNACCS」「VCIS」という通関ITシステムが、JICAの支援により全国の税関全33官署で導入されています。

2007年の世界貿易機関(WTO)加盟以降、外国直接投資が急増し、輸出入申告件数も2002年の約116万件から2010年には約416万件へと、飛躍的に急増したことから、輸出入通関手続の効率化が切望されていました。

これを実現したのが、日本の最先端技術です。

「新しい電子通関システム構築に、日本の協力を」――。ベトナム税関総局からの要請を受け、迅速な通関手続きを可能にした日本独自の「輸出入・港湾関連情報処理システム(NACCS)」(注2)「通関情報総合判定システム(CIS)」(注3)をベトナム版にカスタマイズ。「VNACCS」「VCIS」として、導入支援を開始したのは、2012年3月のことでした。

通関手続きの効率化・近代化を実現 

VNACCSを使用した通関業者による申告の様子

「以前は簡易検査による通関処理に15分程度かかっていましたが、VNACCSを通じて、わずか1〜3秒で終了できるようになりました」「月あたり100時間・12,000アメリカドルの削減が実現した(※)」。ベトナムの企業のみならず、進出している日本企業からも効率化を喜ぶ声が寄せられています。ASEANは、通関手続きの効率化・税関行政近代化を通じた域内連結性の更なる強化を目指しており、加盟国としての責務を果たすことにもJICAの支援が貢献しています。

導入にあたっては、税関分野における既存の法規制や業務プロセスを見直すと共に、新システムについての周知、説明、周到な検討・準備が必要であったため、人材育成にかかる技術協力プロジェクトも実施。現在、約66,000の輸出入者が利用し、99%の輸出入申告を、VNACCS、VCISを通じて行うことを可能にしました。

ミャンマーでも導入! ASEAN各国への支援も     

物流の国際的調和が待たれるヤンゴン国際空港税関

ベトナムでのシステム導入支援は、ASEAN諸国の中でも通関制度の整備が大きく出遅れていたミャンマーへとつながり、「MACCS」、「MCIS」としての導入支援が進められています。ベトナムの導入・運用経験をミャンマー税関関係者に共有するなど、国を超えた学び合いも実施中です。

さらに、両国のほか、ラオス、カンボジア、フィリピン、インドネシア、マレーシア、タイに、税関の専門家を派遣してきた実績も、各国税関の近代化やASEANの貿易円滑化の促進につながっています。

「世界の工場」とも言われるASEANに進出している日本企業は1万社を超えます。JICAが進めるIT技術による税関支援は、域内物流の連結性のみならず、日本、そして世界の経済にも裨益することが期待されます。

(注1)ASEANは1967年にインドネシア、シンガポール、タイ、フィリピン、マレーシアの5ヵ国によって設立され、1984年にブルネイが加わり、現在は10ヵ国が加盟。

(注2)入出港する船舶・航空機及び輸出入される貨物について、税関その他の関係行政機関に対する手続及び関連する民間業務をオンラインで処理するシステム

(注3)輸出入実績や船舶入出港実績等の情報を一元的に管理する情報システムで、通関審査に活用。