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東日本大震災の被災地で生かされた最新技術で、アフリカの農業を変える――「ABEイニシアティブ」の社会人留学生がインターンシップを体験

2016年12月22日

JICAは「アフリカの若者のための産業人材育成イニシアティブ(通称:ABEイニシアティブ)」に基づいて、2014年から現在までに約1000人の社会人留学生受け入れが進んでいる「修士課程およびインターンシッププログラム」を実施、日本企業がアフリカに進出する際の「水先案内人」となるアフリカ人材を育成しています。そして、昨年9月に来日した第2期生のうち三名が、インターンシップの一環として革新的な農業技術について学びました。

農業の常識を覆す新技術を、アフリカへ

メビオール株式会社(神奈川県平塚市)は、今年初めてABEイニシアティブの枠組みを利用して、留学生を受け入れました。同社は、医療用に開発されたハイドロゲル技術を導入した農産物栽培システムを世界に先駆けて開発したベンチャー企業です。

ハイドロゲルとは、液体(水)、固体(氷)、気体(水蒸気)とは別の水の形態のことで、寒天やゼリーのように水を溜め込む性質があります。同社はこれを応用した「アイメック®」を開発し、劣化した土壌や乾燥地帯などの荒廃した場所でも、農作物の栽培を可能にしました。国内では、東日本大震災によって津波の塩害にあった岩手県陸前高田市をはじめとする150以上の企業や農業生産法人でこの技術が導入され、総栽培面積は10万坪に達し、海外でもすでに中東ドバイの砂漠地帯や中国でトマトの栽培に使われるなど、注目を集めています。

森有一 メビオール株式会社代表取締役社長

「土作りや水遣りの管理をする必要がなく、特殊なフイルムを広げるだけで農業を始められる。これなら途上国の課題解決に貢献できるのではないか、と考えた」と、森有一代表取締役社長は技術開発の経緯を留学生に説明しました。

イノベーションを実用化する方法と、ビジネスの姿勢を日本で学ぶ

技術試験場の見学

2016年9月に行った1週間の研修では、同社の技術を支える理論と農業情勢を学ぶとともに、陸前高田の農場を視察。最終日には「アイメック®」を普及させていくためのアイディアを紹介しながら、将来の自国での展開に向けて、留学生たちが抱負を語りました。

エスター・ワガグ・ンジャウさん

ケニアから来日し、東京農業大学で国際農業開発を学ぶエスター・ワガグ・ンジャウさんは「物理を農業技術の開発に役立てていることに驚いた。課題を解決していくためには異分野を結びつけるイノベーションがいかに大切か、そして民間企業が技術の特許を取得することがいかに重要かもよく理解できた。大学などでの研究をビジネスの現場にどう反映すればよいのかを知る、生きた体験ができた」と、感想を述べました。

マイケル・キャロ・ワンブアさん

同じくケニアのマイケル・キャロ・ワンブアさんは、筑波大学で生物資源科学を専攻。「日本でも最新のこの農業技術が、水資源の確保や土壌環境が問題になる状況で食糧を確保していくために、ケニアやアフリカ全土で機能する可能性があると思う。アフリカと日本の企業がビジネスで協働し、お互いの文化を尊重し合いながら最先端の成果を活かしていけるよう、働きかけていきたい」と、希望を語っていました。

オルセグン・イドウさん

「東日本大震災の津波の影響を受けた土地でも、農業の再開を可能にした技術はすばらしい。アフリカでも土壌の荒廃は大きな課題で、この技術をビジネス化することがわたしたちの国では平和の構築や就労機会の提供にもつながる。大きな経済効果が望めると思う。」と話したのは、京都大学農業研究科に留学している、ナイジェリアのオルセグン・イドウさんです。

この研修中には、ナイジェリアのエヌグ州政府の関係者から同社に「アイメック®」を導入したいという相談があり、イドウさんに仲介を依頼するという展開もあったそう。イドウさんも「責任感を持ち、ビジネスに計画的に取り組む日本のみなさんとの経験は、自分のキャリアの中でかけがえのない宝になった。これから、国際的ビジネスを展開する起業家のような活躍を目指したい」と話しました。

アフリカの農業事情を知り、アフリカと日本のビジネスをつなげる担い手に

森社長は留学生の印象を「非常に目的意識が明確で、この技術を自国でどのように使ったらよいかという提案がすぐに出てくる」と評価し、研修については「ケニアやナイジェリアの農業情勢を知ることもできて、非常に有意義だった」と振り返りました。

また、「アフリカの経済を支えているのは農業。今後、インターンシップを通じて育てたネットワークを生かし、農業分野からアフリカに貢献していきたい」と、期待を寄せていました。

現在、ABEイニチアティブ第4期留学生の来日に向けた準備が進んでいます。これからもJICAは、アフリカでの産業開発を支え、日本とアフリカとの懸け橋となる人材の育成をサポートして行きます。

【画像】

研修の初日、農業技術について議論するABEイニシアティブ留学生と森社長