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アフリカ4万校に広がる「みんなの学校」――学校と地域コミュニティと保護者 “みんな”の協働で、子どもたちのより良い学びの場をつくる

2017年1月4日

「みんなの学校プロジェクト」は、JICAが2004年から西アフリカを中心に支援してきた教育開発プロジェクトです。2004年にニジェールの23校から始まり、2007年にはニジェール国内すべての学校で普及。ニジェールにおいて入学率などが大きく向上するなど(注1)大きな成果を上げ、セネガルやマダガスカル等、他のアフリカの国々にも展開しています。教育行政、学校とコミュニティが一体となって、子どもの教育環境と学びを改善する取組みの広がりをご紹介します。

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アフリカの学びの改善をめぐって…教育行政改革の模索

サハラ以南アフリカでは、小学校4年生にあたる年齢の約6割の子どもたちが、読み書き・計算の基礎が身に着いていないと言われています。この地域では、現在のペースで自助努力と国際的な支援のもとで教育の改善が進んだとしても、ほぼ全ての子どもたちが初等教育を修了できるようになるのは35年後(注2)と見込まれ、より早いペースで教育へのアクセスと学びの質を高くすることが必要とされています。

学校運営委員会の設立にむけた研修風景

1990年代後半からアフリカの国々が教育行政改革の「柱」として取り組んできた改革の一つが、教育行政の地方分権化と、自律的学校運営(School Based Management:SBM)です。学校運営に関わる権限を政府から学校運営委員会(注3)に移し、学校運営委員会を受け皿とした学校交付金の導入による教育開発の取組みに着手しました。

学校運営委員会の設立にむけた研修風景

しかし、この制度改革だけでは、「学校」は、コミュニティの地域住民や保護者にとって心理的に遠いままでした。教育現場を実際に改善していくためには、住民や教員、そして学校運営に責任のある人々が協働する仕組みづくりが求められていたのです。

学校と保護者・住民の協働のカギは「情報共有」と「信頼関係」の向上

「みんなの学校プロジェクト」では、学校と保護者や住民間の情報共有を進め、信頼関係をつくるための取組みを学校運営に導入しました。また、委員会を媒介としてコミュニティと学校が協働しながら、子どもの教育環境のための活動を展開できるように促しました。

まず、運営委員会のメンバーを匿名の選挙で選ぶことにより、リーダーシップのある人物が保護者や住民の納得を得て選出され、力を発揮するチームができるように支援しました。
そして、学校活動の計画づくりや実施においても、教員・保護者・住民が自ら取組むようなプロセスへと変えました。
さらに、制度面からは、教育行政による学校運営委員会の支援と、複数の学校運営委員会が情報を共有するための体制も整えていきます。

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運営の透明性が確保され、活発に活動する委員会の設立のためには、住民や保護者が民主的に委員を選出することが大切(左)、学校の校舎の改善にも、学校と地域の関係者が協働して取り組む(中)、学校活動について話し合う住民の集会。行政の担当者がモニタリング・支援のために集会を訪れている(右)

模擬試験の結果を集計

また、子どもの学びの質の改善にも取り組んでいます。学力テスト結果についても学校と保護者などが情報を共有し、学習が不十分な部分は、数と計算の自習ドリルを用いて、家庭や地域が協力しながら補習を行っています。その結果、テストの正答率がニジェールでは約5割、セネガルでは約4割も改善。今後は読み書きについても学習をサポートする協働体制を拡充していきます。

ニジェールから他のアフリカの国々に広がる教育開発モデルとして

「みんなの学校」の取組みは、ニジェールから、セネガル、ブルキナファソ、マリ、コートジボワール、マダガスカルといったアフリカの国々にも広がっています。子どもたちの将来や教育をよりよくしたいという願いは教員・保護者・住民共通のものであり、「みんなの学校」は彼らの願いを教育環境や学びの改善に向けた力に変えていくことに成功したのです。

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学校や子どもの教育について話し合う住民集会(ニジェール)

写真左からディオン・フィルマー氏(世界銀行世界開発報告共同執筆者)、原雅裕氏(みんなの学校元チーフアドバイザー)、JICA人間開発部基礎教育第二チーム小塚英治課長、カブラン・アスム氏(コートジボワール教育省官房長)

JICAは、「みんなの学校」を通じた教育改善を進めているニジェールやブルキナファソでは、その成果を定量的に評価して示すことによって、世界銀行など他ドナーとも連携し、さらにこの革新的な取り組みを展開していきます(注4)。

昨年採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」では、教育は世界が達成すべき重要な課題のひとつとされました。

アフリカの教育現場における成果を活かしながら、JICAは今後も、開発途上国の政府とともに、世界の子どもたちのため、より質の高い教育を実現できるように貢献していきます。

 

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注1:プロジェクト開始時には40%にとどまっていた入学率が2011年は99.8%に、就学率は37%から76.1%に改善、教育へのアクセスは格段に向上しています。(出典:ニジェール教育統計)

注2:UNESCO EFA Global Monitoring Report 2013/2014(外部サイト)

注3:教員や保護者、地域住民などからなる組織。学校運営の予算や計画、人事などに関わる権限を持つ。

注4:世界銀行『世界開発報告2018』(2017年末発行予定)のテーマが「教育」になるにあたり、JICAは世界銀行とシンポジウムを2016年11月に共催。「みんなの学校」プロジェクトをはじめとする学びの改善への取り組みと、その成果の活用について紹介した。