中南米の農村に広がれ「より良い生活」――戦後日本の「生活改善」手本に

2017年1月18日

第2次世界大戦後、食料不足や栄養不良、劣悪な衛生環境や健康の悪化など、現在の開発途上国が抱えているような様々な問題に直面していた日本の農村。これらを解決すべく当時の農林省(現農林水産省)によって導入されたのが「生活改善普及事業」です。

外から来た人がお金を使って何かを与えるのではなく、今あるものを使って何をすれば生活を改善できるかを自ら考える――。

「考える農民」を育成し、日本の農村を変えたともいわれるこの手法が、時を越え、中南米の農村地域に広がっています。

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写真左/戦後日本の「かまど」。地面に置かれ作業が大変。煙突がなく、煙で目やのどを痛めた。右/改良の知恵は中南米へ。「楽な姿勢で、毎日の料理が快適です」

依存からの打開策を求めて…

帰国した研修員と彼らが育成した多数の普及員たち

立役者となっているのは、JICAが2005年から約10年にわたり、JICA筑波で実施した研修を受けて帰国した中南米13ヵ国の研修員。その人数は、300人を超えます。

農業生産が向上しているにもかかわらず、人々の生活が必ずしも改善されていないという、中南米の多くの農村地域によく見られる課題の原因の一つは「依存体質」にあります。さまざまなことを政府や自治体に要求し、支援を待つだけの農民たち。このような状況に対し、打開策を模索していた各国の農村開発関係者にとって、日本の戦後の経験は、まさに求めていた成功事例でした。

「床磨き」、「お金の管理」で好展開

生活改善を熱く語るカルロス市長。研修参加は2013年

エルサルバドルのグアロコクティ市カルロス・ディアス市長も、JICAの研修を受けた一人。帰国後すぐに、市役所スタッフを生活改良普及員として任命し、かまどの改良をはじめとする住居改善、栄養改善のための淡水魚養殖や養鶏など、意欲的に活動を展開させました。

家族全員で清掃などの家事を分担した家庭では、「床をピカピカに磨き上げた。息子は、きれいになった家に近所の子どもを招いてボランティアで算数を教えている」と言います。

皆で集まっての活動が楽しいという貯蓄グループの女性たち

また、貯蓄活動を通じて生活改善を実践しているグループでは、記録簿を付けて自分たちで貯蓄を管理。「今月は食費が足りなくて困っている」という家庭にお金を貸したり、農産物加工品を販売したりと、自立的に工夫を凝らした活動をしています。

これらの成果も踏まえて、市役所では生活改善課を設置し、今後も活動を継続していく体制作りを整えています。

中南米各国で「国」が動いた

各国地域の実践例や成果に聞き入る参加者

一つの改善が、次々と新たな改善を生み、農村発展のバネになっているという波及力と、研修員の活躍に、エルサルバドル政府も注目しています。同国の社会開発投資基金(FISDL)は、市役所を対象とした生活改善が主軸のパイロットプロジェクトを、15市から21市に広げる予定。 また、2016年11月14日には、エルサルバドル帰国研修員ネットワーク「REDCAM」との共催で、「第二回全国生活改善会議」を開催。FISDL長官や農牧大臣などの高官をはじめ、200人超が出席し、各地における実践例が共有されました。

放置されていたコーヒー農園が復活!(コスタリカ)

さらに、他国でも国をも巻き込んだ生活改善を展開中です。コスタリカでは国家開発戦略に生活改善が記載され、農牧省によるプロジェクトが9地域で実施中。ドミニカ共和国では農地改革庁内に生活改善課が設置され、コロンビアでは労働省管轄下による国家プロジェクトが2017年より4年間実施される予定です。

帰国研修員たちの活動が今後もより広く、根強く中南米の農村地域で展開され、「より良い生活」が持続的なものとなることが期待されます。