「ワクチン接種」でつくるパキスタンの未来、ゲイツ財団と連携も――「世界予防接種週間」に寄せて

2017年4月21日

予防接種実技研修の様子

4月24〜30日は「世界予防接種週間」。予防接種によって、毎年約200万人から300万人の子どもたちの命が、感染症から救われています。一方で、世界保健機関(WHO)によると、世界で未だ1940万人の乳幼児が基本的ワクチン接種を受けられていない状況です。

南アジアで基礎保健指標が最低水準にあるパキスタン。世界で残り3ヵ国となったポリオ常在国(注1)でもあります。JICAは、1996年からポリオ対策、および定期予防接種活動の強化を支援しています。

子どもの命を救え!「レディ・ヘルスワーカー」

山奥のコミュニティにワクチン接種を!山道を進むLHW

パキスタンでの乳幼児が2歳になるまでの完全予防接種率は54パーセント。特に、農村・山間部など、地理的な条件に加え、家族以外の男性の目にふれないようにしなければならないなど、女性や子どもに保守的な慣習がある地域でのワクチン接種率の低さが懸念されています。

こうした状況に、一役買っているのが「レディ・ヘルスワーカー(LHW)」。注射の技術や啓発活動に関する訓練を受けた女性が、ワクチンを入れた保冷バッグを持ち、時には山道を進み、ワクチンを打つという草の根の活躍を続けています。

JICAが2014年から3年間の予定で実施中の「定期予防接種強化プロジェクト」でも、LHWの能力強化に重点をおいています。

プロジェクトの対象地域であるハイバル・パフトゥンハー(KP)州では、1040の行政区のうち114区が、予防接種を医療施設で行うに至っていません。LHWの家庭訪問が、予防接種を受ける唯一の機会という地域も多く、まさに「命綱」です。

「ワクチン」への誤解を払拭、国内初!就学前の予防接種義務化

また、「接種すると病気になる」「ハラールに対応していない」など、ワクチンに対する誤解や否定的感情も、接種を妨げる深刻な障壁です。KP州では、2013年度の調査で12%の子どもが全く定期予防接種を受けていないというデータも出されました。

予防接種啓発授業

プロジェクトでは、小学校で児童を対象にした啓発活動を展開。LHWのみならず、予防接種に関する正しい知識と情報を学んだ子どもたちが、大家族として一緒に暮らす親や叔父・叔母たちに予防接種の重要性を伝え、文字の読めない母親への理解促進にも貢献しています。

父親たちを集めての予防接種啓発活動の様子

さらに、家主である男性がLHWの訪問を拒むなど、一筋縄ではいかない現実もあることから、地域の長老が乳幼児の父親に、モスクで予防接種の有効性を説明し、接種を促すなどの啓発活動も支援しています。

LHWをはじめとする能力強化・啓発活動のほか、保健医療サービスの提供、機材維持の管理など、包括的な支援は大きな成果を生み、2016年、KP州のマンセラ県知事は、「予防接種を小学校入学の条件」とする通達を発出。全国初、就学前の全児童に予防接種が義務付けられました。

関連リンク:

ゲイツ財団と目指す「ポリオのない世界」 

JICA北岡理事長とビル・ゲイツ氏

現在、日本以外にも多くの国や、「Gaviワクチンアライアンス」、国際機関などが支援しているパキスタンの予防接種事業。JICAの支援も、多くの関係機関と協力し、相互補完的に実施されています。

2011年、JICAは、ビル&メリンダ・ゲイツ財団との間で業務協力協定を締結しました。同年から実施された円借款「ポリオ撲滅事業」では、先方政府が一定の成果を達成した場合、ゲイツ財団が政府に代わってJICAに債務返済を行う仕組み「ローン・コンバージョン」を採用。2014年にその代理返済が決定し、同年の「DAC賞」で表彰されました(注2)。

「ポリオ撲滅事業」より、ポリオ・ワクチン接種を受けた5歳未満児の数は、約2,880万人(2011〜2014年度)にのぼります。

続く、「ポリオ撲滅事業(フェーズ2)」、また同じくポリオ常在国であるナイジェリア向け円借款でも「ローン・コンバージョン」を適用。今後もJICAは、世界からのポリオ撲滅を目指し、関係機関との連携を進めるとともに、未来を担う子どもたちの命と健康を守るための支援を続けていきます。

(注1)ポリオは、主に乳幼児が発症する感染症で、感染すると手足などの麻痺が一生涯残ることもある。ポリオ野生株が残る国(常在国)は、アフガニスタン、パキスタン、ナイジェリア。

(注2)