パキスタン国内避難民、帰還後の生活再建を支援——農業基盤の整備で収入の安定を

2017年8月14日

帰還した地域で農作業をする男性

8月14日、パキスタンは独立70周年を迎えました。そのパキスタンの国内避難民の帰還の続く地域でJICAなどが進めてきた農業支援で、大きな成果が表れています。小麦の生産によって半年分の食費に相当する収入を得た農家があるほか、生産した野菜の販売も好調で、「収入で子どもたちを学校に通わせることができるようになった」という声も上がっています。若者たちも生活再建に前向きになり、地域の安定にもつながっています。

今回の支援対象地域は、日本人の渡航が制限されている地域ですが、現地の関係者や国際機関と連携することで生活再建を目指す人々に支援を届けることができました。

優良種子を配布し灌漑施設を修復、女性のための研修所も

研修を受ける女性たち

支援の対象地域は、パキスタンの連邦直轄部族地域(FATA)内にあるハイバル管区とクラム管区。FATAにはさまざまな部族が居住し、自治権が認められていますが、アフガニスタンとの国境地帯にあり、反政府武装勢力の拠点になっているともされています。2009年以降にパキスタン軍がこれらの地域を対象に行った対テロ掃討作戦で、FATA全体では住民の大半、約340万人が国内避難民となりました。その後、着実に避難民の帰還が進み、2017年3月の時点で、両管区では約90万人以上が地域に戻って来ています。

JICAは、現地で直接支援活動を行っている国連食料農業機関(FAO)と連携。避難民の一部が同地域に戻り始めた2015年から2年間にわたり、約7万7,200世帯(約58万人)を対象に、小麦・メイズの優良種子や小家畜を提供し、灌漑施設を修復しました。20件の灌漑設備の復旧により、1,620ヘクタールの荒地が農地になり、多くの農家が小麦や野菜の栽培、家畜の飼育に真剣に取り組みました。

非常に保守的な地域にもかかわらず開設が実現した女性のための農業技術研修所では、2,000人もの女性が学びました。

子どもは学校へ、テロ組織に勧誘されやすい若年層も前向きに

収穫された小麦の脱穀作業

国内避難民には15〜29歳の男性が多く、避難先から戻ったもののまだ仕事がない時期にはテロ組織に勧誘されやすいとされています。帰還直後に支援が始まったことで、生活の再建に前向きに取り組み、新生活をスタートさせた若者が多く見られます。

中でも、約2,800ヘクタールの農地で小麦を栽培した6,300人の農民は、約5,000トンの小麦を収穫し、半年分の食料をまかなえるほどの収入を得ることができました。

「鶏や卵を売って、子どもの勉強道具を買うことができた」

体験を発表し、修了証書を受け取った女性

事業の終了に合わせ8月1日にイスラマバードのFAO事務所で開催された式典では、研修を受けた女性たちが生活の変化を発表し、修了証書を受け取りました。クラム管区出身の女性は「掃討作戦の影響で、私を含め、多くの女性が夫を亡くし、家族を養うために一生懸命働きました。研修で養鶏や販売について学び、鶏や卵を市場で売ることができました。収入で子どもたちの勉強道具や、自分のための新しい洋服などが買うことができ、とても感謝しています」と話しました。