国際識字デーに寄せて:地域の支えとライフスキルに着目したアフガニスタン・パキスタンでの識字教育

2017年9月8日

識字教室で学ぶアフガニスタンの女性

9月8日は「国際識字デー」。今なお世界では7億8,000万人が文字の読み書きができません(注1)。また、特に途上国では男女間、都市部と農村部で大きな格差もあります。文字が読めないと、外出しようにもバスの行き先がわからず、薬と間違って子どもに農薬を飲ませるような事故も起きています。

JICAは、今なお課題の大きいアフガニスタン(識字率38パーセント、注2)、パキスタン(同55パーセント、注3)で識字教育の支援を続けています。

アフガニスタン:村の宗教指導者や長老が後押し 

修了式を控えた発表式で、算数の問題を解く識字教室の受講者

「イスラム教は学ぶことを奨励しています。学ぶことは良いことです。みなさん、読み書きを学んでください。女性も学校や識字教室に通わせてください」

JICAの呼び掛けで識字委員会ができた地域で、村の宗教指導者が呼び掛けます。宗教指導者は、村長、長老、社会活動家などとともに村の識字委員会に加わっています。

アフガニスタンでは、教育省識字局も、実際に識字教室を運営する各郡の識字局も、予算や人員が不足しています。また、識字教室で教える講師たちは、毎年教室を始めるにあたり村の家庭を回って生徒を自分で見つけることから始めています。

識字教育を政府や郡に任せきりにせず、地域での取り組みとするため、JICAは「識字教育強化プロジェクトフェーズ2」の一環として昨年から、ナンガハル県カマ郡、カブール県ミルバチャコット郡、バルフ県マザリシャリフ市の3つの地域で、村単位の識字委員会の立ち上げを進めました。そうした村では、識字委員会が非識字者のリストを作成して生徒探しをしやすくし、先生や生徒の出欠も確認するようになりました。

9ヵ月間のコース、「落ちこぼれが減った」

修了証書を受け取る受講者

識字教室は1日2時間、週6日で、9ヵ月間続きます。修了すれば小学校3年生レベルの読み書きと四則演算ができるようになります。

3地域のうち、昨年8月にいち早く教室が始まったナンガハル県カマ郡では今年7月、修了式が行われ、7村合わせて145人が修了しました。

修了者はスピーチで、「最初は自分の名前も書けなかったが、今は文章を読み書きできる」と喜びを話したり、「今後も学習を続けていく」と決意を話したりしました。

修了証書を手に笑顔を見せる

郡識字局の職員は「これまでは早い段階で教室に来なくなる人が多かったが、今回は多くの参加者が残った」と変化を話しました。

また、他の地域では、教室に通い続けることを家族に反対された女性がいたものの、村識字委員会のメンバーが女性宅を訪れ、家族を説得するということもありました。

パキスタン:初の識字教育専門家の派遣は1997年

識字教育で学ぶパキスタンの女性

JICAによるパキスタンでの識字教育支援は1997年、連邦教育省に専門家を派遣したことに始まります。ちなみに、教育の大切さを訴え、後にノーベル平和賞を受けるマララ・ユスフザイさんが生まれたのも、この1997年です。

連邦教育省に派遣されたJICA専門家は識字教育に関する政策づくりへの助言などを行い、その後、JICAは対象地域や目標を変えながら、識字教育に関する支援を続けてきました。現在は、2015年に開始した「オルタナティブ教育推進プロジェクト」を継続しています。

「生活に役立つからこそ、来てくれる」  

成人識字教室の先生向けのマンゴージャムのつくり方講習会

パキスタンの2015年の識字率は、男性69パーセント、女性40パーセント。バロチスタン州の農村地域の女性の識字率は17パーセントにすぎず、8割以上が読み書きができません。JICAは「女性」と「生活」に重点を置き、支援を続けています。2008年から支援にかかわる大橋知穂JICA専門家は言います。

「農作業や家畜の世話、子育てや家事など、忙しい女性たちが貴重な時間を使って教室に来るので、教室は生活に密着し、役立つものでなければなりません」。

栄養のバランスについてのポスター

パキスタンでJICAが支援する識字教室は一期6ヵ月が主流です。基本的な読み書きに加え、トマトケチャップやマンゴージャムを自宅でつくるとお金の節約になることも伝えます。栄養・衛生や、防災などの知識も学びます。

「嫁ぎ先で自分だけが文字が読めず、肩身が狭かったが、今では堂々と話ができる」「子どもの宿題をみることができてうれしい」と識字教室に通った女性たち。男性が担っていた家計管理を女性がやるようになり、「子どもたちの教育費にお金を回せるようになって、夫にも感謝されている」といった声も上がっています。

今後は、工事現場などで働いている、読み書きのできない男性向けに、仕事の内容に役立つことと連動した識字教材を開発し、まずは地元の企業と連携して、塗装工向けの職業訓練コースで活用する予定です。

(注1〜3)EFAグローバルモニタリングレポート2015、ユネスコ