高齢化の進むタイに日本型の介護システムを導入、周辺国へも波及

2017年9月14日

日本から派遣されたケアマネージャー(介護支援専門員)たちとタイの高齢者

9月18日は敬老の日。実は東南アジアの国々でも例外なく高齢化が進みつつあることをご存知でしょうか。中でもタイは、かつての日本をしのぐ勢いで高齢化が進んでいて、国による高齢者介護制度の構築が急がれています。

JICAでは、10年以上にわたりタイの高齢者支援に取り組み、今年8月に終了したプロジェクトでは、タイの状況に合わせた介護サービスのモデルの開発を進めました。その結果、介護サービスを受けた高齢者の多くが「身体能力が向上した」と回答し、タイ政府の介護政策に生かされるなど、大きな効果が確認されています。

医療や福祉を組み合わせ一人一人にあったケアを

ケアプラン策定のため現状の聞き取りを行うケアマネジャー

日本では2000年から導入されている介護保険制度。その中心となっているのは、ケアマネジャー(介護支援専門員)が一人一人の高齢者の状況を確認し、医療や福祉のさまざまなサービスを組み合わせて、それぞれに合わせたケアプランを作成する「ケアマネジメント」です。

タイでも同様のシステムを活用しようと、2013年から始まった「要援護高齢者等のための介護サービス開発プロジェクト(LTOP)」では、次の3項目を目標として設定し、タイ国内の6地域で実現に向けて取り組みました。

(1) 介護サービスモデルの開発
(2) 介護人材養成プログラムの開発
(3) 政策提言

高齢者の運動能力の確認

タイではこれまでも、各病院や保健所、自治体がそれぞれに高齢者のケアは行っていましたが、相互の連携はほとんどなく、高齢者への効率的な介護サービスの提供ができていませんでした。

そのため、日本同様のケアマネジメントの導入を目指し、これまで地域の介護を担っていた病院の看護師らを「ケアマネジャー」としてトレーニング。自治体で活躍する保健分野の人材も加わり、システム導入にこぎつけました。合わせて、デイケアセンターや高齢者の自宅に出向く訪問介護も立ち上がり、従来よりも幅広く、手厚いケアが行えるようになりました。

こうした取り組みにより、事業実施地域の対象者の約65パーセントが、食事・更衣・移動・排泄・整容・入浴など日常生活動作を示す指標が改善したというデータが出ています。

また、日本の経験と知見を生かし、介護サービスモデルを持続可能にするための体制作りや財源確保についての政府への提言も行いました。

タイから周辺国へ、介護サービスモデル広がる 

デイケアセンターでの様子

6月には、プロジェクトの成果を周辺国にも共有しようとバンコクでセミナーを開催。マレーシア、ベトナムなど10ヵ国から22人が参加し、タイの介護サービスモデルとその効果について学びました。

これまでの成果を踏まえ、10月からは、医療と介護の連携強化を重視した新たなプロジェクトが始まります。タイでは脳卒中や骨折の後、機能回復がみられないまま早期に退院し、その結果、寝たきりになってしまう高齢者が少なくありません。リハビリなども組み合わせ、できるだけ要介護者を生まない方法なども探ります。JICAは、東南アジアと比べ、一足早く高齢化を経験している日本だからこその経験と知見を共有しつつ、各国の現状に合わせた介護サービスモデルの構築をこれからも支援していきます。