シリーズ 国際緊急援助隊30周年 Vol.1:メキシコ地震の倒壊現場でも活動−ヘビー級認定の救助チーム

2017年9月27日

メキシコ地震で現地へ向かう国際緊急救助隊・救助チーム=9月21日、成田空港

9月20日午前3時14分ごろ(日本時間、以下同)、メキシコ中央部をマグニチュード7.1の地震が襲いました。メキシコ政府からの要請を受け、日本政府はその日のうちに国際緊急援助隊・救助チームの派遣を決定。翌21日午後、オレンジと青のユニフォームに身を包んだ救助チームは成田空港を飛び立って現地に向かい、22〜25日、メキシコシティー中心部の被災地で捜索・救助活動を実施しました。

救助・医療など5チーム、事務局機能はJICAに

今回のメキシコ地震をはじめ、2004年のスマトラ島沖地震・インド洋津波や2008年の中国西部大地震、2013年にフィリピンを襲った大型台風「ヨランダ」など、大規模災害の現場で活躍してきた国際緊急援助隊は今年、活動の根拠法である「国際緊急援助隊の派遣に関する法律」が施行された1987年から30周年を迎えます。国際緊急援助隊には、救助チーム、医療チーム、感染症対策チーム、専門家チーム、自衛隊部隊があり、災害の種類や規模、被災国の要請に応じて、単独または複数チームが派遣されます。国際緊急援助隊の事務局機能はJICA国際緊急援助隊事務局が担っています。設立から30年、国際緊急援助隊は常に進化を続けてきました。

発電機やエンジンカッター携行、救助犬とともに現地へ

今回、メキシコ地震に対して派遣された救助チームは総勢72人。活動に使うため、発電機や照明機材、エンジンカッターなど、大量の資機材を持ち込みました。捜索活動で活躍する4頭の災害救助犬とその指導手も同行しました。

【画像】

メキシコ地震で被災者の捜索・救助活動を続ける救助チーム=9月22日、メキシコ市

ネパール地震の被災地で自らの安全を確保しながら取り残された人を捜索する救助チーム

現地で救助チームを待ち受ける第一の課題は、自らの安全確保です。2015年4月に発生したネパール地震では、完全に崩れたレンガ造りの家々が活動場所でした。チームはレンガを手作業で運び、倒壊した建物に残された要救助者を探すため、傾いた3階部分に穴を開けて下の階にカメラを送り込むこともありました。

「床に穴を開ける機械の振動が建物に響き、建物全体が揺れるように感じました」。救助チームの一員だった澄川敏康さん(警視庁警備部災害対策課救助隊指導班主任)は、こう語っています。倒壊した建物付近で安全を確保するため、チームには建物の構造評価の専門家も加わり、行動を共にしました。

捜索救助から、医療、ロジスティックスまで実践的に訓練

2003年アルジェリア地震で活動する救助チーム。日本とトルコの共同活動により、男性を救出

救助チームが結成される契機となったのは、1985年のメキシコ地震とコロンビア火山噴火。医療チームが派遣されたものの、「緊急援助には捜索救助や災害対策の専門家も含めた総合的な体制が必要」との認識が深まりました。救助チームは、1990年のイラン地震で初めて派遣され、今回、20回目の派遣となりました。

国際緊急援助隊・救助チームは、大規模災害時、被災者の捜索や救出、応急処置などを担います。救助チームは、警察、消防、海上保安庁、ロジスティックスを担うJICAの業務調整員などで構成されます。2010年には、国際捜索救助諮問グループ(INSARAG)から、最高水準である「重(へビー)級」の認定を受けました。これは、「同時に二つの離れた場所で活動できる」「ビルなどの構造物の倒壊箇所でも活動ができる」など、高度な能力を持つチームにのみ与えられます。

資機材の管理や輸送、通訳の手配、国際機関との調整などロジスティックスを担う業務調整員も訓練でその能力を磨く

救助技術を磨くため、チームは年1回、総合訓練を実施します。実際の災害さながらの想定のもと、倒壊の可能性のある建物からの救出や機材のメンテナンスに加え、医療班は建物に閉じ込められた負傷者の手当方法も学びます。

このような訓練を通じ、高度な能力を維持し、さらに向上させる取り組みを継続的に行っており、2015年、チームは更新評価で再び、「重(へビー)級」の認定を受けました。

多くの経験を積み重ね、進化を続けてきた救助チームのメキシコ地震被災地での活動には、メキシコの政府と国民から深い感謝の気持ちが示されました。

(シリーズは計4回、掲載します)