【シリーズ 国際緊急援助隊30周年 Vol.3】復興・開発に向けた切れ目のない支援:緊急援助物資の供与から専門家による技術支援まで

2017年10月12日

500回を数える緊急援助物資の供与

緊急支援物資のスリランカ政府への引き渡し

今年5月29日、スリランカの豪雨被害に対しJICAは緊急援助物資を供与することを決定。31日には、テントやプラスチック・シート、浄水器などが首都コロンボに到着し、スリランカ政府に引き渡されました。

30周年を迎えた国際緊急援助隊の活動は、被災地に救助、医療などのエキスパートを派遣する人的支援です。これと合わせて、JICAは物的支援として、被災直後に必要となるテント、毛布など緊急援助物資を速やかに供与しています。その実績は1987年以降、123カ国・地域に対し500回を数えます。JICAは世界6ヵ所に緊急援助物資を備蓄しており、被災国まで輸送します。被災国内での被災者への物資配布は被災国政府の責任で行われます。

開発援助機関のJICAが関わるからこそ

今年5月のスリランカにおける豪雨被害に際しては、緊急援助物資の輸送とともに、31日に国際緊急援助隊・専門家チームの派遣が決定されました。外務省、国土交通省、JICAの職員や専門家らによるチームは6月3日に現地入りし、被災地を視察するなどの調査を実施。今後の防災対策への提言をスリランカ政府に行い、11日に帰国しました。

「専門家チームは、緊急支援、復興支援、その後の開発支援をシームレスに実施できる稀有な開発援助機関であるJICAの強みを生かす支援」と話すのは、2013年11月にフィリピンを襲った台風ヨランダの災害で、専門家チームに加わり、その後の復興支援にもかかわったJICA社会基盤・平和構築部の室岡直道課長です。

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被災後、仮設住宅で生活を続けるフィリピン・タクロバンの被災者(写真:谷本美加/JICA)

台風ヨランダは、11月8〜9日にフィリピンを直撃。1,600万人を超える被災者を出しました。専門家チームは、国際緊急援助隊・医療チームと同・自衛隊部隊の派遣、緊急援助物資の供与に続き、11月26日に現地に入り、早期復旧に向けた調査を担いました。

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(左)フィリピン台風被害で、緊急援助物資として供与されたテントを立てる被災者 (右)フィリピンで活動中の国際緊急援助隊・専門家チーム

道路も寸断されるなか、自衛隊部隊のヘリコプターにも搭乗し、JICAフィリピン事務所とも連携して徹底した情報収集を行いました。死者・行方不明者の約半数が高潮によるものだったこともあり、チームは東日本大震災の教訓を生かしながら、1ヵ月余りで安全な地域づくり、防災拠点となる公共施設の再建、生業(なりわい)再生を含むフィリピン政府への提言をまとめました。

室岡課長は「専門家チームの持つ包括性、迅速性、機動力は代えがたい。現場のニーズに応えるために、さまざまな分野、異なる所属の専門家が集まり支援を検討しました」と言います。

被災地の絆や「より良い復興」の共通認識も 

フィリピンにおける台風被害に対する専門家チームの現地での活動は12月で終了しましたが、JICAの支援は続きました。緊急開発調査案件として、高潮被害の危険度を示すハザードマップの作成・普及支援や避難計画づくり、魚やカキなどの養殖や加工も支援しました。被災地を災害前よりも良い状態に復興させるというJICAの「ビルド・バック・ベター」の考え方は、フィリピン政府の復旧復興計画でも柱となりました。

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JICAの支援で再建された魚の養殖場

翌年1月、東日本大震災で大きな被害を受けた宮城県東松島市の調査団が現地を訪問、12月にはフィリピンの関係者が東松島市を訪れ、被災体験や復興の取り組みを共有しました。

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宮城県東松島市を訪れたフィリピンの被災者たち

今年10月3日、「台風ヨランダ災害緊急復旧・復興支援プロジェクト」は、今年度のJICA理事長賞に選出されました。専門家チーム派遣以降の切れ目のない支援により、フィリピン政府の復興政策の立案に寄与し、東松島市の協力、フィリピン側の自助努力による持続的な復興につながったことが理由となりました。

(シリーズは計4回、掲載します)