貴重な生物多様性を守れ!:中米全域の環境保全を支援へ

2017年10月19日

中米は生物の宝庫。写真は中米の森林に生息し、その形態が特徴的なアカメアマガエル

陸地面積では世界の約1パーセントに過ぎない中米地域は、動植物の種類では8パーセントが生息する、有数の「生物多様性回廊」です。しかし現在、その生態系が失われつつあり、「生物多様性ホットスポット」にも指定されています。

JICAはこれまで、コスタリカやホンジュラスなどで生物多様性を守る取り組みに協力してきましたが、国境を越えて、この地域全体の生物多様性を守る取り組みへの協力が動き出します。

住民参加でジャガーの新たな生息域も確認 

今回の取り組みの背景には、JICAの各国での取り組みの実績があります。

例えばコスタリカでは、1980年代後半から生物多様性保全のためのさまざまな取り組みが実施され、成果も上がってきました。しかし、その一方、保護区内や周辺の住民と、管理行政を担当する機関との間に不和が生じるという問題も発生していました。

そこでJICAは、2008年から住民たちも参加・協働するプロジェクトを実施しています。2013年に開始したプロジェクトでは、住民も協力して、動物が通り過ぎると自動的に撮影する野外設置カメラ「トラップカメラ」を設置。当初の予定を大きく上回る全国175ヵ所で、生物調査を行っています。

その結果、準絶滅危惧種のジャガーやバクの姿を、これまで生息が確認されていなかった地域で捕らえるなどの成果が表れています。分析のため、研究者との情報共有やネットワークづくりも進めています。

【画像】

(左)双眼鏡で一緒に鳥類の観察をする政府職員と村人たち(写真:今村健志朗/JICA) (右)トラップカメラで撮影されたジャガー

また、ホンジュラス。ラ・ウニオン生物回廊の中核となる「ユスカラン生物保護区」の範囲は、1987年に登録されて以来、一度も見直しをされたことがなく、実態とかけ離れた状態となっていました。JICAは、地方自治体や大学の協力を得ながら、生物回廊がその機能を有効に発揮するよう、保護区の新たな境界線案を策定しました。2016年5月には、関係者がコスタリカのプロジェクトを視察し、国を越えて、生態系保護の取り組みを学びました。

国境越え、地域課題に地域全体で取り組む 

中米・カリブ地域は、ほとんどの国がスペイン語が公用語であるなど、言語と文化歴史的背景に共通点があります。このメリットを生かし、地域の経済・社会の統合を推し進めようと組織された中米統合機構(SICA)は、生態系保全と持続的経済開発を開発の重点分野の一つと定めています。

そのSICAから、いくつものプロジェクト実績を持つJICAへ、生態系を守ることと経済的な開発の両立を探ることを目的とする「持続的な生物多様性の利用に関する戦略的能力強化プロジェクト」への協力要請があり、今年8月にプロジェクトの実施が決まりました。

「森林、河川、海洋でつながる近隣国が歩調を合わせることが重要」と話す米崎専門家

プロジェクトでは、地域全域の生物多様性に関するデータベースの整備や、生態系保存と経済を両立させるためのエコツーリズムなどのモデルづくりを目指す予定です。また、JICAとして初めて、SICAと協力して取り組む技術協力プロジェクトとなります。

折しも10月14日は「SICA地域統合の日」。SICA地域協力アドバイザーとしてSICA事務総局に派遣されている米崎紀夫JICA専門家は「環境問題は、1ヵ国だけでは解決困難な課題。森林、河川、海洋でつながる近隣国が歩調を合わせた対応を講じなければならない。生態系回廊を保全するため、地域総体としての取り組みを支援していきます」と熱く語っています。