日本への熱い思いに応えたい:国交25周年の中央アジア・コーカサスJICA事務所長が語る「これまで」と「これから」

2017年11月8日

ユーラシア大陸のほぼ中央に位置する、中央アジア5ヵ国とコーカサス3ヵ国。1991年の旧ソ連崩壊で独立したこれらの国の人々は総じて親日的で、日本の高い技術やきめ細かい支援への信頼には非常に高いものがあります。一方で、日本ではこの地域についてあまり知られておらず、いわば中央アジア・コーカサスの国々から日本への「片思い」とも言える状況です。

そんな各国で日本ならではの支援を進めるJICA事務所長・支所長が、支援の「これまで」と「これから」を熱く語りました。

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中央アジア・コーカサス8ヵ国

中央アジアは、ウズベキスタン、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタンの5ヵ国、コーカサスは、アゼルバイジャン、アルメニア、ジョージアの3ヵ国から構成され、独立の翌年、各国と日本との国交が結ばれました。今年は国交樹立25周年にあたります。

JICAは、ウズベキスタン、キルギス、タジキスタンに事務所、カザフスタンにフィールドオフィス、ジョージアに支所を構えます。

「日本人材開発センター」や研修を通じた人材育成の歴史     

「日本との関係を深めたいキルギスに日本から企業や人をもっと呼びたい」と語る菊地和彦キルギス事務所長

ソ連からの独立後、最大の課題であった市場経済化を支援するため、日本のビジネスの進め方などを伝える「日本人材開発センター」を通じた人材育成支援は2000年にカザフスタンとウズベキスタンで、2003年にはキルギスでも動き始めました。

歴史的・地域的背景からロシアや中国の存在感が大きいものの、日本への信頼は厚く、菊地和彦キルギス事務所長は「キルギスの人が日本人を親愛の情を込めて、祖先が同じである『きょうだい』と呼ぶのを数えきれないほど聞いた」と話します。

「ジョージアはNGOが活動しやすい国。アジア向け観光開発も進めている」と話す江尻幸彦ジョージア支所長

中央アジア・コーカサス各国の政府職員らの日本での研修は年間400名超の受け入れが続き、これまでの累計人数は7,700人に上ります。ジョージアの江尻幸彦支所長は「接触のなかった省庁や部署に行っても重要なポストに必ず帰国研修員がいる。ニーズを把握し、新たな事業を立ち上げるうえで大きな財産になっている」と指摘しました。

人材育成への取り組みの一つには、原水爆実験場だったカザフスタンのセミパラチンスク地域を対象とした医療支援があります。日本は被爆国として、1999年に開かれた「セミパラチンスク支援東京国際会議」で支援を表明し、日本人専門家による技術指導を行い、地域医療の改善に貢献しました。

インフラ整備から産業育成・投資促進へ 

「域内の帰国研修生がつながることで地域連携の強化を後押しできる」と話す伏見勝利ウズベキスタン事務所長

経済成長を目指し、JICAは地域内各国で、電力や道路、水など、インフラ整備への協力を続けてきました。

ウズベキスタンでは、老朽化した発電所に高効率な発電設備を導入するための資金協力を実施しており、ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた「コンバインド・サイクル発電」に日本の技術が活用されています。この分野の支援は、現在建設中の事業も含め、ウズベキスタンの電力供給量の約2割を占めます。電力分野の人材育成への協力も進めます。伏見勝利ウズベキスタン事務所長は「他の援助機関や中国も中央アジアを重視するなか、中央アジア側が日本への信頼を高めるような支援が求められている」と、その意義をアピールします。

また、ジョージアでは、物流の大動脈でアジアと欧州を結ぶ国際幹線の一部となる東西ハイウェイを、他の援助機関と協調しながら整備しています。

インフラ整備や人材育成の一方、JICAは産業育成にも取り組んでいます。キルギスでは2007年から、大分県の取り組みをモデルにした一村一品事業を進めています。現金収入を得る機会のほとんどなかった女性たちがフェルト製品の加工などを行い、日本では無印良品で販売されるようになりました。

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(左)観光客も多く訪れるウズベキスタン・サマルカンドのシャーヒズィンダ廟群、(右)日本へ出荷するフェルトの羊人形の製作をするキルギスの女性たち(写真:鈴木革/JICA)

「これまではそのまま輸出していた農産品の加工なども考えたい」と話すのは田邉秀樹タジキスタン事務所長。タジキスタンでは薬草のカンゾーの栽培拡大の動きもあります。

「各国間の結びつき強化でJICAが触媒になれる」と語る田邉秀樹タジキスタン事務所長

観光振興について、キルギス事務所の菊地所長は「キルギスは中央アジアのスイスと呼ばれている。観光資源も豊富」と指摘します。ジョージアの江尻支所長は「人口の倍にあたる年間700万人の外国人が訪れている」と紹介しました。中央アジアの治安については各所長とも「仕事や生活において不安を感じることはない」と話し、危ないイメージは現地情報の少なさが原因とみています。

日本企業の進出を望む声が高まるなか、6月に日本商工会議所主催によるキルギスの貿易投資促進セミナーが日本で開催され、日本商工会議所による現地訪問・ビジネスマッチング実施につながりました。

貧困削減による地域の安定や地域間協力も重視       

タジキスタンでは南部など地方を中心に貧困削減支援を進めています。アフガニスタンとの国境地域ハトロン州ピアンジ県での水道普及事業もその一環です。また、アフガニスタンとの国境となる川を挟み、両国の住民が参加できる市場を運営する取り組みなども行っています。

「トルクメニスタンは日本の教育システムへの関心が高い。今後の協力を考えていきたい」と話す東・中央アジア部の広沢正行次長

さらに、アフガニスタン、タジキスタンにキルギスを加えた3ヵ国を対象に、国際機関との連携により、いったん発生すると国境を越えて広範囲に被害を及ぼすバッタへの対策を通じた被害への対応能力強化も進めています。タジキスタン事務所の田邉所長は「対象国を増やすことも議論していきたい」と話します。

中央アジア・コーカサス地域への協力強化に向け、JICAは3月、タジキスタン支所を事務所に格上げし、5月にはコーカサス地域初の在外拠点としてジョージア支所を開設しました。トルクメニスタンでは7月、初の技術協力プロジェクトとして、首都アシガバット市地域における地震モニタリングシステム改善プロジェクトが始動しました。

東・中央アジア部の広沢正行次長は「『中央アジア+日本対話』やADBの中央アジア地域経済協力(CAREC)の枠組みも活用して、運輸・交通分野などで地域の連携強化に貢献し、日本・JICAのプレゼンスを高めていきたい」と意気込みを語りました。