【すべての人に健康を Vol.4】栄養改善や知識の普及で病気にならない社会を

2017年12月11日

「予防は治療に勝る」。現在では長寿県として知られる長野県で、地域医療、予防保健活動を進める中核の一つであるJA長野厚生連佐久総合病院(佐久市)の合言葉です。昭和30年代、脳卒中での死亡率が全国で一番高かった佐久市は、医療従事者と地域住民が一体となった取り組みにより、状況を一変させました。

シリーズ「すべての人に健康を」最終回は、誰もが健康に生きるために土台となる病気の予防に必要な要素について、栄養改善の取り組みなどを例に考えます。

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水道で手を洗うカンボジアの子ども。バランスのとれた食事や栄養・衛生についての正しい知識が病気を予防する(写真:久野真一/JICA)

シリーズ「すべての人に健康を」

5歳未満の死亡の半数近くが栄養不足に関連

「5歳未満の子どものうち、栄養に関する原因で亡くなる子どもたちは年間310万人、もしくは、5歳未満児の死亡原因の45パーセントにあたる」。2013年にユニセフが世界的医学雑誌『ランセット』で発表したこの報告は、世界に大きな衝撃を与えました(注1)。専門家による研究で、胎児期から生後2歳までのおよそ1000日の間に、必要な栄養が不足していると、身体や脳の発達の遅れや疾病リスクの上昇を招くことも明らかになってきています。(注2)。

2015年に採択された持続可能な開発目標(SDGs)の2番目のゴール「飢餓をゼロに」で「5歳未満の子どものあらゆる形態の栄養不良の解消」が掲げられており、栄養改善は、国際社会で注目されている主要なテーマです。栄養改善は、病気の予防、そして医療費の抑制にもつながるので、3番目のゴール「すべての人に健康と福祉を」の中でもユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成に不可欠な要素です。

母親と子どもの健康を守る栄養カレンダー 

地域住民が簡単に自身の食事をチェックできる「私の栄養カレンダー」。1日に必要な食事量がイラストで示されています

グアテマラは、5歳未満児の49.8パーセントが慢性的な栄養不足状態にあり、この割合は世界で4番目に高いと言われています。2016年から始まった「妊産婦と子どもの健康・栄養改善プロジェクト」では、食習慣が主食のトウモロコシなどに偏り、子どもの栄養不足が国内でも著しいキチェ県での栄養改善活動などを、JICAは支援しています。

JICAは例えば、読み書きが苦手な人でも分かるよう、1日の食事量などがイラストで紹介された「私の栄養カレンダー」の普及を支援しています。このカレンダーを使うことで、妊産婦や母親は、妊娠期から子どもが2歳になるまでの間、自らや子どもが必要な食事内容などを簡単にチェックできるようになります。

長野県佐久市で、乳児の栄養を考慮した離乳食作りを学ぶグアテマラの栄養士ら

今年10月には、キチェ県の看護師や栄養士など10人が佐久市を訪れました。佐久総合病院などを視察したほか、佐久市保健センターでは母親向けの「乳児の栄養を考慮した離乳食の作り方」などの講座を見学しました。研修員からは「行政と地域住民が一体となって病気の予防に取り組むことが重要だと学んだ」との声が聞こえました。今後、佐久市での学びを生かしながら、栄養改善、母親や子どもの健康につながる社会づくりを支援していきます。

健康な社会のために保健医療を超えた取り組みも

JICAで保健医療分野を担当する人間開発部の瀧澤郁雄次長は「日本が先進国の中でも比較的少ない医療費で高い健康水準を実現している背景には、優れた医療サービスだけでなく、充実した社会インフラや、バランスのとれた食事、国民の健康意識の高さなどがある。途上国においても、医療サービスや医療保障制度の拡充に加え、安全な水や適切な衛生、栄養の改善、教育の普及、ジェンダー平等の推進、経済格差の是正などに力を入れ、健康を守る社会をつくり上げることが重要」と指摘します。

今月12日から、国際会議「UHCフォーラム2017」が、東京で始まります。日本国内、途上国、国際機関などから約500人の政府関係者、保健医療の専門家らが集い、UHCを推進するための議論を行う予定です。JICAもこの会議を共催する他、4つのサイドイベントを主催・共催します。

 

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