阪神・淡路大震災の被災地から日本の「こころのケア」を世界へ

2018年1月17日

震災モニュメントを巡り、緊急時の避難路・救援路となる道を歩く「1.17ひょうごメモリアルウォーク2018」。
DRLCで研修中の各国の防災関係者らが今年も参加した

6,400人余りの死者・行方不明者を出した1995年1月17日の阪神・淡路大震災の発生から23年を迎えました。震災の経験と教訓を世界に伝えるため、2007年4月にJICAと兵庫県が共同で設立した「国際防災研修センター(DRLC)」の活動も10年を超えました。そのDRLCの成果の一つが日本の災害時の「こころのケア」の発信です。

こころのケアは、日本では、阪神・淡路大震災をきっかけに注目されました。日本のこころのケアの特徴は、さまざまな組織や人の活動を被災者の自己回復力につなげるという考え方にあります。精神科医による専門カウンセリングや治療にとどまらず、食料や住む場所、安全の確保や、教育、文化活動の復興なども含むというもので、災害後に少しでも早く被災者の生活基盤を整えることや人とのつながりを取り戻すことを重視します。また、日本の防災全般の考え方と同様、災害前の備えも重視します。

地震・津波国チリに初の国家ガイドライン 

2010年チリ地震の慰霊モニュメント

2017年8月、日本同様、地震や津波が頻発する南米チリで、災害時のこころのケアに関する初めてのガイドラインができました。作成したのは、国立総合自然災害管理研究センター、保健省、国家緊急対策室の3機関。チリ初となるこのガイドラインは、JICA関西/DRLCが、兵庫県こころのケアセンター(注)の全面協力で2014年から3年間実施したチリ国別研修「災害時等におけるこころのケアモデルの構築」の参加者らが中心となり、まとめました。

ガイドラインは9つの行動計画から構成。「災害サイクルに沿った活動」には、安全や人とのつながりの大切さを明記し、「行政-地域連携を通じた地域災害対応力向上」では、コミュニティの力を高めることがこころのケアにつながると強調するなど、日本の研修で学んだ要素が多く含まれています。また、「地域防災教育の実施」では、災害時のこころのケアにも効果が高いとして事前の防災教育を取り上げています。

チリでは、こころのケアへの認識はまだ広がっておらず、関連機関の連携も課題でした。ガイドラインは、行動計画ごとに、発生前・発生時・発生後の各段階で取り組むべきことをまとめており、それを関連機関が合同で作成したことも大きな成果です。

タイ、ミャンマー、中国に根付いた取り組み  

JICAが兵庫県こころのケアセンターの協力で「災害後のメンタルヘルスサービス」研修を始めたのは2005年。30万人を超える死者・行方不明者を出した2004年のスマトラ島沖大地震・インド洋津波が契機でした。

JICAの研修がきっかけとなって、タイでは2つのこころのケアセンターが設立され、2008年4月にサイクロン「ナルギス」の被害を受けたミャンマーでは、研修参加者が中心となって、国内の精神科医によるチームを編成。被災地での活動や被災者対応プログラムの作成、専門家の育成などに取り組みました。

こころのケアの専門家による中国・四川省での活動

ナルギスの被害から1ヵ月もたたない 2008年5月、中国西部大地震(四川大地震)が発生し、死者・行方不明者は10万人を超えました。JICAは2009年6月、「四川大地震復興支援-こころのケア人材育成プロジェクト」を開始。県こころのケアセンターなどの兵庫県関係者をはじめ、日中の関係機関と専門家が5年間、DRLCでの研修も組み込みながら、こころのケア従事者の育成などに取り組み、自治体や住民の意識も高まりました。

「研修は世界各国が防災について学び合う場に」

サイクロン「ナルギス」の被災者から聞き取りをするミャンマーの研修参加者=2008年

これまでの取り組みを振り返り、加藤寛・兵庫県こころのケアセンター長は「日本では、災害が発生するたびに制度や体制を柔軟に見直し、日本独自のこころのケアのモデルを作り上げてきた。災害対策は学び合う姿勢が何より重要で、JICAが行う研修事業は、世界各国間で防災を学び合うプラットフォームだと思う」と話しています。

JICA関西/DRLCでは、各国の防災関係者を対象とした研修を継続的に実施し、こころのケアの経験と教訓の共有を続けています。

(注)兵庫県こころのケアセンターは、研修・研究・診療を行う全国初の「こころのケア」に関する総合拠点として2004年に兵庫県が設立