インド工科大学ハイデラバード校で進む産学連携:イノベーションの拠点から最先端の研究に挑む

2018年4月17日

インド工科大学ハイデラバード校の学生たち

「高い強度としなやかさを持つ新合金を発見」。そんな研究結果が今年2月、世界的な出版社シュプリンガー・ネイチャーのオンライン・ジャーナル『サイエンティフィック・リポーツ』に掲載され、世界を驚かせました。この研究に重要な役割を果たしたのは、JICAが支援するインド工科大学ハイデラバード校(IIT-H)のピナキ・プラサード・バッタチャラジー准教授と京都大学の辻伸泰教授です。

新合金は自動車や飛行機などの安全性向上や軽量化につながる可能性があると高く評価され、さらなる共同研究に注目が集まっています。

JICAによるIIT-Hへの支援は、研究者たちのネットワーク構築と施設の建設が両輪となり、日印間の産学連携の可能性を大きく広げています。

研究者の交流や共同研究を推進

この新合金の研究をサポートしているのは、2012年から始まった日印の産学連携推進を目指したJICAの「IITハイデラバード校日印産学研究ネットワーク構築支援(FRIENDSHIP)プロジェクト」です。

このプロジェクトは、研究人材の育成、日本の大学とのネットワーク構築支援、日本の企業とのネットワーク構築支援の3つが柱となっています。東京大学、京都大学をはじめ、日本国内12大学が参加。これまで日本とIIT-Hの研究者合計約200名が行き来して、共同研究、特別講義、ワークショップ等を通じ、インドの学生に日本の最先端の研究成果を紹介しています。プロジェクトで支援する産学連携では、大阪大学、日立造船との間で、ものづくりにおける製品性能に向けた接合・溶接技術の共同研究なども進んでいます。

学生と企業とのネットワークづくりなども積極的にサポートしており、プロジェクトが主催した企業との交流セミナーがきっかけで、日本の自動車メーカーのスズキに就職したインド人学生もいます。

東京大学の博士課程で世界トップレベルの研究に携わるディヴィヤ・アナンドさん

プロジェクトの研究人材育成支援により、現在、東京大学大学院新領域創成科学研究科の博士課程で、ポリマー素材を応用した最先端のナノテク複合材料について研究するディヴィヤ・アナンドさんは、IIT-Hで開催された東京大学主催のワークショップに参加したことで日本への留学を決めました。

「多くの研究者と交流を図ることができ、さらに時間管理の大切さなど日本的な考え方も学んでいます」と述べます。アナンドさんにようにプロジェクトを通じ、日本とインドの懸け橋となる人材も育っています。

また、IIT-Hは2016年から、FRIENDSHIPプロジェクトに加え、JICAが支援する地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)により、日本大学、名古屋電機工業と、交通量の増加が著しいインドでエネルギー消費の低減を図るため、低炭素スマートシティの実現に向けた共同研究も始めています。

信頼関係を構築し研究の活性化を後押し

日本で開催されたFRIENDSHIP留学生交流ワークショップで講演する片岡専門家

IIT-HでFRIENDSHIPプロジェクト開始当初から、研究者や民間企業との連携を支えてきたのが片岡広太郎JICA専門家です。

インターネット技術の研究者としてIITHで教鞭をとりながら、日印の研究者間のネットワーク構築に力を注いできました。

「まずは、信頼関係をつくりあげることが大変でした」と語る片岡専門家は、このプロジェクトが始まる前から、慶應義塾大学・東京大学とIIT-Hによる「自然災害の減災と復旧のための情報ネットワーク構築に関する研究プロジェクト」(SATREPS)に携わった経験を生かし、IIT-Hの研究者らと確固とした信頼や絆を築きながら日印の研究者を結び付け、新たな研究へとつなげてきました。

「IIT-Hの学生たちは、海外で勉強したい、起業したいといった自分の将来に対する情熱にあふれています。このプロジェクトで、インド人学生の日本の大学への留学を後押しすると同時に、日本の企業とIIT-Hとの連携強化をさらに図りたいです」と今後の抱負を述べます。

最先端の技術を取り込んだ校舎を設計

インド工科大学(IIT)は、理工系の人材強化を図るため設立されたインドの工学系高等教育機関の最高峰です。キャンパスは全国23ヵ所にあり、入試倍率は100倍以上という超難関で、先端の工学分野を支える優秀なエンジニアや、Google、Microsoftなどのグローバル企業を率いる経営者を輩出する人材の宝庫として、世界中から注目を集めています。

日本ではAI(人工知能)やサイバーセキュリティ分野で活躍する高度専門人材への需要が急激に高まるなか、IITとの連携が期待されます。JICAはこれまで、IITのカンプール校やマドラス校とも提携し、技術の革新が課題とされる製造業の経営幹部の育成などにも取り組んできました。

ネットワーク構築・運用の講義で実習に取り組むIIT-Hの学生たち

2008年に新設されたハイデラバード校では、キャンパス内の建物や研究機材の整備もJICAは支援しています。

2011年から東京大学の建築分野の研究者を中心としたデザインチームが設計を担当した学生会館や総合研究センターなどの教育・研究施設は、2020年に完成する予定です。