【第8回太平洋・島サミット開催】太平洋の島々との連携強化を目指す:Vol.2未来を担う人材育成をサポート

2018年5月14日

トンガに帰国後、留学の成果をプレゼンテーションするニコラシ・オシモ二・フォヌアさん

「日本で培った知識や人脈を生かして、トンガと日本がさらによい関係をつくっていけるよう力を尽くしていきたいです」と語るのは、JICAが2016年から実施している太平洋島嶼(しょ)国14ヶ国の政府や民間の若手人材を対象とした留学制度「太平洋島嶼国リーダー教育支援プログラム(Pacific-LEADS)」初の卒業生で現在、トンガ電力公社に勤務するニコラシ・オシモ二・フォヌアさんです。

JICAは太平洋島嶼国で将来、重要な役割を果たす若手世代の育成を支援しています。

日本との懸け橋になる人材に

ニコラシさんは、2016年8月に来日、名古屋市にある名古屋商科大学大学院で経営管理について学び、今年3月に卒業しました。全学年約80名のなかで7番目という優秀な成績を収め、卒業式では優良学生として表彰されました。

卒業式で来日した両親と一緒に写るニコラシ・オシモ二・フォヌアさん(中央)

帰国後すぐにトンガ電力公社に復職し、サイクロンの被害にあった地域の復旧に向け忙しい毎日を送っています。技術者であるニコラシさんは、日本で財務計画やチームマネージメントなどを学ぶことで経営に関する知識も備わったと言います。今後、トンガ電力公社の業務運営にも注力し、トンガの電力分野でのリーダー的存在として日本との懸け橋となる人材として期待されています。

3年間で約100名の留学生を受け入れ

今年3月に実施された、現在日本で学ぶ太平洋島嶼国リーダー教育支援プログラム参加者の激励会

太平洋島嶼国リーダー教育支援プログラムは、2015年に開催された第7回太平洋・島サミット(PALM7)で実施が発表されました。太平洋島嶼国は、開発課題とされる「防災」「気候変動」「持続可能な開発」「貿易・投資」「経済政策」といった分野で中核人材の育成が急務となっています。

JICAは、それらの分野で政府や民間の人材を対象とし、日本での修士号取得と省庁や地方自治体での実務研修(インターンシップ)を実施する約2年間のこのプログラムを実施しています。現在、約80名が日本の26大学32研究科で学んでおり、今年8月には新たな研修員が来日予定です。3年間で約100名がこのプログラムを通じて、日本へ留学します。

東北大学大学院理学研究科で学ぶフィジー気象庁のテリー・ロフィーノ・アタリフォさん、琉球大学大学院理工学研究科で学ぶソロモン気象庁のエドワード・マルさんの2人は、日本の気象庁での実務研修に参加。気象庁の受け入れ担当者は2人について、「積極的に実習に取り組んでいました。この経験を今後、母国の気象業務の改善につなげてくれると期待します」と述べています。

プログラム開始当初からJICAとともに留学生をサポートする特定非営利活動法人アジア科学教育経済発展機構(Asia SEED)の担当者は「プログラム参加者たちは、修士課程での研究や行政・企業での実務研修を通して専門知識を身につけるだけでなく、日本の専門家とのネットワークを構築していることが母国での課題解決に役立っています」と述べます。このプログラムで親日家の行政官や企業家が育成され、日本との連携強化につながることが期待されます。

海洋協力の強化などをテーマに5月18日から太平洋・島サミット開催

JICAはこれまで、再生可能エネルギーの導入推進や、人材育成といった分野に加え、水資源の管理や廃棄物処理などについても太平洋島嶼国への協力を続けてきました。今後も、青年海外協力隊をはじめとするJICAボランティアや民間企業などと幅広く連携し、さまざまな取り組みを進めます。

ミクロネシア・ヤップ島のごみ処分場で、有機ごみの分解を促進するパイプを設置

太平洋島嶼国14ヵ国と日本との間で、太平洋地域の安定や繁栄を目指した首脳レベルの会議「第8回太平洋・島サミット(PALM8)」が5月18日から2日間、福島県いわき市で開催されます。PALM8では、日本政府が進める「自由で開かれたインド太平洋戦略」が主要テーマの一つとされ、海上における法執行対策や漁業資源管理支援など、「海洋協力」の強化について議論されます。

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