きっかけは日本での研修:架け橋となって活動を続ける帰国研修員同窓会

2018年6月15日

春の叙勲で旭日双光章を受賞したルヒ・エシルゲンさん(左)。安井毅裕JICAトルコ事務所長と

日本でJICAの研修を受けた人たちが、日本で学んだことなどを母国の人々に伝え続けるネットワーク「JICA帰国研修員同窓会」が各国にあります。トルコで同窓会を立ち上げ、長く活動をリードしてきたルヒ・エシルゲンさんは今年4月、その功績から、「春の叙勲」で旭日双光章を受賞しました。まさに日本と世界各国の架け橋となっている帰国研修員の活動を紹介します。

トルコ:1988年に同窓会設立、文化交流や政策コンテスト

JICAは毎年、世界各国から多くの人を受け入れ、日本の技術や制度などを伝えています。2017年度に日本での研修に参加したのは計11,931人、1954年以来の受け入れ数は合計で約36万人にも上っています。研修に参加する人を研修員、母国に戻った人を帰国研修員と呼びます。

エシルゲンさんは、1968年、国家教育省放送教育研究センターの職員として教育分野のテレビ番組制作を学ぶ研修に参加。帰国後、国営放送で、トルコ初のテレビの教育番組の制作と放送を実現しました。1988年にトルコのJICA帰国研修員同窓会を発足させ、2008年まで会長として活躍。JICAと協力し、日本に関する講演会や文化交流イベントを開催してきました。

トルコの同窓会の大きな取り組みの1つが、「アクションプラン・コンテスト」。日本での研修のまとめに各自が作成したプランをどのように実現させたかを発表し、審査・表彰する取り組みで、2015年から続いています。

今年のアクションプラン・コンテストで第1位となった障害者が参加した防災訓練の参加者ら

今年3月に開催されたコンテストの授賞式には、帰国研修員でもある日本トルコ議員連盟会長も出席。第1位には、首相府災害緊急事態管理庁の帰国研修員による障害者や高齢者のための防災トレーニングの取り組みが選ばれました。

同窓会の活動についてエシルゲンさんは「私達のささやかな活動が評価され、今回のような身に余る名誉をいただけるなどと夢にも思わなかった。皆様に心から感謝している。勲章そのもの以上に、JICAのお蔭で日本を知り、日本と関わる活動に身を注ぐことができたこと自体が人生の勲章だと思っている」と話しています。

西アフリカ:国を越え、エボラ対策や保健人材政策に貢献

2018年5月、西アフリカ各国の大臣や国際機関などが保健分野の人材政策について話し合う国際会議がコートジボワールで開かれました。会議では、セネガル保健社会活動省のンデラ・ジュフ人材局長が、ブルキナファソ、ニジェール、マリ、ギニア、ベナン、コートジボワールの保健人材局長とともに記者会見。「保健人材の養成や雇用は、社会の成長のための投資でもある」と訴えました。

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西アフリカ各国の大臣らを前に発言する、RVT事務局長兼セネガル保健社会活動省人材局長のンデラ・ジュフ氏

ンデラ・ジュフ局長らは、JICAの「仏語圏アフリカ保健人材管理」の研修を受けた帰国研修員らでつくるネットワーク「Reseau Vision Tokyo 2010(RVT)」のメンバー。国は違っても同じような課題を抱える帰国研修員による活動が評価され、今回、招待を受けて会議の議論に参加しました。

2013年、エボラウイルス病の流行国2ヵ国と国境を接していたコートジボワールに、過去7回ものエボラウイルス対応経験を持つコンゴ民主共和国から複数の専門家が急行、発生動向調査(サーベイランス)やリスク管理、コミュニティとの連携などの実践的な経験とノウハウをいち早く共有しました。コートジボワール保健公衆衛生省の人材局長は「こうした素早い対応は、RVTのような顔の見えるきずながあったからこそ」と評価します。

パレスチナ:制約下で活動、情勢悪化時に医薬品の搬送も

パレスチナ帰国研修員同窓会による環境問題啓発のためのワークショップ

イスラエルとの衝突が続くパレスチナ。なかでも、イスラエルに対する抵抗組織ハマスが事実上掌握するガザ地区での活動には、多くの制約があります。ここで、日本/JICAとつながる活動を継続しているのが、2004年に同地区で設立されたパレスチナのJICA帰国研修員同窓会です。

情勢が悪化した2014年8月には、JICAパレスチナ事務所と協力して、医薬品や包帯、ガーゼなどの病院への搬送を行いました。

ガザ地区では、電力供給も不安定で、電力不足のために下水処理場から未処理の汚水が海に放出されることもあります。そうしたなか、2017年度は、帰国研修員らが環境問題や対策を考えるワークショップを複数回開催しました。また、個人の権利と憲法や国際法について考えるワークショップや医療廃棄物の処理にも取り組みました。

研修員からは大臣や高官、国会議員も輩出

これらは、研修員の帰国後の取り組みのごく一部に過ぎません。また、帰国研修員は、世界各国で60人以上が大臣以上の要職にあるほか(2017年12月時点)、政府高官や国会議員としても、多く活躍しています。

JICA国内事業部の井倉義伸部長は「トルコや西アフリカ、パレスチナの事例のように、帰国研修員の活躍によって日本での研修の成果がさらに拡大しています。日本滞在中に日本の人びとや文化に触れた帰国研修員の同窓会は、大臣などのリーダーを多数輩出していることもあり、日本との絆、信頼を深めるとても大切で頼りになる存在になっています」と話しています。