“難民に寛容な国”ウガンダをサポート:人道支援と開発支援をつなぐ第一歩を踏み出す

2018年6月20日

生徒たちでいっぱいのウガンダ・アジュマニ難民居住区の学校

アフリカ東部に位置するウガンダは、 “難民に寛容な国”といわれてきました。周辺の国々から多くの難民を受け入れ、移動や就業の自由、教育・医療サービスなどを提供するのがウガンダの政策の特徴です。ところが近年、隣国の南スーダンやコンゴ民主共和国などから膨大な数の難民が流入して負担が増大し、ウガンダの難民受け入れ地域を圧迫しています。

JICAはこれまでのウガンダでの協力で培った信頼関係や経験を生かし、ウガンダの課題とニーズを整理し、国際社会を巻き込んだウガンダ支援の環境づくりを進めています。

難民流入で高まる受け入れ地域の負担

近年、ウガンダに入った難民・難民申請者は140万人を超え(2018年3月時点)、その7割が南スーダンと国境を接する北部の西ナイル地域に居住しています。

整備状態の悪い西ナイル地域の道路。支援物資を積んだ大型トラックが頻繁に通行する

難民居住区を抱える地域の道路は、支援物資を積んだ大型トラックの頻繁な往来により修復が必要となり、地元住民による抗議行動も起きています。学校ではこれまで30人だった生徒数が100人になったり、病院で医薬品が不足したり、井戸を使える回数が減ったりすることもあり、もともと、開発の遅れていた西ナイル地域では、地元社会の負担が極めて大きくなっていました。

この状況を重く見て、ウガンダ政府と国連は2017年6月に「ウガンダ難民連帯サミット」を主催。関係各国や国連、NGOなどが一堂に会し、ウガンダをサポートする方法について議論しました。

難民と受け入れ地域の双方を対象に先駆的調査

多くの難民を受け入れているユンベ県内の井戸。給水の順番を待つ人のポリタンクが長く並んでいる

このサミットを受け、JICAは、「難民と、難民を受け入れている地域(ホストコミュニティ)の双方の状況を、早急に把握する必要がある」と判断。

サミット直後の2017年7月から「ウガンダ西ナイル地域難民受入コミュニティの現状・ニーズに係る情報収集・確認調査(西ナイル調査)」を開始しました。これは、西ナイル地域で初めて難民とホストコミュニティの双方を対象にした、先駆的なニーズ調査でした。

調査を開始してすぐ、調査の難易度の高さや課題が明らかになりました。

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調査団作成の手書き地図。難民居住区の場所を示した地図が全くない地域があり、調査団で現場踏査を行って郡や村の境界線上に落とし込んだ

「難民支援のための地図には難民居住区や井戸、学校などの場所は載っているのですが、そこが何郡の何村なのか明確ではありませんでした。一方、郡や村などの行政区分がわかる地図には、難民居住区は載っていませんでした。まずはそれらの情報を統合した地図をつくらなければなりませんでした」と調査総括の一宮尚美さん(株式会社片平エンジニアリング・インターナショナル)や副総括の安西尚子さん(株式会社パデコ)らは振り返ります。

調査団は「自治体、学校、病院など多くの関連施設を訪問し、基本情報を集めました。西ナイルにあるすべての難民居住区を踏査し、難民居住区と地方行政区分を統合した地図を作成しました」(一宮さん、安西さん)。

JICAは、教育、保健、道路、水の4つの分野を重要分野に設定し、地域ごとの難民と住民の状況やニーズを、地理情報システム(GIS)として地図データに重ねていきました。政府や自治体、NGOなどからは「こんな地図データがずっとほしかった。ぜひ共有してほしい」という声が相次ぎました。今後は国際社会にも広く公開し、ウガンダで難民支援を行ったり、難民受け入れ地域で活動したりするすべての関係者が連携・調整しながらウガンダを支えていく基礎情報となります。

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ユンベ県の保健分野の地図データ。地域ごとの人口やヘルスセンターの所在地などの情報を、難民居住区の情報と合わせて調査団がマッピングした

人道支援と開発支援をつなぐ一歩に

国際協力の関係者の間では、難民支援や災害復興などの人道支援と、地域開発や国づくりなどの開発支援とのギャップをどのように埋め、どのように連携を深めていくかが大きな課題となっています。難民支援のための地図と行政サービスのための地図が分かれていたのも、その課題を象徴しています。今回のJICAの取り組みは、人道と開発の連携への一歩ともなります。

難民居住区内の学校で、もくもくと自習を続けていた南スーダンから来た少年。調査団に「先生になりたい」「勉強がしたい」と言葉少なに話したが、帰還の見通しは立っていない

調査にかかわった小向絵理JICA国際協力専門員(平和構築)は「ウガンダ政府からも、実績のあるJICAだからこそ、迅速に今後の支援の見取り図がつくれたというありがたい言葉をいただきました」と話します。

ムサ・エチュウェル首相府災害対策・難民担当副大臣は2018年3月、支援にあたって「日本を手本にせよ」と発言し、それが地元メディアでも大きく取り上げられました。調査結果がまとまるにつれて、ウガンダ側に「西ナイル調査で得られたデータを活用して、支援活動を進めよう」という積極的な姿勢が生まれています。