マダガスカルの協力隊作成の料理本が保健省公認で人気:各国で「栄養改善パートナー」の活躍広がる

2018年7月25日

栄養改善パートナーが開催した料理講習会で、調理方法を学ぶ参加者

インド洋に浮かぶアフリカの島国マダガスカルで、青年海外協力隊員たちが共同で編集した料理レシピ本が現地の保健省と国家栄養局の公認を受け、人気を集めています。

ポイントは地元の食材を使った栄養価の高い斬新なメニュー。そのレシピ本を使って料理講習会を開催し、現地の食生活改善にひと役買っているのは、さまざまな分野で活動する協力隊員たちからなる「栄養改善パートナー」です。地域の住民たちにわかりやすく栄養に関する知識を伝えています。

マダガスカルで活動する協力隊員が作成した保健省と国家栄養局公認の料理レシピ本

食材の意外な使い方で栄養バランスが向上

ペースト状にしたキャッサバの葉を使ってラビトゥトゥ・ケーキをつくります。

料理レシピ本に掲載されているラビトゥトゥ・ケーキ。抹茶のような味わいが大好評です。

「これまでおかずにしか使っていなかったキャッサバの葉が、こんなにおいしいケーキになるなんて思わなかった」。料理講習会の参加者からは驚きの声があがります。この「ラビトゥトゥ・ケーキ」は料理レシピ本の人気メニューの一つです。

マダガスカルは豊富に食材が採れるものの、普段の食事はご飯と塩辛く味付けしたおかずというスタイルが一般的で、栄養バランスに関する知識が普及していません。そのため、料理レシピ本では、身近で手に入る食材を使って、栄養バランスがよく誰もが作れる料理のアイデアを集めました。

講習会で料理を指導する高尾直子隊員、実は栄養分野の専門家ではありません。各学校で子どもたちの学習をサポートする青少年活動の分野で活動しながら、JICAが2017年から始めた、地域で栄養の知識や大切さを伝える「栄養改善パートナー」としても活躍しています。

マダガスカルの小学校で授業が始まる前に自己紹介する高尾隊員

「子どもたちがいつもスナック菓子を食べていて決して健康にいいとは言えないし、ずっと気になっていました」と言う高尾隊員。身近な食材で作ることができる栄養価の高いおやつを子どもたちに食べてもらいたい、そんな思いから、栄養改善パートナーとして料理レシピ本を使い料理講習会を始めました。マダガスカルでは5歳以下の子どもの約47パーセントが慢性的な栄養不良の状態とされ、子どもたちの栄養状態の改善が大きな課題です。

「栄養改善パートナー」は地域で栄養の知識を広める立役者

JICAがこの「栄養改善パートナー」制度を始めたきっかけは、2016年の第6回アフリカ開発会議(TICAD VI)でJICAがアフリカでの栄養改善に向けて立ち上げた「食と栄養のアフリカ・イニシアチブ(IFNA)」です。IFNAでは、アフリカ各国と支援機関が連携を深め、栄養改善に向けた現場での具体的な活動を促進。JICAは農業、保健、教育といったさまざまな分野で、現場レベルでの食と栄養の改善を進めるなか、JICA内部で「栄養改善パートナー」制度を開始しました。栄養改善に取り組みたいという意欲あるJICAボランティアや専門家などが参加しています。

この制度の目的の一つは、栄養改善に向けた情報の共有です。パートナーとしてこの制度に参加すると、栄養改善パートナー事務局が毎月発行するニュースレターを通じて各パートナーの栄養改善への取り組みの事例や経験が共有されます。また、「国別の適正摂取塩分量などデータはありますか?」といったパートナーからの質問に事務局が回答します。

ケニアで栄養改善パートナーとして活躍する栄養士隊員(右)。水や食物の摂取についての実地調査中に近隣でコレラが発生したため、住民に衛生に関する注意事項を伝えました。

現在、アフリカをはじめ世界76ヵ国で約400名が栄養改善パートナーに登録。ケニアに栄養士として派遣された協力隊員は、配属先の保健事務所で入院患者に栄養カウンセリングを行うだけでなく、地域住民の食生活や衛生状況を調査するため実地調査を行い、専門知識を生かし取り組みの幅を広げています。

中南米グアテマラで貧困層の子どもたちが多く通う公立保育所に派遣された協力隊員は、保育所で提供する栄養バランスのよい食事を子どもたちが残さず食べるよう指導。自分の活動の中に他国での栄養改善の取り組みを取り入れるなど、それぞれの現場で工夫をこらしています。

栄養改善パートナー事務局の梶房大樹さんは、「栄養改善に取り組むには農業、教育、水と衛生、生計向上など横断的なアプローチが重要。そのため、幅広い分野で栄養改善パートナーが増えていくことに期待します」と述べています。

JICA地球ひろばで「食べるコト 生きるコト」企画展が開催中

JICA地球ひろばの企画展示「食べるコト 生きるコト」では、地球案内人が展示について詳しく説明します。

世界では約8億人が栄養不足に陥っている一方で、廃棄される食品は年間13億トンに上ります(注)。世界全体の人々にとって十分な食料が生産されているにもかかわらず、食べ物を買うことができない、十分な栄養を取ることができない人々がいます。

JICAの地球ひろばでは9月まで、このアンバランスな食と栄養の世界についての企画展「食べるコト 生きるコト」を開催しています。日々の暮らしに欠かせない食と栄養を取り巻く現状について、ぜひ考えてみませんか?

(注)FAO駐日連絡事務所